第34話


「マーニャ、クーニャ、ボーニャ、オークション終わったからそろそろ行くよ?」


オークションも終わったことだし、お昼も過ぎているからマーニャたちにご飯を食べさせなければならない。

今日は、ボーニャと一緒に作った化粧水がオークションで売れたからお金には余裕がある。

せっかくだからマーニャたちに食堂でご飯を食べさせてあげたい。

そう思って声をかけたんだけど、


「もう、帰ってしまうのか?お昼でも食べていくとええ。」


村長さんから、そう言って引き留められた。

でも、テレビを見させてもらったのにさらに昼食までいただくわけにはいかない。


「じゃあ、遠慮なくいただいていきますね。」


「「「にゃあ♪」」」


「え?」


やんわりと断ろうと思っていたんだけど、マリアやマーニャたちが食べていく気まんまんのようで即答している。


「うむうむ。ちょうど妻に料理を作ってもらっていたんじゃよ。これで、帰られてしまったら妻に怒られてしまうからのぉ。」


すでに村長さんの奥さんが料理を作ってくれていたらしい。

どうりで奥さんの姿が見えなかったはずだ。てっきり村長さんは独身か、奥さんに逃げられた人だと思ってしまっていたよ。

奥さんってどんな人なんだろう。


「私、まだ村長さんの奥さんにお会いしたことないです。どんな方なんですか?」


「あら、私も数える程しかあっていないわ。マユが会っていなくても不思議じゃないわね。」


マリアは生まれてからずっとこの村に住んでいたんじゃなかったっけ?

それなのに、村長さんの奥さんに数える程しか会っていないの?なんだか不思議。


「おぉおぉ。そうじゃのぉ。妻は人見知りだからのぉ。」


「はあ。そうですか。」


人見知りなのか。それなら仕方ないかな?

マリアたちとテーブルを囲みながら村長の奥さんの料理が出来上がるのを待つ。

マーニャたちは小さくなったプーちゃんの尾を一生懸命に追いかけていた。そして、3匹の子猫から逃げ惑う青竜。


うん。

なんか、青竜がなさけない感じだぞ。


「・・・こ、こんにちわ。」


ん?

どこかで人の声がしたような・・・。

キョロキョロと辺りを見回すが声の主が見えない。

隣にいるマリアもキョロキョロとしているので、幻聴ではないようだ。

村長さんを見ると、村長さんは部屋の入り口を見つめていた。


「うむうむ。大丈夫じゃ、入っておいで。」


「・・・お邪魔します。」


そこには料理を両手に持った座敷わらしがいた。

子供のように小さな体に、真っ黒なストレートの長いつやつやの髪。

これを座敷わらしと言わずなんと言おう。


でも、料理を持っているということは・・・。

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