3. 一次創作と二次創作の違い
3-1.誰がルールを決めるのか
一次創作のいいところは、物語の中のルールを自分で好き勝手決められるところだ。もしかしたら、これが最大のいいところなのかもしれない。
昔、とある世界的に有名なSF映画の監督が、誰かに「空気のない宇宙で銃撃戦の音が鳴るのはおかしい」と言われた際、こう答えたそうだ。
「私の宇宙では鳴る」
もう、これだ。これだよなぁ、一次創作の良さ……。と、この話を知った時の私は、膝を激しく打ったのだった。
ただ、もちろんこの「ルールを決めるのは自分」というのは諸刃の刃だ。自分で決めるしかないから、ゼロから考える必要があるし、整合性を取らないといけない。
ルールに合った描写ができているか、物語の全体を見渡して確認していくのも、自分だけの仕事だ。矛盾してはいけないし、矛盾させるならきちんとした理由が必要になる。成立させるのも破綻させるのもの、自分次第というわけだ。
一方、二次創作はどうだろう。これはもちろん、公式がルールだ。公式のルールに沿って、公式のルールに合った物語を考えていくことに意義があり、楽しくもある。
公式という強いルールブックがあるおかげで、二次創作を手がける際は、かなりしっかりした土台が存在した中で物事を考えることができる。これはもう、(語弊を恐れずに言うと)楽で楽で仕方がない。
だって、Aさんの性格や価値観はとっくに決まってるし、こんな時にどう動くかも想像がつくし、見た目や声や話し方だって決まっている!すごい!悩まなくて良い!すごい!
とは言うものの、これがキツく解けない足枷になっているのも事実。
どんなに自分が、Aさんの一人称は「私」の方がいいのになぁ〜と思っていても、公式で「ボク」を使っていたならば、そちらを採用するしかない。公式で高所恐怖症のAさんにスカイダイビングをしてほしいと思ったら、公式を覆すだけの何かを考えないといけない。
そういう「公式と違う姿のAさん」を見せるために、二次創作の作者たちは、性別転換の薬を飲ませたり、ほにゃほにゃしないと出られない部屋に閉じ込めたり、記憶喪失にさせたり、現代パロディにしてみたりと、あれこれ工夫をする。
私も、時代を変えたパロディや、他作品とのクロスオーバーを考えるのは結構好きだ。公式で絡みがなかった人が協力するお話とか、考えていると楽しいなぁーと思う。
これは転じて、なにか大層なことでもない限り、公式のルールから逃れることはできない……という事実を突きつけてくるわけである。
もし、ルールから外れたことをする場合は、結構ちゃんと注意書きをしておかないといけない。そういう配慮をしてもなお、いつか誰かが自分の作品を読んで傷つかないかと、ヒヤヒヤしてしまう。
まぁ、そりゃそうだよねという所だけれど。個人的には、二次創作を書くようになったのが、一次創作よりもだいぶ後だったので、改めて「一次も二次も色々あるなぁ」と、しみじみと感じている。
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