phase7.メイドさんバスタイム(その2)

<side ♂>

 ドキドキしながら風呂に入り、待つこと3分。

 「それじゃあ、おジャマしま~す……ってのもなんかヘンだよね?」

 恥じらいの気配もなく今日子が登場した。


 「──色々言いたいことはあるが、ひとまず置いておくとして、ひとつ聞くぞ」

 「ん? 何かな?」

 「どうして、お前はスクール水着(白)なんぞ着てるんだ? て言うか、どこからそんなモン手に入れた? 高校時代までは男だったはずだろーが!」

 息も継がずに3連コンボのクエスチョンを、俺は叩きつける。


 「ああ、コレ? うん、「俊秋さんのお背中流す」って言ったら、メイド長がくれたよ? ボク、女物の水着なんて持ってなかったから、ありがたく使わせてもらったんだけど。それが何か?」

 「そうか、メイド長GJ! ……じゃなくて。そもそも20歳にもなった女がスク水を着るのってどうなんだ? 大学時代の私物とかは!?」

 「うーん、短大のときは、プールにも海にも行ってないんだよね。そもそも、2回生の夏にグァムに行こうって誘われた時、「やめとけ!」って止めたの、俊秋さんじゃん」

 ジト目で見られて、ちょっとだけ怯んでしまう。


 「ぐっ……(そりゃあ、お前の友人の顔ぶれ見たら、どう見たって男漁りツアーな感じだったし、しょうがねーだろ!)」

 とはいえ、俺としても素直に本音をブチまけるのは少々憚られた。男性関係のラフさを除けば、彼女たちは、少なくとも今日子コイツにとっては大事な友人らしいし。


 「えっと、もしかして、似合ってない、かなぁ……」

 途端に自信なさげな顔つきになって、へにょんと眉毛をハの字にするコイツを見て、俺は慌てて口を開いた。


 「い、いや、そんなコトはないぞ! 今日子のスレンダーでスマートだが、出るべきトコロはそれなりに出ている体型を、その水着は上手く引き立ててるしな」

 その言葉に嘘はない。それほど背が高くなく、痩せ気味ではあるが、それなりに均整のとれた今日子に、シンプルな白のワンピース水着はよく似合っていた。

 実際、俺としても、彼女の身体をガン見しないよう視線を逸らすのに、多大な精神力を要求されているくらいだ。


 「そっか……よかった。ぃやぁ、2年間も女の人やってるんだけど、いまだに女性の服装って、よくわかんなくてさ」

 「ヲイヲイ、お前の母さん、服飾デザイナーじゃなかったっけか?」

 「うん、まぁ……だから、他人が着てるぶんにはそれなりに評価もできるんだけど、自分のこととなると、どうにも、ね」

 「そういうものか」

 「うん、そーゆーモンです。じゃ、そろそろ背中流すから、浴槽から出てよ」

 「あ、ああ……」

 立ち上がりかけた俊秋の動作がピタリと止まる。


 「? どーしたの?」

 「い、いや……ちっとばかし不都合を思い出したんでな。やっぱり、背中流すのは、また今度でイイ」

 「?? 急になんで?」


 不思議そうな顔つきで首をヒネる今日子に対して、「今お湯から出ると、スタンディングしたナニの状態が丸見えでヤバいんだよ! 元男ならわかれよ!!」と、言いたくても言えないナイーブな俺(童貞・20歳・男子)なのだった。

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