　私のお婆ちゃん(52歳)が浮気してる。私が4歳のときのことだった。

　お婆ちゃんはお母さんを16歳のときに、お母さんは私を16歳のときに産んだ。周りから散々怒られたんだと。まあそうだろうな。若すぎるだろう。

　夜中におトイレに行きたくなって、二階の部屋から降りてきたら、まだ台所の電気がついていた。

「お母さん、もうやめて。浮気なんてお父さんに何と言えば」

「あの人にはもう飽きたんだ。疲れたんだよ」

　幼い私にとっては、聞きたくもない言葉だったのだろう。

　お婆ちゃんが何処かに行ってしまうかもしれない。嫌だ。

　などという気持ちがいっぱいになって、おトイレに行くことも忘れて、台所の入口のすぐ横で立ちすくんでいた。

　そんな話を聞いてから10年後、私が中学二年生のときのことだった。

「やっほーみのりちゃん、元気にしてた？」

「ワシらはまだまだ元気だぞ！」

　お婆ちゃん60歳。隣にいるのは一昨日64歳の誕生日を迎えた、お爺ちゃん。

　幼い頃の私は、エイプリルフールというものを知らなかった。

　私のお母さんへの嘘をたまたま聞いてしまったのだった。

お題：怪しい祖母

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