第8話

種を購入したらちょうど12時になっていた。




「せっかくだから、お昼を一緒に食べよう。」




マリアに言われて、村で唯一の食事処に入る。ここの店主は調理のスキルが300を越えているとのことなので楽しみだ。





「ダンおじさーん。お昼食べさせてー。」




「おう!マリアじゃねぇか。好きなとこに座りな!あれ?となりの姉ちゃんは?」




「マユです。昨日からこの村にお世話になっています。」




「ああ、迷い人の。うちの飯はうまいからゆっくり味わってくれよ。」




そう言って熊みたいに大きなダンさんは厨房にひっこんでいった。


もっと、こうスレンダーな男性を想像していた私は今にもはちみつを抱えてでてきそうな人だとは思わなかった。




「大きい人だね。」




思わず感想が漏れてしまう。




「ダンおじさんは心も大きいのよ。今日は一日この村を案内するわね。ところで、猫様たちは今どうしているの?」




「朝、ご飯をあげたら思い思いのところに行って寝てしまったわ。今は、たぶん家の中にいると思うんだけど。」




「そうなの。猫様たち、家とお外自由に行き来できるようにしておくといいよ。流石に嵐の日とか天候の悪い日は家の中に入れておいた方がいいけど、それ以外は自由にさせておいて。」




「自由に?お外に出しても大丈夫なの?」




畑ばかりしかない村だし、車のようなものもこの村に来てからみたことがない。


村の皆も知り合いみたいだし、猫にとっても安全なのかな?




「レコンティーニ王国はね、猫に優しい国なの。猫に害意がある人はこの国に入ってくることはできないの。また、もし入ってきても猫に害を加えようとした瞬間に、他の国に飛ばされるわ。だから安心して大丈夫よ。」




他の国に飛ばされるって比喩表現だよね?




「外に飛ばされるって・・・?」




「猫様たちには魔法がかかっていてね、ピンチに陥ると自分をピンチにした人間をこの国の外に出すっていう魔法が働くんだ。この国の初代の女王が無類の猫好きで、猫のために魔法に目覚めて、猫のために様々な魔法を駆使して猫様たちを守っているの。」




「魔法ってすごいのね。」




「初代様は特別よ。あ、ご飯が来たわよ。暖かいうちに食べましょう。」




目の前にはホカホカ湯気をたてている料理が運ばれてきた。


これはなんだろう?


定食なのだろうか?


薄切りにされたお肉とウインナーらしきものが乗っている。その横には別の器にパンと思わしきものが乗っている。そしてスープがついている。



野菜がない。


あんなに畑がある村なのに、なぜ、この定食には野菜がないのだろう。


はて?


と思っていると、お皿がもう一つ追加された。




「このお皿はサラダバー用になっているの。よかったら沢山野菜を食べてね」




そう思っていると、ダンさんと同じ年頃の優しそうな女性が声をかけてきてくれた。


そういうことか。


野菜が豊富だから野菜は食べ放題ってことね。




「ありがとうございます。えっと・・・」




「私はサラよ。ダンと一緒にこの食堂と宿屋を経営しているの」




なんと、この綺麗で優しそうな女性はダンさんの奥さんだった。




リアル美女と野獣・・・。




「マユです。よろしくお願いします。


 えっと、サラさんもお料理作るんですか?」




「私は作らないの。だって、私、調理のスキル持ってないんだもの。


 それに、ダンには決して料理をしないようにって約束させられているの。


 だから給仕オンリーなの」




「サラさんの料理は壊滅的ってこの村で有名なのよ!」




「こら!マリアちゃん。言わなくてもいいことを・・・」




「あはは・・・はは」




どうやら見た目に反して、サラさんは料理が壊滅的にできないようです。


こんなに優しそうな美人さんで、いいお母さんになりそうな人が。


まあ、人は見かけによらないって言うし。


旦那さんが料理上手なら別にいいよね。うん。




じぃーっとサラさんを見つめる。


調理のスキルがないってことは何のスキルを持っているんだろうなぁと思ってサラさ


んを見ていたら突然目の前に文字が浮かび上がった。




【名前:サラ


 レベル:50


 職業:宿屋の女将。給仕


 スキル:調理器具破壊 Lv256


     掃除 Lv150


     帳簿 Lv146


     給仕 Lv100    】




って!!




「調理器具破壊!!しかもLv256!!」




思わず驚いて叫んでしまった。


こんなスキルあるの!!


しかも、レベルが高すぎる・・・。



「マユさんっ!人のステータスが見れるの!?」




「まあ!すごいわ!私のスキルを正確に言い当てられた人なんて初めてだわ」




マリアとサラさんが驚いている。


普通にステータスを見たいと思っただけなのに。


自分のステータスは念じるだけで見れると聞いていたが他人のステータスは見れない


ものなのだろうか。




「皆も見れるんじゃないんですか?」




「見れないわ!マユさん、スキル増えてるんじゃない?」




興奮したマリアに詰め寄られる。


ちょっと怖い。


でも、スキルが増えているって?


どういうことかしら。




念のため、自分のスキルを見るように念じてみた。




【名前:マユ


 レベル:2


 職業:フリーランス


 スキル:鑑定 Lv1】




となっており、スキルが増えていることが確認できた。


どうやら鑑定スキルが増えたようだ。




「鑑定スキルがプラスされてました。でも、レベル1だそうです」




「まあ!」




「すごいっ!!鑑定スキル持ちって10000人に一人くらいなのよ!すごいわ!


 これでいろんなものが鑑定できるね!


 私のステータスも見れる?」




「確認してみます」




マリアに言われてマリアのステータスを見たいと念じてみる。


ただ、いくら念じてもマリアのステータスを見ることはできなかった。




「・・・見れません」




「一日一回限定なのかしら??」




「レベルが低いからねぇ。スキルを鍛えてみるといいよ」




はて?


スキルを鍛えるとはどうしたら・・・?




「スキルを鍛えるってどうしたらいいんですか?」




スキルの鍛え方なんてわからないんだけれども・・・。




すると、サラさんが教えてくれた。




「対象物のステータスをみたいと思うことを何回も続けるの。そうすれば、スキルレベルが少しずつあがっていくわ。後はダンの料理を食べてもスキルレベルがあがるわ。調理レベルが300を越えている人がつくった料理を食べるとスキルが上がりやすいと聞いたことがあるわ。


ちなみに、どのスキルレベルが上がるかはランダムみたい。


それにレベル500を越える調理レベルの人の料理を食べるとスキルが大幅に上がることがあるみたいよ」




「へぇー。じゃあ、ダンさんの料理を毎日食べているサラさんはスキルレベルが上がりやすいんですね」




「そうなの!それで何故か私の場合は調理器具破壊のスキルばかりレベルがあがっているのよ!嫌になっちゃう」




そう言って、サラさんは表情を暗くする。


それはそうだろうな。


調理器具破壊のスキルって何に役立つんだろう。


このスキルの効果とか見ることってできないんだろうか。


例えば私の鑑定スキルの効果とか、見れないのかしら。




すると、目の前に文字が浮かび上がった。




【スキル:鑑定


対象物のステータスを確認できる。


対象物は有機物・無機物問わない。


すべての物の鑑定が可能。


1つレベルが上がると一日に鑑定できる回数が増える】




「わわっ!スキルの効果が見れたっ」




この考えればそのステータスがわかるって便利だよね。回数に制限はあるみたいだけど。




「へぇ。スキルの効果まで見れるんだ。鑑定スキルって便利だよね?サラさんの調理器具破壊スキルの効果ってみれるの?」




マリアが興味深々に訪ねてくる。


そう、私もそれ知りたかったんだよね。


と、サラさんのスキルを確認しようとする。が、一向に見えない。


そういえば、




「鑑定スキルはレベルによって一日に鑑定できる回数が決まっているんだった。レベルと同じ回数だけ見れるんだって。だから、今日は見れないかも・・・」




「そうなんだ。じゃあ明日ね。」




「マリアちゃん。知らなくていいこともあるのよ」




サラさんの凄みのある満面の笑みに、触れちゃいけないことなのかと思った。


気になるけど、サラさんの許可が得られるまでは見ないようにしよう。


なんか、サラさんを怒らせたらいけない気がする。



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