第15話 続けてあなたはその本を読み進めた。


 ダンジョンについての考察


 P12


 ダンジョンの歴史年表

 前半部分より抜粋ー




 

 ダンジョン歴史年表


 ここでは「ダンジョン」と関わりの深い出来事を可能な限り遡って羅列していくよ。


 ワタシの独自解釈も含まれているから、ほかのダンジョン関連の書籍と違う部分もあるでしょう。


 でも安心なさい。いずれはこのワタシの説がこの世の真実になるのだから。





 2018年


 日本全国で突如、単年の行方不明者数が過去横ばいだった8万人前後から30万人規模にまで増加する。


『行方不明者届けが受理された件数でああり、実際の行方不明者数はこれより多いことが想定される』


 2019年 日本近海で新しい数個の海底火山が発見される。同時にそれが活動していることも調査で判明した。


 なお2018年6月に噴火したハワイのキラウエア火山はこの時点で溶岩流こそ止まっていたものの、内部では活発な活動が確認されている。


 2019年

 日本近海のどこかを震源とした大規模な地震が発生。


 奇妙な事に海底地震計がその地震の発生と同時に全て故障した為、震源を特定出来ないという異例の事態が発生。


 国の安全管理を疑問視する世論が形成される。


[2011年の大震災以上の規模だったにも関わらずこの地震による津波の発生は確認されていない]


 2020年

 日本でとある新興宗教集団の教祖が注目を集める。


 SNS上で指名手配犯の潜伏先や、未解決事件の容疑者を[予言]し、警察に情報を提供した所、全て的中し大量の検挙に繋がる。


『信者の中に警察関係者を多数確認している事から予言は演出であった可能性が高い』


 最初で最後の全国生放送のTV番組出演の際に、突如テレビカメラの前で意味不明な独白を始める。


「世界は変わる」と言い残し、その場から完全に姿を消す。


 その3日後、新興宗教集団から警察に行方不明者届けが提出され、受理される。


 2028年現在も彼女は見つかっていない。



 


 2020年


 東京オリンピックが開催される。日本は合計22個のメダルを獲得。前大会よりも1つ多いメダル数を記録。



 大会後のメダル獲得者のインタビューにて半数が「光の腕環」の消えた教祖へ生放送中呼びかける異例の事態が起こる。


 彼らは皆信者だった。オリンピックの熱が冷めやらぬ中再び、「光の腕環 教祖消失事件」へと注目が集まる。





 2021年



 神奈川県由比ヶ浜にて、10頭のシロナガスクジラが死体の状態で流れ着く。これは2018年夏にオスの子供が流れ着いた時ぶりの事である。


 特筆すべきはどの個体にも腹のあたりに大きな傷があった


(後の調査において、それは咬傷であったと判明。しかし現存するどの生物の歯型にも合わずそれ以上の調査は打ち切られた)



 2022年



 日本の気温40度超を記録する。


 全国で熱中症による死者が急増。




 2023年



 日本史上最多の被害者を出すことになる銃を使っての殺人事件が勃発


 被害者が全て、過去に凶悪犯罪を起こしたものや、現在起こしたものに限定されていたなどの特徴がある。



 被害者は皆、銃殺されており時には留置所や拘置所の中でも犯行が行われた。


 押し入る形で行われた留置所での殺人は白昼堂々と行われ、多数の目撃者を出した。


 白い般若の面を被った男が警察署内の留置所にいる多数の警察官の制止を振り切る。


 当時女児への強姦殺人事件の容疑者として取り調べの為勾留されていた男の部屋へ侵入。


 そのまま胸と頭、下半身に三発を発砲。



 最初の一発で被害者は即死していた。


 その後犯人は、警察官により一旦は取り押さえられたが尋常ではない膂力を発揮しその場から逃走。


 警察は200人以上の捜査官、多数のパトカーやヘリを使って追跡を開始したが、確保にはつながらなかった。




 生中継でこの有様は放送され、多数の映像媒体にマンションを登ったり、家の屋根から屋根へ飛び移り逃走を図る犯人の姿が残っている。



 被害者が皆、世間的に大きく報道された凶悪事件の容疑者であったこと、その特徴的な出で立ちや、警察官の犠牲者がゼロだったこと、ハリウッド映画のワンシーンのような逃走劇などからこの事件の容疑者は世論を味方につけた。



 警察の捜査により、使用された銃器は所持申請されている猟銃と判明。



 目撃者の証言や弾痕から大口径のライフルまで絞り込まれる。



 捜査の結果、神奈川県在住 無職の64歳 大木多佳雄が所持申請している銃弾の数が臨時の一斉点検の際に数が合っていなかったことや、監視カメラに残っている映像と背格好、銃の意匠が酷似している事から、最重要参考人として挙げられる。



 この一斉点検の翌日、警察が自宅を訪問した所、大木多佳雄は姿を消していた。



 自宅にて警察宛ての次のターゲットの詳細が書かれたメモ書き、30年前に殺人事件の犠牲者となった妻へ宛てた手紙、そして短い遺書が発見された。



 遺書は支離滅裂な事ばかりが、荒れた文字で書きなぐられていたが、最後の一文だけは非常に美しい文字で締めくくられる。







 ああ嬉し 浮世の鬼を喰らう鬼 誰が為さずとも 我が為さん


 愛しき酔いよ この身体をもっと鋭く さらに強く 奴らの命に届けておくれ







 1ヶ月後。メモ書きで予告した留置所に現れた般若の男は待機していた機動隊と衝突。


 これをかいくぐり、彼は妻の仇討ちを成し遂げる。



 その後、般若の男は機動隊により銃殺された。


 公表されていないが、機動隊はこの事件で一個部隊の銃弾全てを消費していた。

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