#3

シェルターに戻る。ここが安全地帯である以上、しばらくはここに住むことになりそうだ。


シェルターは思いの外広かった。

目覚めた部屋

ポツンとベッドが置いてある部屋が3部屋

薄汚れた大きめの風呂場

枯れた花が放置されている花壇がある庭

1人で過ごすには大きすぎるぐらいだった。


しかし、問題点はあった。

「喉乾いた……」

さっきゾンビから逃げるのに全速力で走ったからか、喉がカラカラだ。


シェルターの中を探し回ったがペットボトルのようなものはなかった。

まあ、あってもいつのか分からないものだろうから飲みたくはないが。


シェルターを探し回っている内に最初の部屋に木箱のようなものを見つけた。

「この中になにか入ってないかな?」

そう言いながら木箱を開けた。


木箱の中には水はなかった。

しかし、代わりに水色に光る水面のようなものがそこにあった。


「何これ?」

そうつぶやいた時、手帳にアイテムボックスと書かれていたことを思い出した。


手帳を開くとさっきには無かった新しいページが追加されていることに気づいた。

「あれ?こんなページあったっけ?」

 

【クラフト】


そのページにはそう書いてあった。

──────

飲料水 黒結晶 x 1

果物  黒結晶 x 2

野菜  黒結晶 x 2

肉   黒結晶 x 5

    ・

    ・

    ・

──────

このページ以外にもまだまだ沢山ありそうだ。

「黒結晶?………もしかして!」

とっさにポケットの中にある黒い結晶を取り出す。

その結晶はさっきと相変わらず黒光りしていた。

「えっと……1つしかないから水? クラフトってことは水を作り出せるのかな?」

ちょうど喉が乾いていたし試してみることにした。


「でもこれどうやってクラフトするんだろ?」

手帳をめくってみたが何処にもやり方らしきものは乗っていなかった。


「もう分かんない! 早く水をくださーーーい!!」

そう叫んだ瞬間、左手に持っていた黒い結晶が淡い光を放ち始め空中に浮かび始め、それを中心に水を球状にたたえ始める。

「わあっ!」

いきなりのことで驚き、尻もちをついてしまった。


黒い結晶は徐々に縮んでゆき、ついに消えてしまった。

黒い結晶が消えた瞬間、空中に浮かぶ水は……


地面に落ちた。


「パシャ」と音を立てながら落ちた水はかなりの量がありそうだった。


「あぁぁぁぁぁ〜………」

薄汚れた地面に落ちた水を飲もうとは思えなかった。

しかし、これでこの世界について少し分かったような気がした。


恐らく敵、ゾンビなどを倒すと黒結晶が入手できる。

それを使っていろいろなものをクラフトする。

それがこの世界のシステムなのだろう。


「ということはここは地球外? もしかして異世界転移ってやつかな………」


小説とかで見る異世界転移とはだいぶ違うが地球にこんなシステムはないだろう。恐らくここは異世界だ。


ただ、そういうシステムである以上心配事はあった。

「ゾンビってどのくらいいるんだろ?」

しかし、その心配は杞憂に終わった。


「ア゛ァ゛ァ゛……」

「……っ!!」


シェルターの外からまたゾンビの声がした。

しかも今度は2〜3体の声がする。


恐る恐る外に出てみる。

さっきいた起伏の上に数体のゾンビがいる。

さっき私が叫んだ声に呼び寄せられたのだろうか?

恐る恐るドアを開けたにも関わらず、こちらに気づいたようだ。見た目に反して耳は良いらしい。

数体のゾンビがこちらに向かって歩いてくる。


「展開…」


思わず身構えたが、その心配は要らなかった。

先程のゾンビと同じく一定の距離を開けて進んでこなくなった。


「数体でも入ってこれないのね…」 


ホッと一息ついてゾンビのそばに近寄る。

男のゾンビ

女のゾンビ

それぞれ服も違った。


「ゾンビってことはもともとは人間だったのかな…」

よくあるゾンビ映画では人間が感染してゾンビになるものが多い。

「私はこんなふうにはなりたくないな…」


そんなことを言いながら安全地帯の中から一方的にゾンビに向かって大鎌を振り下ろす。


「よいしょ!」


散る血飛沫

悲しそうにも聞こえる断末魔……


すべてのゾンビを倒し終えた。

ゾンビの返り血を浴びてしまったが、それもゾンビの死体と一緒に消えていく。

まだゾンビは怖かったが、安全地帯にいるという安心感の方が強かった。


ゾンビは5体だった。


「黒結晶5つか…」


私は地面に落ちている黒結晶を回収し、シェルターに戻った。

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