#5 + おまけ

硬いベットの上で目が覚める。


「体が痛い…」


長い間放置されていたであろうベッドは、かろうじて地面で寝るよりマシといった具合だった。

そして昨日、慣れない大鎌を降ったからだろう。

腕に筋肉痛を感じた。


リビングに出てアイテムボックスから黒結晶を3個取り出した。

前と同じ要領で水を作り、水分補給ついでに顔を洗った。

そして残りの黒結晶2個を手に持つ。


「果物って何ができるんだろ?」


手帳には果物としか書いていない。

少し悩んだが取りあえず作ってみることにした。

黒結晶を握り、果物を願う。

すると、手の中の黒結晶が淡くひかり、丸く膨らんでいった。

やがて、手に収まらないほど大きくなったそれは…


「りんご?」


手の中には真っ赤なりんごがあった。

赤くツヤツヤしていて丸く、凹んだ頭から枝が1本生えているその姿はまごうことなきりんごだった。


取りあえず一齧りしてみる。

その瞬間、爽やかな甘味と酸味、瑞々しい果汁が口いっぱいに広がった。


「なにこれ!? 美味しい!」


そのりんごは今まで食べた中で一番美味しいりんごだった。

夢中になってりんごにかじりついた。


気づいたときにはりんごは種と枝だけになっていた。


「この種って植えれば育つのかな?」


食べた果物の種を見たら植えたくなるものだ。

玄関の外はかろうじて植えられるような土が残っていたのでそこに植えることにした。

手で数センチ掘った穴に種を1つ落とす。

そしてその上にさっき取ってきた黒結晶を置き、水を作る。


「あっ… 少し多すぎたかな…」


種1つに対しては多すぎるぐらいの量の水だった。が、すぐに地面に吸収されていった。


改めてシェルターの周りを見回してみる。

玄関の前に広がるのは枯れた草原の上に砂がかぶっていて、まるで砂漠のようだ。

相変わらず遠くにはビルのようなものも見える。

シェルターの後ろに回る。

そちら側にも砂漠のようなものは広がっていたが少し先には辛うじて緑が残る森林が見える。

やっぱりゾンビはちらほらといた。


シェルターに戻る。

そして、今後についてを決めた。

まず、黒結晶をたくさん集める。

集まったら森林のようなとこへ行く。

もしかしたら、意思疎通できる人がいるかもしれないからだ。

いなくても、果物などの食料調達はできるはずだ。

今は沢山いるがもしゾンビたちが消えたら困る。

未来は不確定なのだ。

食料が確保でき次第、黒結晶は保存しておくことにしよう。

当面の目標はそう決めた。


もう1つだけりんごを作る。

そして、そのりんごを片手にまた黒結晶集めにシェルターを出た。


〜おまけ〜

カクヨムでは挿絵を表示できないのでアルファポリス側に挿絵を入れておきます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る