第202話 空中戦1

 高度五百に達して水平飛行に移った時には、先行した菊花とミクが大分小さくなっていた。


 敵の姿は、まったく見えない。


 レーダーには、はっきりと三十一の光点が映っていた。


「イナーシャルコントロール プロモーション二G」


 ロボットスーツは一気に加速した。


 進行方向は視線でコントロールできる。


 ミクとオボロまで数十メートルの距離まで追いついた時、通信機に呼びかけがあった。


『よお、まだ空を飛ぶ力が残っていたのかい?』


 矢納課長の声!


『だが、嬢ちゃんのロボットスーツは、もう限界のはずだ。大人しく降伏しな。命の保障はする』


 嬢ちゃん?


 あ! 芽衣ちゃんが上がってきたと思っているな。


「あの、どちらにおかけでしょうか? 家は北村ですけど」

『ああ! すみません。電話番号間違えました』


 通信が切れた。間違え電話をかけた時の対応が、昔のままだね。


 また、通信が来た。


『こらあ! 北村! おちょくってるのか!』

「おちょくってなんかいませんよ。正直に名前を言ったでしょ」

『喧しい! 生意気言うな! それより、なんでお前が上がってくる!?』

「森田芽衣さんという、か弱い女の子が、変質者に狙われていると聞いたので、守りに来ました」

『変質者とは、俺の事か?』

「他に誰がいるのです?」

『いい度胸してるじゃねえか。俺にそんな口を聞いて、ただと済むと思っているのか』

「いい加減にして下さい。あなたはもう僕の上司じゃない」

『分かってるさ。だが、この戦力差で勝てると思っているのか? こっちはドローン三十機にロボットスーツ一機、そっちはドローン二機にロボットスーツ一機、そして式神使いのくそガキだけ。さっきは、そのガキが、まさかプラズマボールを使うなんて思わなかったからやられたが、今度はそうはいかん』


 という事は、何かプラズマボール対策を立てているのか?


 機体を耐熱仕様にしたとか?


 それとも磁石?


『こっちにもプラズマボールの使い手がいるからな、弱点は知っているんだよ』


 その使い手は、もういないけどね。


『飛行船タイプやヘリコプターのタイプのドローンでは難しいが、今こっちが使っているのは、ジェットドローンだ。速度が遅くて、途中で軌道変更ができないプラズマボールでは当たらないぜ』

『軌道変更なら出来るよ』

 

 突然、ミクが通信に割り込んできた。


 聞いていたのか。


『なんだと?』

『あたしを、あんな変態おばさんと一緒にしないでほしいな。オボロのプラズマボールは、途中で軌道変えられるよ。あたしの思い通りにね』

『う……嘘を付くな?』

『嘘だと思うの? じゃあ、試してあげようか』


 前方のオボロから、光の玉が飛び出した。

  

 光の玉は暫く直進すると、突然右下に進行方向を変える。


 本当に、軌道変更できたんだ。しかもスピードはエラ・アレンスキーのプラズマボールより遥かに速い。

 

 倍以上違う。


 プラズマボールは、途中でさらに二度ほどコースへ変更して進んで行った。


 やがて、前方で大きな輝きが生じる。


 レーダーを見ると、ドローンが一機消えていた。

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