第45話

 


 


 


 


『ま、マオマオっ!!』


魔王城から姿を現したのはピンク色のネグリジェを来た、魔王様でした。


その姿を見て、プーちゃんが最初に反応を示した。


「ま、魔王様っ。申し訳ございません。魔王様にこの者たちを迎え撃つように言われたのにもかかわらず、私の力が足りないため、魔王様にこちらまでいらしていただくことになり・・・。私、私・・・。」


タイチャンが、涙ながらに魔王様に訴えかけている。


でも、本当に魔王様は私たちを迎え撃つようにと言ったのだろうか。


あの大らかで懐の広い魔王様だ。


そんなことを言うようには思えない。


むしろ、迎えに行ってこいとでも言いそうなものだが・・・。


「ふぁっ・・・。ふぃ、ふぃふぉりゅうしゃまぁ。わ、わしぇ。こんにゃかっふぉふふぇ・・・。ふぁ、ふぁふふぁひぃぃいいいいっ!!!!(あっ・・・。し、始祖竜様ぁ。わ、儂。こんな格好で・・・。は、恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!)」


『あ!マオマオっ!?』


「えっ?魔王様っ!?魔王様ーーーーっ!!」


「へ?なに、コレ?」


魔王様はプーちゃんの顔を見ると、プルプルと震えだした。


そうして自分がネグリジェ姿でいることを確認すると、頬を真っ赤に染めて、魔王城の中へとかけていってしまった。


プーちゃんはかけていってしまった魔王様を追おうとするが、それより早くタイチャンが魔王様を追って魔王城の中にかけて行ってしまった。


っていうかさ、タイチャンってば魔王様に私たちを迎え撃つように言われたのに一番最初に戦線離脱していいんだろうか。


見た限り、タイチャンが魔王様の腹心のように見えるのだけれども、魔族ってばタイチャンが腹心でよくまとまっているなと感心してしまう。


まあ、もちろん残された魔族たちは唖然とした表情でタイチャンの後ろ姿を見送っているが。


しかし、魔族たちはタイチャンが戦線離脱したことで、タイチャンに私たちを攻撃するようにと言われずにすむとあって、ホッとした表情を浮かべている。


そうだよね。


束になってもプーちゃんにかすり傷ひとつ負わせることができなかったんだもんね。


そりゃ、プーちゃんに対して攻撃したくなくなるよね。


っていうかさ、ツッコんでもいいかな?


「魔王様の反応恋する乙女の反応に見えたよね。私の気のせいかな・・・?」


「お、お母様・・・。」


『むっ。マオマオが誰に恋をしているというのだっ!?』


私の素朴な疑問に女王様とプーちゃんが反応した。


女王様は自分の母親の乙女な姿を見て、ショックを受けているのか魔王様をお母様と言ってしまっている。


どうやら素が出てしまったようだ。


プーちゃんは逆に魔王様が恋をしているということを聞いて憤慨しているようだ。


ってか、その魔王様の恋の相手がプーちゃんみたいなんだけどね。


「えっと・・・。とりあえず中に入ろっか。このままここにいても仕方がないし。」


また魔王様が出てくるのを待つというのもありだが、あの様子ではすぐに出てこないかもしれない。


タイチャンもすぐには戻ってこないかもしれないので、私たちは魔王城の中に入ることにした。


「魔王様っ!!魔王様出てきてくださいっ!!」


魔王城の入口に居た魔族の一人に魔王の部屋まで案内してもらうと、部屋の前でタイチャンがドアをドンドンと叩きながら魔王様を呼び続けている場面に遭遇した。


どうやら魔王様はプーちゃんにネグリジェ姿を見られてしまって部屋に閉じこもってしまったらしい。


「案内してくれてありがとう。」


私は、案内をしてくれた魔族にお礼を言う。


すると案内をしてくれた魔族はブルブルと震えながら一目散に来た道を引き返していった。


『マオマオ・・・。』


「お母様・・・。」


プーちゃんと女王様も一緒に来ているが、なにか思うところがあるのか二人とも心ここにあらずの状態だ。


「タイチャン。タイチャン。」


私は二人に構わず魔王様の部屋の前で魔王様を呼び続けているタイチャンに声をかけた。


もちろん、魔王様を呼ぶことに夢中になっているタイチャンはすぐに反応をしてくれなかった。


だから、タイチャンの肩を軽く叩きながらタイチャンの名前を呼んでみた。


「タイチャン。」


「誰ですかっ!?見ての通り私は今取り込んでいるんですっ!話なら後にしてくださいっ!!魔王様!魔王様!!出てきてください。魔王様っ!!」


タイチャンはチラリともこちらを見ずに返事をすると魔王様の名前を呼び続けている。


だめだこりゃ。


『マオマオよ。なぜ、隠れてしまうのだ?そなたが恋をしているとマユに聞いた。我はマオマオが我以外を恋い慕うことが寂しくて仕方がないが、それでもマオマオが選んだ男ならば祝福してあげたいと思っておる。出てきてはくれぬか?』


プーちゃんが魔王様の部屋に向かって悲し気に呟く。


・・・ん?


あれ?


プーちゃん、なんか変な言葉混じってないか?


なんか、プーちゃんの言葉を聞いていると魔王様とプーちゃんは恋人同士だったというように錯覚してしまうのだけれども。


いや、まさか。そんなバカな話があるわけがない。


私の空耳だろう。きっと。


うん。違う違う。


ただプーちゃんは、旧友を心配しているだけ。


そう。それだけのことだ。


「し、始祖竜様っ!!」


「うがっ・・・。」


プーちゃんが魔王様の部屋に向かって切な気に呟いた直後に、突然魔王様の部屋のドアが勢いよく開いた。


その所為で魔王様の部屋の前に立ってドアを叩いていたタイチャンが思いっきり顔面をドアに強打してその場に蹲ってしまった。


そうして、魔王様の部屋から飛び出してきた美女は部屋からでてくるなりプーちゃんに抱き着いた。


「・・・って、誰?」


魔王様の部屋から妙齢の美女が出て来たんだけど。


魔王様って見た目が老婆だったよね?


え?じゃあ。魔王様の部屋から飛び出てきたこの美女はいったい誰だろうか。


 


 



 


 


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