第7話
倒れている二人にマリアと一緒に近づく。マーニャたちはバスケットの中におり、少し離れたところに置いてある。
なんたって、こんな安全な場所に倒れているのだ。不審者の可能性が高い。
だから、マーニャたちには少し離れた安全なところにいてもらうことにした。
そして、プーちゃんにはマーニャたちを守ってもらうことにし、ピーちゃんには私たちと一緒にきてもらうことにした。
「あの・・・大丈夫ですか?」
とりあえず倒れている女性の方に声をかけてみる。
まだ若い女性のようだ。
「ん・・・うぅん。」
僅かに声が漏れてくるので生きているようだ。念のため鑑定をしてみると、空腹と疲労とでていた。
「お腹が空いているみたい。」
「そう。なぜかしら?」
とりあえず手持ちの荷物に山頂でみんなと食べようと思っていたサンドイッチと水があったので、水を女性の口に入れた。
「み、水・・・。」
少しずつ意識が回復しているみたいで、声が出ると同時に体力も少し回復したのか、ゆっくりと身体を起こした。
「食べ物を持っていませんか?」
今度はしっかりとしゃべった。どうやら大分回復したらしい。水って偉大だわ。
高い澄んだ声に、小さな顔。可愛い華奢な女性だ。
化粧もばっちりとしている。
って、あれ?
化粧でとても可愛く見えているが、もしかして・・・盛ってる?
よくよく見ると、化粧で陰影をつけているようだ。それにより鼻を高く見せたり小顔にみせたりする。
「サンドイッチでよければ・・・。」
「ありがとうございますぅ。」
サンドイッチを差し出せば嬉しそうにはにかんで女性はサンドイッチを受け取った。
というか隣にいる男性はこの女性の連れだと思うんだけど、気にしなくていいのだろうか。
まったく気にすることもなく差し出したサンドイッチを美味しそうに食べているんだけど。
「隣で寝ているのは貴女のお友だちかしら?」
マリアが何気なさを装いながら聞いてくれた。すると、女性はポッと少しだけ頬を赤らませる。
「はい。私の婚約者なんです。」
ってちょっとまて!!
婚約者なら余計に美味しそうにサンドイッチを食べている場合じゃないでしょ!!
婚約者の安否くらい確認しなさいよ!!
思わず怒鳴りたくなってしまうが、初対面なのでグッと堪える。
隣にいたマリアも同じように思ったのかマユを潜めている。
そして、私の耳元に顔を寄せるとささやいてきた。
「この子に関わらない方がいいわ。水と食料を与えたらさっさと行きましょう。」
「え。あ、うん。」
マリアったらこの女性の心の声が聞こえたのかな。何にしてもマリアが関わらない方がいいと言っているので、それに従うに限る。
「これ、婚約者さんの分もあるからゆっくり食べてね。」
時間稼ぎのために、水と食料を用意し、マーニャたちの元にそそくさと戻る。
さっと、茂みに隠れプーちゃんに声をかける。
「プーちゃん。転移の魔法で私たちを自宅に届けて。あの人たちどうやらやっかいな人みたいなの。」
『わかったのだ。』
プーちゃんは私とマリアの必死な顔に驚きながらも頷いた。そうして、次の瞬間には先ほど出たばかりの自宅の中にいた。
『森はー?』
『ピクニックはー。』
『美味しいご飯はー。』
バスケットを開けると6つのまあるい瞳がこちらを不思議そうに見つめてきた。
マーニャたちも久々の森とあってとても楽しみにしていたのだ。
「マユ、絶対にあの人たちに会っちゃダメよ。プーちゃん、ピーちゃん、マーニャ様、クーニャ様、ボーニャ様。お願いだからさっきの二人とマユを引き合わせないであげて。特にプーちゃん。あの人たちと会いそうになったらマユを転移させて。」
ほえっ。マリアがいつになく慎重な面持ちでプーちゃんに告げている。
というか、私に会わせないようにする?
他の人たちは会っても大丈夫なのだろうか。
「マユ、もしかしたらそのうち会ってしまうかもしれない。でも、今はまだ会わない方がいいわ。」
「なんだかよくわからないけど、わかったわ。」
マリアの真剣な眼差しに押されて、頷くしかなかった。
マーニャたちも不思議そうな顔をしているが、マリアの言っていることは理解したらしく頷いていた。
いったい、彼らはなんだったんだろうか。
マリアがそんなに危険視する人物はいったい・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます