第201話 九十九式機動服
「Pちゃん。敵のドローンは何機?」
「三十機です」
菊花は一機か二機しか残っていない。
ステルスも四機ぐらい。
戦力が足りないぞ。
「北村さん。これを使って下さい」
芽衣ちゃんが指し示したのは、ロボットスーツの着脱装置。
「これは、前の北村さんが使っていたロボットスーツです。対戦車ライフルで開けられた穴は、もう塞ぎました」
「いや、芽衣ちゃん。ロボットスーツでは空は飛べないし……」
「飛べます」
「え?」
「このロボットスーツは飛べます。ICパックも用意してあります」
「ICパック!」
ブレインレターで見た僕は、それを使って確かに飛んでいた。
「装着」
僕の身体は、金色に輝くロボットスーツに包まれた。
なんで金色? 今までの機体は黒だったが、これではまるで百○ではないか?
「北村さんが今まで使っていたのは、プロトタイプのロボットスーツと思われます。この機体は西暦二〇九九年に配備された、サイバーダイン九九式
一つ数字が少ないのね。
「お兄ちゃん。あたしも行く」
「ミク! さっき、落ちたばかり……」
「大丈夫。今度は薬があるから」
ミクは丸薬の入ったビニール袋を出した。
「それ、どうしたんだ?」
「カルカシェルターの中にナーモ族の薬師がいて、作ってもらったのよ。これが出来上がるのを待っていて、なかなかお兄ちゃんを助けにいけなかったの」
「分かった。くれぐれも無理をするなよ」
「分かっているよ。もう、あんな怖い思いするのはコリゴリだから」
そう言ってミクは、懐から白い人型を取り出した。
「出でよ! 式神」
オボロが出現する。
「お兄ちゃん、いつでも行けるよ」
「よし」
「待って、北村君」
ん? 成瀬真須美の声。
僕の足元にいつの間にか、人型ドローンがいた。
「さっきここを、離れる前に、このドローンを置いて行ったの。よく聞いて、北村君。今、矢納が狙っているのは、あなたじゃないわ。この娘よ」
そう言って、成瀬ドローンは芽衣ちゃんを指差した。
「え? 私が狙われているのですか?」
芽衣ちゃんは、きょとんとした顔で答える。
「芽衣ちゃん。あなたロボットスーツの調整ができるわね。矢納は自分のロボットスーツを欲しがっているの。そのために、あなたを生け捕りにするつもりよ」
「ええ!?」
「そのために奴は、波状攻撃をかけて、あなたのロボットスーツを消耗させた。そして、さっき、カルカシェルターから、あなたが出てくるのを確認して捕獲のために動き出したのよ。だから、ここを留守にするわけにはいかないわ。誰かが守らないと」
ミールが手を上げる。
「それでは、あたしがここに残ってこの方をお守りします。カイトさんとミクちゃんは攻撃に行って下さい」
「ありがとう。ミール」
「いえ、どのみちあたしは飛べませんから」
「Pちゃん、ドローンは何機ある」
「菊花タイプ二機、ステルスが四機あります」
「では、ステルスは、ここの防衛に回してくれ。菊花は僕が操縦して攻撃に使う。君はここで芽衣ちゃんを守ってくれ」
「はい。私は、芽衣様をお守りします」
「様をつけないで!」
芽衣ちゃんの悲鳴はこのさい無視。
「じゃあ、お兄ちゃん。あたし先にいくね」
ミクを乗せたオボロが飛び上がる。
続いて二機の菊花を発進させた。
次は僕の番。
ICパックのコマンドは、ブレインレターで僕の脳に送り込まれたはず。
頭の中に湧いてきた。
コマンドは「イナーシャルコントロール」の後に任意のGを言うだけ。
「プロモーション」の後に、任意のGを言うと推進力としても使える。
最大加速三Gだが、通常は二Gまでしか使わない。
二G以上の加速は、装置を痛めるのでそれ以上の加速は緊急時のみ
「イナーシャルコントロール マイナス二G」
僕の身体を包み込んだ金色のロボットスーツは、夕闇迫る空へと上昇して行った。
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