第4話 若ではないという証明方法は・・
「どうやって若でないと証明すればいい?」
「・・・」
「何か、
「はい・・右手の二の腕に小さな
「あ・・それ、俺もある・・」
「やはり若・」
「では無い!! 違う、断固として違う!!」
「でも・・・・」
「う~ん・・、どうしよう、どうやって違うことを証明しよう・・」
「・・・」
「この世界では驚く21世紀の知識は何か無いか・・」
「21世紀? 何ですかそれは?」
「あ、いいから気にしないで。」
「はぁ・・」
さて困った、日本の歴史に従っていれば、これから歴史上で起こることや武将の話をして説得する手もあるが・・
しかし日本史で”梓の国”なんて知らないし、多分、中世の日本ではないと思う。
かと言って、この時代で現代科学を披露しようにも化学や科学の知識が無いし、実験をしようにも材料も入らないだろうし・・
困った・・どうしよう・・
「若、今の現状を鑑みますと話しが進みません。でしたら若でないと言うならそれで構いませんが、こちらとしても若で無いという確証がないと城から出すわけには行きません。」
「はぁ・・、では、どうしろと?」
「このまま若として見合いをして頂きまます。」
「へっ!! 嘘でしょ?」
「いえ、受けていただきます。 そうしないと我がお家は大変なこととなります。」
「そうは言っても・・」
「家臣213名がどうなっても良いというおつもりか? 若であることを忘れていたとしても、それでは余りにも身勝手ですぞ!」
「いや・・あの、大変な事はわかりますが・」
「おお、分かっていただけたか。」
「いや・」
「では、よしなに。いや、心配はいりませんじゃ。若は記憶を無くしたが記憶は戻ると先方に言い含めます故。」
「あ・・、え?・・いや・・」
「では、皆の者、そういうことで。」
「心得た。」
「はい!」
「あ、あの・・」
こちらが何か言い繕うとしたが、各々部屋を出て行ったしまった。
何、これ・・夢にしても
いや、夢だ、どうでもいい。
なら、ここを抜け出すこともできるだろうし、お見合いして相手が美人か確かめてから抜けてもいいと思う。
でも、自分の夢ながらモラルが邪魔をする。
城を抜けよう・・・
そっと近くの襖を開けて外に出ようとした。
「若、どちらに?」
「あっ!」
「あっ! ではありません。 また抜けるおつもりだったのですね?」
「え、えっとお百合さん、でしたっけ?」
「はい、百合です。」
「あの、別の仕事とか大丈夫ですか?」
「何を言っているのですか? 私は貴方付きの小姓ですよ?」
「はぁ・・」
「いつ何時でもお側にいます。」
なんか見張られているようで、ちょっとイラッとした。
ふ~ん、いつ何時もお側にいるといったよな、じゃあ・・
「何時も側にいるんだ・・ふ~ん」
「はい。」
「じゃあ、夜、一緒に寝てくれるんだ。」
「お望みとあれば。」
「えっ!」
「お望みですか?」
そういって百合は頬を赤く染め、俯いた。
「あ、いえ、その、済みません!!」
そういって襖を慌てて閉めた。
布団に戻り、布団の上で座りこんでしまった。
心臓がどきどきした。 まさかあんな可愛い子が夜とぎをOKするなんて・・
断ったことを後悔しつつ、これでよかったと思った。
しかし、夢なんだから何も断ることもないだろうと悪魔がささやいていたのも事実だ。
一方、百合は・・
「若・・・、私は・・嬉しいのに・・。」
そう呟いて、しばらく俯いたまま動かなかった。
部屋の布団にごろりと寝転んで、これからのことを考えた。
夢なら本当に覚めていい頃だと思うんだけどな・・長いな、この夢は・・
仮にだ、もし、夢でなかったらどうしよう・・
一抹の不安が押し寄せてくる。
しかし不安に思っていても仕方ない、夢なら楽しまなくては損だと開きなおった。
(楽しむといっても酒池肉林をしようという意味ではないので悪しからず。変な期待をしないで欲しい、と、なぜか自分に突っ込む。)
楽しむと決めたら周りの環境を聞くため百合を呼んだ。
襖は閉めず周りから見えるように配慮して二人で向き合い、色々と聞いた。
記憶が無いということになっているので、百合は呆れながらも答えてくれる。
まず、両親である大殿や母君はすでに鬼籍に入っているらしい。
兄弟も無し。覇権争いの心配はなさそうだ。
剣術は殿であることから嗜んではいたようだが、百合の口を濁した言い方から、たいした事は無かったようだ。
礼儀作法など武家としての一般常識について聞くと、百合は睨んできた。
「私が若殿に何度泣かされたと思っているんですか!」
「? どういうこと?」
「教える重臣や師匠、学者が来ると、何時もいつも居なくなって!」
「はあ・・」
「今日みたいに城から抜け出して本当に!」
やばい・・どうやら百合の変なスイッチが入ったようだ。
延々と小一時間、お説教を食らって解放された。
百合には逆らわないでおこう・・
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