第2話 このまま続いて欲しい日々
駅前の待ち合わせで定番の場所や、店先がイルミネーションで飾られている、まだまだクリスマスは数週先なのに、早とちりすぎじゃないか。といつも思う
僕は昔からこの時期になると家から出ら回数がめっきり減る。ましてこんな人の多い場所なんて滅多に来ない。理由はお察し。
でもその日だけはすこし、いや、だいぶ心が高鳴っていた。
「うわぁ〜、すごいよ、長谷川くん!めちゃキラキラしてる!」
僕の隣で装飾にも負けない輝きで笑う彼女。
「ほんとだね、でもまだ早すぎない?まだ11月だよ?」
「いいじゃん!こーゆーのは雰囲気だよ!雰囲気!」
なんでこんな状況かと言うと、いつも勉強に付き合ってくれるから、お礼がしたい!と彼女は僕を駅前に連れてきていた。
「で、今から何するの。」
「お父さんの会社でスイーツバイキングの優待券貰ったけど、うちの家族甘いの苦手だから、友達と行きなさいーって」
「そこで僕?」
「そう!甘いものいける?」
「うん」
そうして向かった場所は、駅に隣接するビルのかなり上層にある高級感のある場所だった。学生服のまま来た僕らにはどうにも似合わない。
「ここねー、ショートケーキが美味しいんだって!」
中に入ってみると、子連れの専業主婦や家族連れが大半を占めていて、賑やかな雰囲気があって、少し安心した。
「ねぇ、長谷川くんてさ」
一番人気のショートケーキがあまりにも美味しすぎてしばらく無言で食べていたが、いきなり彼女が口を開いた。
「なに?」
「好きな人とかいた事あるの?」
前に彼女に付き合っている人がいるかと聞かれたから、そんな事あるわけない。と少し強く否定したことがあった。
「んー、そうだなぁ、1回だけある気がする。」
「え!どんな子?」
「えー……そうだなぁ、明るい人だったよ、周りからの人気もあったし、なんと言ってもかわいかった」
「長谷川くん顔で選んでんの!?」
にやにやしながら僕の顔を見つめる。
「まぁね」
「うわぁ」
「冗談だよ、顔だけじゃないよ」
けらけら笑う彼女につられて笑ってしまいながら、彼女の顔を見つめてしまう。
なんせ笑顔は初恋の人に似ている。
「今日はありがとね!楽しかった!」
「こちらこそ。もうあのショートケーキは一生食べられないだろうね。」
「そうだよね!あれはもう食べられないよね」
静かに笑う彼女、今日はほんとに来てよかった。歩きながら手のひらが当たるのを意識して少しどきどきしていたら、
「さっきの話の続きだけどさ」
「ん?」
「ほら、好きの人の話」
「あぁ、それが?」
いきなり立ち止まって意地の悪い顔で僕を見つめてくる彼女。その視線に鼓動が早くなるのがわかる。
「なんでもない!」
「え、なに」
「なんでもー?」
にこにこ笑いながら、僕の先を歩く彼女。
本当にあの言葉の続きを聞くのはもっと先のことだった。
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