第11話
しばらく待っていると、頭をポリポリとかきながらリュリュさんが戻ってきた。
「農機具の魔道具の在庫を教えるね。
まずは、自動的に畑を耕せるクワがあるんだけど、これは20万ニャールド。クワは現在この一点のみ。鎌はやっぱり自動的に周囲のものを刈り取ることができる鎌があるんだけど、これは10万ニャールド。オノは疲れを感じずに使えるものがあるんだけど、これは25万ニャールド。スコップは自動的に穴が掘れるスコップがあってこれが8万ニャールド。ジョウロは重さを感じにくいジョウロが2000ニャールドに、重さを感じないジョウロが2万ニャールド。祝福の効果付きのジョウロが100万ニャールドかな。今ここにある在庫は。」
「魔道具って結構するのね」
「リュリュの仕入れ方がおかしいのよ。自分が気になるちょっと高価なものを仕入れてくるの。リュリュ、マユはまだそんなに高価な農機具を購入できないわ」
「そうか、残念」
ほしいとは思うけれど、資金がない私には購入は無理そうだ。今回は諦めるしかないのかなぁ。リュリュさんに魔道具を注文して行かなきゃかなぁ。
諦めていたそのとき、リュリュさんが手をポンッと叩いた。
「そうだった。マユは来たばかりで資金があんまないんだったな。わかった。これなんてどうだ?僕が今作った変幻自在の魔道具。効果はないけど、一応使えるよ?引っ越し祝いってことであげる」
「え?いいの?」
変幻自在に姿を変えられる魔道具って貴重だと思うんだけど。
「いいのいいの。だって、この魔道具売れないよ。それぞれの機能はごくごく普通でなんの追加効果もないんだから。自動で耕してくれたりとかしないから、疲れるし時間もかかるし」
そうなんだ。
まあ、初心者の私ならそれで十分ね。
「ありがとう。まだ資金がないから助かるわ。あ、あとジョウロもちょうだい。重さを感じにくいってジョウロがいいわ」
「まいどありー」
こうして私は変化する農具と、ジョウロを手に入れた。
さっそく、帰って使ってみよう。
「マリア、付き合ってくれてありがとう。私、これから家に帰って猫たちがプレゼントしてくれた種を植えちゃうね」
「あ、待って!あと一ヶ所だけ紹介したいところがあるの」
貰った農機具とジョウロを抱え込み、マリアに「ありがとう」と告げると、マリアが待ったをかけた。
紹介したいとこってどこだろう?
「マユ、鶏を買いにいこう。鶏がいると草は減るし、卵も生んでくれるよ。絶対、初心者にはおすすめだよ。」
「鶏?へぇ、鶏って草食べるんだ」
「まあ、食べる草と食べない草があるけどね。放し飼いにしておけば、草むしりの手間が省けるよ」
「そうなんだ。じゃあ、案内してもらってもいい?何から何までありがとう、マリア」
「気にしないで!私はマユのサポーターなんだから」
マリアはニコニコ笑っている。
どうも、人の世話を焼くことが好きなようだ。
私たちはしばらく歩き、鶏を売ってくれるというお店についた。
そこには、恰幅のいいおばさんがドデンと店番をしていた。
「こんにちは。ローザさん。こちら、異世界からの迷い人のマユさん。鶏を買おうと思ってきたの」
「いらっしゃい。鶏かい?鶏なら雌が5000ニャールド。雄が2000ニャールドになるよ。」
「よろしくお願いします。雌だけ売っているんじゃないんですね?」
雌も雄も売っているなんて。
雌は卵を生んでくれるからだと思うんだけど、雄の需要は?草むしり要因?
「鶏はいろいろな料理にも使えるしね」
ニヤリとローザさんが意味ありげな笑みを浮かべる。
えっ?そっちの用途なの!!
日本にいたころはスーパーで売っている鶏肉しか知らなかったから、まさか、生きている鶏を食べるだなんて思ってもいなかった。
改めて普段何気なく食べているお肉が動物の命を奪って得ているものだと認識しなおした。
食事って他の動植物の命を貰うってことを改めて認識した。
これからは、安いからといって無駄な食料を買わないようにしよう・・・。
「あっはっはっ。そんなに驚くでないよ。肉は解体してから売ってるよ。自分で捌くことなんてないから安心しな。雄の用途はね、雄と雌を一緒に買えば、そのうちひよこが産まれるよ。鶏を増やすことができるんだ」
「じゃあ、雌と雄一匹ずついただけますか?」
ひよこが増えるのもいいな。
可愛いんだろうなぁ。ちっちゃくてふわっふわで可愛いんだろうなぁ。
生まれたてのヒヨコを思い浮かべる。
「あいよ。まいどあり!鶏が増えすぎたら買い取りもしているから相談においで。」
ローズさんはそう言って、私に鶏が二匹入ったバスケットを渡してきた。
中でバサバサと羽を動かしている音がする。とても元気な鶏のようだ。
「あ、そうだ。忘れるところだった。これをあげるよ。引っ越し祝いだと思ってとっておきな」
そういって、ローズさんは金色に輝くオーブ状の物体を手渡してくれた。
これはなんだろう?
真ん中に横に線が入っているから開くのだろうか?
「それは、孵化機だ。一個の卵を孵化させることができる魔道具なんだ。普通に孵化させようとすると、一週間かかるが、これを使えば1日で孵化させることができるんだ。それに、普通に孵化させようとすると雌が一匹専属して卵を暖めるから、その間新しい卵を生まなくなっちまうんだ。この孵化器があればそんなことはないし便利だよ」
まあ、道具に任せたくないってんなら自然に任せるのが一番だけどね。と、ローズさんは続けた。
そうだよね。増えすぎちゃっても困るしねぇ。
でも、卵が毎日採れないのも少し寂しいような気がする。ある程度鶏が増えるまでは孵化機を使って、以降は必要な時だけ自然に孵化させようかな。
自分で育てた動物を食べるなんて、耐性のない私には無理だ。絶対、可愛がってしまうもの。
「増えすぎたら、草だけじゃご飯が間に合わないから鶏用の餌が必要になるよ。うちで売ってるから必要になったら買いにくるといいよ」
「ありがとうございます。」
この村の人は皆親切だなぁ。
突然、この世界に来てしまったどこの誰かもわからない私に優しくしてくれるなんて。
「じゃあ、帰ろう。私も荷物持ちするね」
「ありがとう」
マリアはそう言って、鶏の入っているバスケットを持ってくれた。
どうやら、このまま家まで来てくれるようだ。
マリアには本当に世話になってばかりだなぁ。
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