第59話


「マユ、私のこと、わからないの~?」


猫耳の女の子は、耳と尻尾をしゅんとさせ小さく呟いた。

その様子はとても寂しそうで思わずぎゅっと抱き締めてしまった。


「ずっと一緒にいたのに………。」


ん?

ずっと一緒にいた?

ずっと一緒にいた女の子で、マーニャにそっくりの耳と尻尾。

もしかして………。


「マーニャ………なの?」


「なのっ!!」


どうやら、この猫耳の女の子はマーニャだったようだ。

「マーニャ。」と名前を呼ぶと嬉しそうに返事をして、抱きついてきた。

尻尾も耳もピーンっと立っていてとても、嬉しそうに見える。


「ふむ。マーニャ様たちが人化したか………。」


ザックさんは、何やら顎に手をあてて考え込んでしまったようだ。

でも、マーニャがいるということは、クーニャとボーニャもいるのだろうか?

ふと、マーニャの後ろに視線を移すと転がりながら走ってくる二人の女の子の姿が見えた。

あれが、クーニャとボーニャだろうか。

たたたっと、しなやかに走ってくるのがクーニャかな?

文字通り足をもつれさせながら、転がるように走ってくるのが、ボーニャだろうか。

時々、地面に倒れそうになるボーニャにクーニャが手を差し出して支えている。


「「マユ!!」」


「クーニャ?ボーニャ?」


「「そう!なの!!」」


どうやら、クーニャとボーニャであっていたようだ。

スレンダーで、目がつり目勝ちなのが、クーニャで、少しぽっちゃりとしておっとりとしているのが、ボーニャだ。

姉妹だからか、あまり相違がない。

猫の時もだけど、人化しても区別をつけるのはなかなか難しいものがある。

マーニャは一目でわかるけれど。


「ここ!獣人の街!」


「そう!中央に泉があるの!」


「泉に飛び込むと人間なれるの!」


マーニャ、クーニャ、ボーニャがそれぞれ教えてくれる。

どうやら、マーニャたちはその泉に飛び込んだことで人化したようである。

それにしても三人ともなかなかの美少女である。ってか、年齢的に美幼女かな?


「ふむ。なかなか面白そうな話だ。」


ザックさんは感心したようにマーニャたちの話しに頷いている。


「マユのこと!みんな歓迎する!きてっ!!」


「来て!」


「来るのー!」


「えっ?えっ!?」


マーニャ、クーニャ、ボーニャに服の裾を引っ張られて、目の前に見える街に連れて行かれる。


「でもっ!ここってレコンティーニ王国じゃないんでしょ?不法入国にならない!?」


「大丈夫!」


「マユだから大丈夫!」


「じょぶー!」


マーニャたちの返答に半信半疑になるが、こんなに三人が進めるのだ。こんなに可愛い子たちにお願いされて断れる大人はいない。


「こんにちは。ここは、レコンティーニ王国唯一のの獣人の街です。」


街の入口に立っていた男性が柔らかな声色で教えてくれる。

どうやら、ここもレコンティーニ王国だったらしい。

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