第10話
マーニャの毛に絡まっていた物を手に取ってみる。
1cmもないくらいの細長い形状の黒い物。
何かの種のようにも思えるけど・・・。
マーニャは私の顔を見て、嬉しそうに「にゃ♪にゃ♪」と鳴いている。
まるで褒めて褒めてと言っている様だ。
褒めて欲しそうだったのでマーニャの頭や喉を撫でながら「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えるとマーニャは更に喉を鳴らした。
どうやら嬉しいらしい。
ところでこれは一体なんなんだろう?
マリアを振り仰ぐ。
「鑑定してみたらどうかしら?」
当たり前のようにそう言われる。
だけど、鑑定レベルが低くて一日に一回しか鑑定できないことはマリアも知っているはずなのに。
念のため、目の前の黒い種と思われるものを鑑定してみる。
【マリーゴールドの種】
「見えたっ。マリーゴールドの種だって。」
「おめでとう。鑑定レベルが上がったようね。」
一日に一回しか鑑定できなかったはずなのに、鑑定できたことに驚くと、さして驚いていないようにマリアが続けた。
まるで、知っていたみたい。
「ステータスを見てみて。きっと鑑定のレベルが上がっているわ。」
マリアに言われるがままステータスを見てみる。
【スキル:鑑定 Lv2】
「本当にあがってる!」
「スキルはね、回数制限がかかっていても、途中でレベルが上がればまた見れるようになるの。
鑑定スキルの場合は一日の上限回数使用後に鑑定してみようと思うだけでも、スキルのレベルアップに必要な経験がつめるの。
だから、積極的に鑑定してみてね。」
なるほど、鑑定できなくても見ようと思えば少しずつレベルアップに繋がるのか。
積極的に鑑定した方がいいってことよね。
「だけど、気をつけてね。中には鑑定されたくないって人もいるから、無暗に人を鑑定しない方がいいわ。
鑑定するならまず声をかけてから鑑定してね。それか無機物を鑑定するようにしてね。
親しき仲にも礼儀ありってね。」
おっしゃる通りです。
プライバシー筒抜けになっちゃうもんね。
自重します。
「マユ。クーニャ様も、ボーニャ様もマユにお土産があるみたいだよ」
マリアが改めて言うので、クーニャとボーニャを見る。
目を爛々と輝かせてこちらも褒めてと言っている様に見える。
クーニャとボーニャをもう一度撫で撫でする。
すると、クーニャの首元に何かがくっついているのがわかった。
手にとってみると、これまた細長い黒い物体で何かの種と思われる。
すぐに鑑定スキルを発動してみる。
【ひまわりの種】
「ひまわりの種だ!」
「ふふ。ボーニャ様も早く受け取ってって見つめてるよ」
ボーニャが振り振りしている尻尾の先端に何かついている。
手でそれを取ってみると、金色に輝く2mm程度の小さい物だった。
これも、種かしら?
念のため鑑定してみる。
【金ゴマの種】
「金ゴマの種だって!クーニャもマーニャもボーニャもお土産ありがとう!
早速、畑に蒔いてみるね」
この子たちのお土産に感動する。
まさか、お花の種や作物の種を持ってきてくれるなんて思ってもいなかった。
クーニャとマーニャとボーニャをいっぱい褒めて、お昼のご飯を与える。
これは明日にでも食堂に連れて行ってダンさんの美味しいお料理を食べさせなきゃい
けないね。
ご褒美あげなきゃ。
本日の猫たちのお土産は、
マリーゴールドの種:10個
ひまわりの種:3個
金ゴマの種:8個
だった。
猫たちの持ってきた種を植える畑を作らなきゃ。
「マリア。この子たちが持ってきてくれた種を畑に蒔きたいの。
畑を耕したりする農具ってどこにあるか知っているかしら?」
種を蒔くにも蒔く場所をまずは整えなければならない。
今日中に猫たちから貰った種と買った種を蒔く場所を整えることはできるかなぁ。
「魔道具屋さんに売っているよ。この後行ってみようか。
あ、そうそう。農耕スキルが高く無いと蒔いた種が発芽する確立が低いからそのつ
もりでね。
芽がでなくても落ち込まないでね。」
そうなんだ。
ここでもスキルが重要なんだね。
でも、スキルがなくても芽が出て作物を育てることができるらしい。
私とアリアは、猫たちを十分に誉めちぎってから魔道具屋に向かった。
そういえば、魔道具屋には保管庫も売っているって話だったなぁ。値段だけでも見てみようかなぁ。
まずは、農具を購入しなきゃね。
「こんにちはー。リュリュいるー?」
マリアが元気に声をかける。
どうやら、魔道具屋の人はリュリュという名前らしい。
しばらく待っていると、寝癖がついた金色の髪をかきながらひょろりとした男の人がでてきた。
よくみると、来ているシャツもよれよれだ。
「あー、マリア元気ー?昨日徹夜してて眠いんだよねー。遊びの話ならまた後でねー」
徹夜していたのか。
確かにその顔の目元には大きな隈があり、疲れがうかがえる。
「また、徹夜してたの?今度は何を作ったの?」
「よくぞ聞いてくれました!今度は変幻自在な魔道具を開発していたんだよ。クワになったり、カマになったり、オノになったり、ハンマーになったりスコップになったりするんだ。一つの魔道具で複数の道具が使える!便利じゃないか!!」
ああ、どうやら研究者タイプらしい。
マリアは呆れながらも「すごいねー」なんて棒読みで答えている。
「それよりね、昨日から異世界の迷い人であるマユさんがこの村に住むことになったの。それで、農機具を買いに来たのよ。いいものない?」
「ああ、君が噂のマユかい。僕はリュリュ。ここで魔道具を開発しながら、魔道具を売って生計をたてているんだ。まあ、魔道具を作るのが趣味なんだけどね。趣味と実益を兼ねた商売をしているんだ。」
「マユです。よろしくお願いします。このお店にはリュリュさんが作成された魔道具のみが置かれているんですか?」
店の中を見回しながら訪ねる。
何に使ったらいいのかわからない魔道具から、使い方がなんとなく想像できる魔道具まで様々だ。
「いいや。僕が作ったものもあるけど、大半は仕入れた品だよ。なぜか、僕の作る魔道具は売れ行きが悪くてね。僕が作った魔道具だけじゃ生計が成り立たないんだ」
「そりゃそうでしょ。リュリュってば、変わった魔道具ばかり作っているんだもの。」
そうか。
本当に趣味で作っているようなものなんだね。
「しかし、農機具か。ちょっと待っててね農機具の在庫確認してみるから」
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