小惑星籠

5、要するに復讐したいだけ。

　みーんみんみん。みーーーーーーーっ。みん。

　やあ、僕はセミ。どうだいうるさいか？

　よろしいならば計画通りだ。

　まさに今は真夏のセミ祭り！ バーゲン始めてもいいくらいのセミ様大量発生。僕らは今年も派手に暴れるぜ。

　いたるところに立っている木や電柱にしがみ付き、みーんみんみん。

　そこから飛ぶ瞬間にビッと一声。

　なんせ鳴いてなきゃいけねえやつらなんだ僕たちは。いたしかたあるめえよ。

　はあ、僕らの仲間にオシッコかけられた、だあ？

　そりゃあ御前様、ドンマイだな。たまたまだ、許せ。

　まあそれでキミらがひどい目に遭うなら、こちとら喜ばしいことだ。

　ちっせえときに捕まえられてよー。たまに食べられるやついてよー。気持ち悪いとかいって早めに御天道様拝んだと思ったら捨てられてよー。

　大きくなったらなったで、セミ捕りだとかいって凄い形相で追っかけてくる餓鬼がいて、捕まったら箱の中。逃がしてくれなきゃ小さなカゴの中で仏様の仲間入りだ。もう一回くらい飛ばせろよなもー。そのまま逃げるけれど。

　あとは、標本にされるだろ、足ちぎりやがる非道なやつがいるだろ、御天道様拝み始めて2週間くらいで死ぬだろ、おい僕ら散々じゃねえか。

　最後はどうかと思うが他はキミらにひどいことされてばっかりだぞ。どうだ僕らがうるさいのくらいどうってことないだろ！

　最近は涼しい部屋から出てこねえしよう。今年も計画実行させろよそこのキミら。

　最近僕らを捕まえにこねーし。ふん、だ。

　いいよじゃあ部屋の外でガンガン鳴いてやる！

　電車の中でヘッドフォンかイヤフォンの音漏れくらいうるさく鳴いてやる！

　どうだ迷惑だろ、うるさいだろ？

　そして僕がうざったいだろう。ドヤ顔で今はその辺の木につかまっているところだ。

　これが今年の、というか今年もこの計画だ。

　チンケな仕返しとか思うんじゃねえぞ。僕らはキミらみたいになんでもできるわけじゃねえんだ。小学生並にしょうもない方法で仲間の復讐をしてやる。

　……おいちょっとまて、そこのキミ。近寄るでないぞこの無礼者。

　僕を誰だと思っている。そうだセミ様だごく一般的な。

　まてまてまて追ってくるな、捕まえようとするな、僕の計画が台無しになるだろうがー！

　ビッ。

　そして今日も、セミが一匹捕まった。

　真夏、入道雲が太陽の光を反射する。

　そんな暑すぎる昼下がり。

　お題；うるさい計画