第8話

 


「マユ、悪いけど私ちょっと村長さんのところに行って来るね。さっきの二人のことを報告してくるから。さっきの人たちがもしここを尋ねてきても、絶対に出ちゃダメだからね。マーニャ様たちも出ても会話が通じない振りをしてね。」


「わかった。でも、そんなに危険なの?」


『わかったのだ。』


『『『わかったのー。』』』


マリアがいつになく慎重だからとても気になった。

さらには村長さんのところにも連絡しないといけないだなんて。

念話ではなく直接村長さんのところに行って報告しなければいけないことに関しても不安が募る。


「危険よ。特に女性の方は危険だわ。」


「なら!マリアも村長さんの家に一人で行くのは危険じゃない?」


見た目からしてそんなに危険そうには見えなかったけども、マリアがそこまで危険視するってことは危険だってことなんだよね。

でも、私は家に居て居留守を使えばなんとかなるけど、マリアは村長さんのところまで一人で行くことになる。

その方が危険だと思うんだけれども・・・。


「私はマユと違って無防備じゃないから大丈夫よ。」


無防備って・・・。


唖然としているうちに「じゃあ、行ってくるわね。」と言いながらマリアは私の家から外に出ていった。


マリア私より年下なんだけどなぁ。


『ひまなのー。』


『お外行きたいのー。』


『お外なのー。』


マーニャとクーニャとボーニャが早速騒ぎ出してしまった。

ピクニックをかねて森へ行く予定だったのがダメになった上に家の外にも出られない。

そんな状況が遊びたい盛りのマーニャたちには耐えられなかったようだ。

雨でも降れば濡れるのがイヤだからと家の中で大人しくしているのだろうが、生憎本日は晴天である。私だって、外に行きたいくらいのいい天気だ。

でも、マリアとの約束もあるし。


「今ね、危険人物がお外にいるからお外に行くのは安全になってからね。」


『安全になるのはいつなのー?』


『危険でもクーニャには関係ないの!』


『私たちは安全なの!』


ピタンピタンッと長い尻尾を床に打ちつけながら、マーニャたちがお外に行きたいと強く訴えている。


ああ。そう言えば、この国だと猫が危害を加えられることはないんだったっけか。


たとえ危害を加えられそうになっても、初代女王様の力で猫たちに危害を加えることはできないんだった。マーニャたちに指摘されるまで忘れていたよ。


「安全なのはわかったけど、それでも私はマーニャたちが心配なんだ。できればお家に居てくれるかな?」


『マユが言うなら仕方ないのー。』


『しょうがないからマユの子守するのー。』


『マユ遊んでなのー。』


うぐぐ。クーニャ、私の子守ってなにそれ。


思わずカチンッときてしまったが、クーニャに悪気はないのだと思いなおしてグッと我慢する。それに、ゆらゆらと揺れている尻尾を見ると怒る気にもなれない。


「わかった。遊ぼう。」


私はマーニャが気に入っているネズミのぬいぐるみを取り出した。

ぽーぃとマーニャたちの方に放り投げると、マーニャたちがネズミを取り合いながら遊んでいる。


あれ?私一緒に遊べていないような気が。


しかも何気にマーニャたちの中にプーちゃんが混ざってネズミの取り合いしているし。


「コケコッッコーーーーーーーーッ!!」


「コケーーーーーーッ!!!」


「「ぴぃ!!ぴぃ!!」」


マーニャたちが遊んでいる姿を見ていると、庭から鶏たちの叫び声が聞こえてきた。


一体なにっ!?


あまりのけたたましさに、マーニャたちもネズミを取り合うのをやめてドアの方を見ている。

鶏たちに何があったのかわかららないけれど、鶏たちにとって一大事なことには変わりないだろう。

鶏たちも家の中に退避させればよかったと後悔する。

何があったのかわからないが、鶏たちのことは気になるし放っておくことはできない。

マリアの言いつけには背くことになるが、少しくらい外にでて様子を見てきてもいいだろう。

それに、鶏たちを家の中に退避させなければ。

私は意を決してドアを開けることにした。


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る