第58話


「プーちゃんどうしたの?なんで、泣いてるの?マーニャたちになにかあった?」


ダバダバダバダバと涙を流しているプーちゃんに近づいて優しく声をかける。

でも、プーちゃんは泣いてばかりいて、ちっとも答えてくれない。

そればかりか、急に空へと飛び上がり、街の方へ飛んでいってしまった。


「えっ!?マーニャたちに何かあったの!!」


泣きながら急に飛んでいくなんて、マーニャたちに何かあったのかと、思わずプーちゃんの姿を追って駆け出す。が、しかし、やっぱりザックさんに腕を掴まれ止められてしまった。


「どうして?もしかしたら、マーニャたちが!!」


「ちょっと待て、落ち着け。街から誰かが出てきた。」


「えっ?」


街の方を見ると確かに人影が見える。どうやら、誰かが出てきたようだ。


「まずは、話を聞いてみよう。」


ザックさんが、ゆっくりと人影に歩いて近づいていく。

でも、なんだか人影はずいぶん小柄なようだ。

もしかして、子供だろうか?


でも、人影が近づくにつれ、その姿がはっきりとわかるようになると、私は思わず「はっ!」っと息を飲んでしまった。

だって、だって、だって!!


フサフサな猫耳がついているんだもの!!しかも、マーニャそっくりな猫耳!!

って、後ろからはさらに人影が2つこちらに小走りで近づいて来ているようだ。

この子は追われているのだろうか?

でも、その顔はニコニコ楽しそうに笑っているだけなので、どうやら追われているわけでもないようだ。

スカートの後ろから出ている虎模様の尻尾がピーンっと上を向いている。

確か猫が尻尾をピーンっと上に向けている時は嬉しい時だったっけ?


「こんにちは。」


視線を低くして、フサフサな耳と尻尾を持つ女の子に声をかけてみる。

ビックリされるかなと思ったが始終笑顔を浮かべている。


「こんにちわなの~。」


可愛らしい声で可愛らしい挨拶が帰ってくる。フサフサな耳はゆらゆらと風を感じるように、揺れていた。


「マユとお話できる、嬉しいなの~。」


そう言ってフサフサな猫耳を持つ女の子は、私に抱きついてきた。

ああああああ、フサフサな耳が可愛い。撫でたい、撫でたい!!

思わず手が少女の耳に向かう。

あともう少しで、少女のフサフサな猫耳に触れられるってときに、やっぱり両手をザックさんに掴まれて止められた。


「やめろ。犯罪者みたいだ。」


「犯罪者って、私が?失礼しちゃうわ。この可愛い子を愛でようとして何が悪いのかしら。」


可愛い子は愛でるためにあるのだから、存分に愛でなければ。

ザックさんの腕を振り払おうとするが、やっぱりザックさんは美人な顔をしているが男であって、力では敵わなかった。


「それより、この子はマユさんの名前を呼んだような気がするが?」


「ん?あれ?そう言えば………。」


確かにザックさんが言うようにさっき、名前を呼ばれたような気がする。

しかも、話しが出来て嬉しいって、どういうこと?

私、この世界にはキャティーナ村の人たちしか知り合いいないんですが。

っていうか、こんな可愛い子、一度お知り合いになったら忘れないと思うんですけど!!

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