能力に関する記録『青空の外』
03 01 モノクロさん
このような話がありました。
それはまるで非科学的であまりに物語っぽくもみえるも、時に人間の心理をついてくるものでした。
「青い、青い空」
それは、元々世界はモノクロで、それが色彩という概念が伝染することで汚く彩られた、という話。
だとしたら、ぼくはその青空の外にいるのかもしれません。
ぼくは、自分がモノクロに見えたのでした。
それでも、ぼくが綺麗だなんて、とても思えませんでした。
「あなたが
ぼくは先日、風の噂を頼りに、ぼくのこの奇怪じみた「能力」の糸口を掴むため、何やらとてもオカルトじみたサイトに助けを求めることにしました。
数分のそのサイトの方との文面の会話の末、ぼくの学校の近くの図書館に待ち合わせをしていました。とはいえ、その日はどうも図書館に入る気に何故かなれずに、その手前に置いてある自動販売機でコーヒーを購入して、隣のベンチに腰掛けそれを飲んでいました。
そういえば、その人とぼくは図書館のどこで待ち合わせるかとか詳しいこと決めていなかったなぁ、どうしようかなぁと考えていた時、
「依頼人さんはブラック派なんだね」
なんて声が聞こえたので、それはもう驚きました。
「⋯⋯僕も好きだよ、ブラック」
その声の主の方向へぼくが顔を向けると、そこには、何とも怠惰を謳歌していそうな青年がありました。髪はボサボサ、無精髭、一応服は揃えているものの長い間使用していそうなものでした。
「あなたは誰です?」
と質問してみるものの、
「君は学生さんかな、あんな怪しげなものを頼るんだ、きっと大変だろうねぇ……」
と人様に失礼極まりないことを淡々と飄々と唱え続けていました。
「あなたが
その質問に対して、やっと、
「あぁ、挨拶が遅れて申し訳ない。僕がそれだ」
と答えてくれました。
「……なるほどね、自分の体だけモノクロに見える、か」
ぼくはその後、その冷嶺さんにぼくの能力である『青空の外』について冷嶺さんに一通り話しました。
『青空の外』はまるで呪いのような能力、ぼくの体のみモノクロに見える……だけといえばだけなのだが、こんな何とも奇怪なものは、ぼくの他人との関わりがなくなった……というより、ぼく自身が話しかけづらくなりました。そのため、支障をどうにかなくすため、この『青空の外』をどうにかして欲しい……というのが大まかな内容です。勿論、ある程度、どのくらい、いつ起こるのかなどもしっかり話しておきました。
冷嶺さんはあのあとその自動販売機でぼくのと同じコーヒーを購入して、ぼくの隣に座って味わいながらそれを聞いていました。視線はどこか上の方、ぼくの方は見ていませんでした。曇り空を見て何が楽しいんだか、と思わず考えてしまいました。
「あ、そうそう、」
唐突にコーヒーを飲みながら上の空のような視線をしていた冷嶺さんがぼくの方を見て、
「今回ちょっとめんどくさくてさ、」
と話を切り替えました。
「多分、というかもちろん、このことに関する自覚はないんだろうけど、」
ぼくはそのことが何のことかもわからず、とりあえずそれを聞こうと、空になったコーヒーの缶を傍に置いて、冷嶺さんの方に視線を移しました。
「完全にこちらの話なのが申し訳ないんだが、今回はどうも2つの依頼を同時進行していかないといけないみたいなんだ」
そのことについてもちろん知る由もなく、
「……はぁ…」
とずいぶん中途半端な回答をしてしまいました。
「だからね、君には両方の歩調を合わせるために少し退屈させるかもしれないんだけど、その辺はご了承くださいなというわけでね」
という冷嶺さんの言葉である。
「まぁ、はい、いいですよ、頼ってる以上文句は言えません」
と、ぼくは無愛想にも聞こえるような返事をしました。
「それならいいや」
と冷嶺さんはいい、
「じゃあ今日は、詳しいことを聞くことにしようかな、」
と話を持って行きました。
「え、待ってください」
ぼくはそれに少しの違和感を覚えました。
「多分ぼくの『能力』についての話あれで大体話しましたよ?」
…というわけなのだ、能力の内容、頻度、時間帯……割としっかり説明したつもりだったのだが、他に何か聞きたいことがあるのでしょうか。
「あぁ、一個大事な質問を忘れていてね、色んな意味で重要になってきたりするんだよ」
と冷嶺さんは改めてこっちを見てこんな質問を……
「その『青空の外』は、何をきっかけに起こったの?若しくは、その能力の発生の前後に何かあった?」
……思い出したくない記憶でした。
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