phase4.メイドさんくっきんぐ(その1)
<side ♀>
午後のお仕事の合間に少しだけ休憩時間がもらえたから、メイド長さんの許可を得て台所を使わせてもらうボク。
「ららら、こ●●●ん♪」
「──そう歌いつつ、焼いてるのはホットケーキなのな」
あれ、俊秋さん、珍しいね、こんなトコロに。
「じゃあ、俊秋さん、わざわざ、ただのコッペパン焼いて食べたい?」
「う……それは遠慮したい」
「でしょ。フンフンフーン……とりゃ!」
軽い掛け声とともに、右手首のスナップをキメる!
「おお! 宙を舞った狐色の円盤が見事半回転して再びフライパンに!」
「えっへん、これでもホットケーキとかクッキーとかの簡単なお菓子作りには、結構自信あるんだ」
ドーナツも得意だよ~、あんこも自作したことあるから、おはぎとかもOKさ!
「(そういや、コイツ、男の頃から甘党だったな)じゃあ、普通の料理は?」
え、えーと……。
「そちらは鋭意修行中。将来の成果に乞うご期待って感じ?」
「ふむ……要するに、まだ未熟だと」
むむッ!?
「──俊秋さん、女の子にはわかっていても敢えて触れて欲しくないことってあるんだよ……」
ニッコリ笑いかけてるけど、たぶん自分でも目が笑ってないだろうなぁ、と思う。
「! こ、こりゃスマン。悪かった」
「あはは、いいよ。そんなには気にしてないから」
「(こりゃ、メチャ気にしてやがるな)あ~、そろそろ焼けたんじゃねーか?」
「あ、ホントだ」
コンロの火を止めて、お皿を用意して……。
「ホイッと!」
ちょっとアクロバディックにフライパンをかえすと、キレイに焼けたホットケーキが、しっかりお皿の上に着地した。
「お見事!」
「エヘヘ、ありがと。良かったら、俊秋さんも一緒に食べる?」
「え!? い・い・い、いいのか?」
?? 何うろたえてるんだろう?
「うん。実は、女の子になってから、胃が小さくなったみたいで、丸々一個食べられないんだよね~。無理して食べても太っちゃうし」
経済的って言えば言えるけど、甘党としては、いっぱい食べられないのは残念かも。おかしいなぁ。女の子は甘い物は別腹って聞いてたんだけど。
小さく切ったホットケーキをフォークに刺して、俊秋さんの前に差し出す。
「ハイ、あ~ん」
「!! あ、あーーん……(う、うれし過ぎて味わかんねー!)」
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