あいつは聖女?わたしは墓荒らし

グイ・ネクスト

第1話 プロローグ 地下神殿の死体置き場

「っ痛い」乱暴に2人の大男型、人形ドールによって投げ捨てられる。

人形ドールたちの上に落ちて、人形ドールたちの中へ埋まる。


ここは地下神殿の3階。魔法の灯がわたしと捨てられた人形ドールたちを照らしている。わたしも数日後には消えて無くなる。意識さえも。


黒い肩まである髪も、赤くなった目も、何の意味もなさなくなる。そんなのは嫌だ。特にあいつ。あいつの事を思い出したら、もうたまんない。あいつは聖女になって世界を壊してさしあげますわって叫んで、笑っていた。


優等生め。何よ、ほんのちょっと拒絶の悪魔を宿せたからって調子に乗って。

わたしなんて名も無き下級悪魔だけど。そう、それでも下級悪魔と契約できたけど。


 思えば人間として売られ、人形ドールとしては失敗作として死体置き場に捨てられたわたし。何にもいいこと無かったかもしれないけど。ここから何か逆転してやりたいじゃない。だったらまず下級悪魔を呼ばないと。


「ちょっとねえ、ちょっと悪魔さん。出て来てよ。いるんでしょ」

影、わたしの影からにゅっと悪魔さんは出てきた。わたしとほぼ同じ姿で。違うところはわたしの青いワンピースを黒いワンピースに染めている事だろうか。

「何か用?」と、悪魔さんは言う。

「わたしはリスティア・ヴァズ・クラウン。まあ、人形に名前なんて無いけど。人間だった時の名残りみたいなモノ。ちょっと呼び名があった方いいでしょ。それで長すぎるから、リズって呼んで。それであなたにも名前いるでしょ。ニュクスでいい?昔の滅んだ文明の何かの女神だったわ」

「よくしゃべるな。名前はありがたくもらっておく。それでリズ、何をしたいんだ?お前は」

「逆転したいのよ、わたしは。それを手伝ってよ」

「じゃあ、まずこの部屋にある死体を食べる事だな」

「え?食べれるの?これ」

「魔力が血液のようなモノだ。そしてここの死体たちは魔力の塊だ。どんどん食べればいい」と、悪魔さん、ニュクスはわたしを見下して言う。

「ふーん。偉そうに。まあ、いいけどさ。って壊せないじゃない」と、わたしは近くにあった死体を手で叩くが、壊れない。

「手に意識を集中しろ」

「意識を?こうかしら」と、わたしはもう一度叩く。やはり壊れない。

「違う。心臓から溢れ出たエネルギーが手に宿る。そういうイメージだ」

「難しい事を」と、わたしは怒りながらも心臓から溢れ出たエネルギーをイメージしてみた。そのエネルギーは手に宿り、そのまま手で死体を叩く。いや、切った。

「おおぅ。スパスパと切れるわよ」と、わたしはどんどん切って行く。

「さあ、食べてみろ」

「そうね」と、わたしは小さく切った死体を食べた。材質はとても貴重な材料だと言っていたわね。実験者様は・・・。

あら、甘くておいしいじゃない。昔食べた甘いお菓子を思い出した。これならどんどん食べれるかも。ただ見た目が人間の体みたいに見えるのは服だけ。わたしの体もこんな感じなのね。白くて無機質な体。でも時々虹色に光ったり、どういう材料なのかしら。あっ。お腹壊さないかしら。ってもう人間じゃなかった。わたし、人形だわ。魔力が血液って言っていたし。大丈夫ね。

あれ、何だか眠くなってきた。「ニュクス、眠るわよ。その間はわたしを守ってよ。まさかこれで意識が終わりってわけじゃないでしょ。」

「魔力を得た事とわれに名前をつけた事で眠くなっただけだろう。人形ドールとして魔力を調整するために眠りが必要なのかもな」

「何それ、あなたも知らないんじゃない。」

「ああ、知らないな。リズのように死体を食べて、悪魔に名前をつけたのは初めての事だからな。だから分からない。次起きて、生きていたなら成功だろうさ。せいぜい良い夢を見ることだ」

「うう、わたしの姿で言われると何か嫌ね。それじゃ、おやすみ、ニュクス。また会える事を楽しみにしている・・・」と、わたしは台詞も途中に目は閉じられ、意識も薄れていった。ああ、また戻って来たい

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