第35話


いやいやいや。

でも、この座敷わらしさんはとても村長さんの奥さんとは思えない年齢だと思うんだけど。

まだ少女と言ってもいいくらいの容姿だよね。

背が低いのは年齢に関係ないにしても、このつやつやとした黒髪は村長さんの奥さんとは思えない。

さらにお肌にも張りがあるし、とてもとても村長さんと同年代とは思い辛い。


もしかして、村長さんって・・・。


「ロリコン・・・?」


あっ。

思わず声に出してしまった。

でも、もしこの座敷わらし風の女性が村長さんの奥さんだったら結構な年の差だよね?


「ロリコンって何かしら?」


「・・・?」


「なんじゃ?」


ありゃ。

どうやら皆に聞こえていたようだ。

でも、どうやらこの世界の人たちは【ロリコン】とう言葉を知らないみたい。

よかった安心した。


「あ、いえ。そのとても可愛らしい女性だなって思って………。」


「おぉ。そうか、よかったなユキ。」


「・・・はい。」


どうやら座敷わらしさんの名前はユキさんと言うらしい。

小さな声で頷いた。

頬が微かに上気しており、どこか嬉しそうにも見える。


「えっと、ユキさんは村長さんの娘さんですか?」


奥さんかと聞くにはユキさんの見た目が問題大有りなので娘さんかどうかを確認する。

でも、ユキさんは見た目が十代後半くらいなので娘だとしてもかなり若いような気がするが。


「いやいや、ユキは私の妻だよ。」


「・・・ユキと申します。」


「って奥さんっ!?若すぎじゃないですかっ!!」


あ、やばい。

思わず驚きすぎて声が出てしまった。

いや、でも奥さんっていう年じゃないよね。

思わず、チラッとマリアの方を見る。

マリアも驚いたように目を丸くしている。

あれ?マリアは村長の奥さんに何度か会ったって言ってなかったっけ?


「変わってないわ・・・。10年前と・・・。」


「えっ!?」


まさかのユキさん10年前と変わらないお姿ですか。


「ははっ。妻は年を取らないんじゃよ。もうかれこれ50年以上はこの姿じゃ。」


そう言って村長さんは「はははっ。」と能天気に笑った。

ユキさんも恥ずかしそうに下を向いている。

っていうか、ユキさんって本当に座敷わらしなんじゃないだろうか。

50年前から姿が変わらないというのは同じ人間じゃないような気がする。

それとも、この世界の人は年を取らないのだろうか。

いやいや、それはないだろう。

だって、キャティーニャ村の他の人は年相応の容姿をしていると思う。・・・多分。

もう一度、マリアの方を見る。

マリアの顔は引きつっていた。


「どうしたの?マリア?」


「いや、まさか50年以上前からこの姿ってことに驚いちゃって。」


「うん。わかるわ。私もよ。」


マリアの反応から見るに、やっぱりこの世界の人も年をそれなりに取るらしい。

ユキさんだけが異常なようだ。

それもあって、あまり姿を見せないのかな?


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