#4
シェルターに戻った私は、黒結晶を高く持って水を願う。
さっきと同じように黒結晶が水を纏っていく。
その間に結晶の下で口を開けて待つ。
やがて黒結晶が消え、水が落ちてきた。
バシャっ!
「ゴホッ!」
勢いよく落ちてきたせいで少しむせてしまったが、喉を潤すことはできた。
顔はびしょ濡れになったが……
「さて、これからどうしよう?」
顔を震わせながら、そんなことを考える。
食料などはゾンビを倒せば無限に入手できそうだし生活には困らなそうだが…
「どうやってもとの世界に戻ればいいんだろ。転移ってことならもとの世界に戻れると思うんだけどなぁ〜」
もしこれが転生ならもとの世界には戻ることはできないだろう。
しかし、恐らく私の身に起きたのは転移だ。服も、もとの世界にいた時と全く変わらない。
しかし、同時にもとの世界に戻りたくない気持ちも芽生え始めていた。
学校に行ってはイジメられ、仲間はずれにされ、先生たちも見てみぬふりをするばかり。
高校に入ってからは毎日こんなような日々を過ごしていた。
こちらの世界の方が楽に過ごせる気がしてきた。
「まあいいや。どうせ今じゃ何も分からないんだし。」
考えても無駄なことなので棚に上げることにした。
「あっ! そうだ忘れてた!」
私は謎の木箱の前に立つ。
ゾンビのせいですっかり忘れていたのだ。
私は黒結晶を4つ掴み、木箱の中に落とす。
落とされた黒結晶は水色の光に飲み込まれた。
そして手を光の中に入れる。
中は、無限に広がっていそうな空間があった。
例えるならば、ドラ○もんの四次元ポケットのような。
心の中で、黒結晶を願うと手に物体の感触がした。
引き上げると、手の中には黒結晶が1つにぎられていた。
心の中では不思議に思っていたが、ゾンビのせいでもう驚かなかった。
「これでいくらでも黒結晶を集められそうね。」
一安心すると少し休憩し、シェルターの外へ出る。
日が暮れるまでシェルターの外をうろついているゾンビを安全地帯から倒し続けた。
そして日が暮れた。
「はぁ〜疲れた。」
ずっと倒し続けていたからへとへとだ。
太陽のような恒星はとっくに沈み、オレンジ色の空が地平線の少し上に見えるだけだった。
頼れる光はシェルターの入り口についている小さな電球だけだ。
「こんな世界でも星が見えるのね………」
おもむろに見上げた空は、ゾンビが彷徨う世界とは思えないほど、
美しい星空だった。
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