事件
最果ての地の孤児院で起きた“神父とシスターの惨殺事件”は事件現場である最果ての地ではあまり話題になっていなかった。それもそのはずである。何故なら、「最果ての地には子供達、神父、シスター以外誰も住んでいない」のだから。
〜東の地、王都ソンヌ〜
「神父様やシスターの惨殺ですって」
「まぁ、奥様本当ですの?」
「えぇ、発見したのは孤児の少女なんですって」
「あらまぁ、その子達も大変ねぇ」
街で会話をする奥様方。僕の母さんもその1人だった。
「それに比べたらうちの子は……」
じろりと僕のことを睨みつける。
「あの忌々しい血を引いていながら何の役にも立たないわ。なんでこんな子産んだのかしら。」
そう言って母さんは僕のことを殴った。僕はただ耐えるだけ。もう慣れているから。
「帰ったらまたお仕置きしないとね…それでは、私はこれで失礼致しますわ」
にこりと会釈して母さんは僕の襟首を引っ張って帰った。そして僕はお仕置き部屋に入れられた。手首足首を拘束具と鎖で縛られる。ここからは母さんの気が済むまでバラ鞭で殴られる。僕が血だらけになってもそれは終わらないことがある。あぁ、勘弁してくれ。掃除するのは僕なんだから。……そう思ったところまでは覚えている。気がついたらお仕置は終わっており、床に放置されていた。ふと顔を上げ、鉄格子から空を見る。紅い月が出ていた。何日も連続で紅い月だなんて珍しいなと思った。その時“お逃げなさい。貴方このままでは殺されてしまうわ”と声が聞こえた。「逃げられないよ。」そうぽつりと呟いた。
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