phase5.メイドさんくっきんぐ(その2)

<side ♂>

 「侮られたままだと癪なので、晩御飯にも挑戦してみることにしました~!」

 ダイニングでグッとガッツポーズをとるアイツ。

 本人は気合入れてるアピールのつもりだろうけど、メイドさん姿でやっても可愛いだけだぞ?


 「ヲイヲイ、まだ修行中なんだろ? 大丈夫なのか?」

 「うん。でも、お料理教えてくれてるメイド長さんが「料理上達のコツは誰かに食べさせてあげようと考えながら作ることです」って」

 「えぇっと、それってもしかして……」

 「うん、俊秋さんのために、ボク、がんばってみるよ! だから……食べてくれる?」

 「(こ、こいつ、キラキラと何の打算も疑いもない目で俺を見上げてきやがる)」

 そのあまりに可愛らしい様子に、思わずイケない妄想を想起しかけて、俺は必死で理性をかき集めた。


 「(いかん、鼻血が……しっかりしろ、俊秋! 今日子こいつは「自分」じゃなく「料理」を食べてくれるか、って聞いてるんだ!)

 あ、ああ、もちろん。光栄だな」

 「えへへ、ありがと。でも、そんなに期待しないで、ね?」

 「ね?」のイントネーションだけで、ご飯三杯は軽い! ……と思った俺は、なんか、もう色々とダメかもしれない。


 「(好きな子の手料理食わせてもらえるとあっては、否が応でも期待するっちゅーの!)

 ま、まぁ、それなりに、な」


 ──その晩、古雅家の食卓に並んだ豪華料理を尻目に、ひとりだけ野菜炒めと卵焼きでご飯を掻き込む青年の姿があったが、それが誰かは言うまでもないだろう。


 「ごめんね、ごめんね。まともに出来たのがそれくらいで……クスン」

 「な、何言ってるんだ。千里の道も一歩からだろ? それに、結構旨かったぞ」

 ただ、卵焼きはともかく野菜炒めまでがなぜか甘ったるい味がしたのは、いくら甘党でも何とかしてほしいとコッソリ思う俺なのだった。

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