第80話
「マユさん。意気込んでいるところ悪いが、先に宿を決めてしまおう。」
私がマコトさんを探すために気合いを入れていれば、横からザックさんが提案してきた。
「そういえば、王都ではザックさんと別行動なんですよね?」
「ああ。私は仕入れがあるからな。」
「そうですか。」
「だから拠点となる宿をまずは決めよう。」
「そうですね。」
そういうことになった。
待ち合わせをするにも、王都は人が多いため私みたいな初めて王都にやってきた人なんてとても待ち合わせは難しいだろう。
そうであれば、宿で待ち合わせというのが一番安心できる。
ある程度名の売れている宿に泊まれば、最悪道に迷っても宿の名前を出せば、場所を教えてくれる人もいるだろう。
王都を一人で行動するっていうのは多少不安が残るが、私だってもう三十路をとうに過ぎている。
三十路女が一人で行動できないだなんて恥ずかしいにも程がある。
それに、マーニャたちは一緒に行動予定だし。ザックさんがいなくても問題ないだろう。
「マユさんは化粧水が作れたんだったよな?錬金釜を格安で貸し出してくれる宿がある。材料もそこらで売っているだろう。もし、お金が足りないようなら化粧水を錬金して売るといい。」
「え?錬金釜借りれるんですか?」
「ああ。いくつかの宿で貸し出している。」
「じゃあ、そこの宿でお願いします。」
せっかくの王都だものね。
たくさん買い物もしたいし。それには、お金が必要だし。
なにより、マコトさんのところで炬燵を買いたいし。って、炬燵を買えるだけのお金まだないけど、格安の炬燵があるかもしれないし。
「わかった。こっちだ。ついてこい。」
『我はお風呂がある宿がよいぞ。』
私の肩に乗っているプーちゃんが言った。ちなみにプーちゃんは蛇サイズに小さくなっている。王都で通常サイズのプーちゃんだと、周りが恐怖で混乱する可能性があるからだ。
でも、私の肩に乗っていいなんて一言も言ってないんだけどね。
『お風呂反対!!』
『お風呂だめ!』
『マユ死んじゃうからダメ!!』
「えっ!?いやいやいや、もうお風呂で寝ないから、お風呂がある宿がいいです。お願い!」
ザックさんがお勧めの宿を教えてくれようとしているが、プーちゃんとマーニャたちから宿に関する要望があがった。
方や風呂ありの宿、方や風呂なしの宿と全くの正反対な要望だ。
私は、断固風呂ありの方がいいけど。
だから、プーちゃんに援護する。
「風呂か・・・。今から案内しようとしていたところは風呂ありだ。王都だと風呂なしの宿は安宿ばかりで治安があまりよろしくない。それに、錬金釜はないぞ。」
『いや!』
『お風呂ダメなの~。』
『マユ、お断りして?』
マーニャたちが必死に断るように告げてくる。でもなぁ~。お風呂も錬金釜もないんじゃなぁ~。
いくらマーニャたちの頼みでも・・・って。あれ?
私、マーニャたちの言葉がわかる!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます