18話 一昨日の土曜日に③
「お、1位取れたじゃん。おめでと」
まぁ始めてから大体3時間ぐらい経ってるのだが。意気込みこそ良かったが、それだけでは勝てない。ほぼほぼボロ負けなのだが(しかもCPUのレベルを弱いまで下げて)ようやく掴んだ勝利だ。
「あぁ満足だ。それにしてもゲームって意外と面白いよな。この歳にしてハマりそう」
「良いじゃん。つかまだ45だろ?全然若いだろ」
母さんが俺を産んだのは29歳とかそんぐらいだしな。ちなみに父さんと母さんは同級生で、高校ぐらいからずっと一緒だとか。結婚してから20年経っても仲睦まじい両親である。
「つか年齢云々で思い出したけど、兄さんがそろそろ21歳の誕生日なんだけど父さん何か渡すのか?」
「そうだな……車とか?」
「金かけすぎだろ。兄さん羨ましいんだが」
俺そんなに金かけてもらった覚えないぞ。いや、学園通うのにめっちゃ金かけてもらってるわ。やっぱ両親すごい。
支えてもらっているのでよりそう思うのだ。
この際だ。前から疑問に思ってたことを聞いてみることにしよう。
「父さんは家族のために働いてるけどさ。その家族にほぼ年中会えないのに寂しいとか思わねえの?」
「は?寂しいに決まってんだろ。寂しいけど俺が働けば家族が楽な生活を出来る。まぁ朋恵も大体同じ理由だと思うけどな。俺は仕事愛もあるが、それ以上の家族愛も持ち合わせてるからな」
そう言った父さんの顔は、今まで見た事ないような嬉しそうな笑顔だった。
正直、この人の事を誤解していたかもしれない。嫌ってるだとかは無いが、正直な所は好きでも嫌いでもない。お金は稼いでいるが、家族愛が無い人。そう思っていたのだ。半年前にこうして会話をしなかったからと言うのもある。
けど、こうして見ると笑って楽しんで……この人はこの人なりに俺の父親なんだなと思った。
☆☆☆
「ん、もうこんな時間か。父さんは家に戻るんだろ?この家からは少しばかり遠いぞ」
大体電車と徒歩で30分ほど。学園は川崎からなら余裕で通えるのだが、一人暮らしに慣れた方が良いと言う父さんの意見に従ってこうして一人暮らしをしている。
今更だが改めて家の財力を思い知る。一人暮らしをさせる。出来るだけセキュリティが整っている家を選ぶのは分かるが、それにしてもタワマンはやりすぎだと思う。
「じゃ、そろそろ帰るかな。久しぶりの我が家も楽しみたいし。……葵。腹減ってないか?」
「腹……?まぁそれなりには……」
「じゃあ今から飯でも食いに行くか!寿司とか好きだろ?」
……やっぱりこの人少し金遣い荒いよな?
☆☆☆
「あれ?葵?それと蓮さんも。親子でお寿司?」
「なんでお前達がいるんだよ」
最初は高級寿司に行こうとしていた父さんをなんとか説得して来た回転寿司。正直俺はこっちの方が好きだったりする。
いやそんな事はどうでもいい。どういう事か何故かいたのは唯と真尋。…寮で夕食出てた記憶があるんだよな。
「いやー……何故かいきなりお寿司が食べたくなってね。安心したまえ。親子の楽しい時間を邪魔するつもりは無いからさ」
「さっきから何の話を……えーっと、葵のお父さん?」
「そ、俺の父親。皐月蓮」
そういや真尋は初対面か。何故かは知らないが唯が知ってる人物は大抵真尋も知ってる人みたいに思ってた。
「は、初めまして。葵君の……友達?」
「そこ疑問形やめろ」
「そ、そうね。葵君の友達の涼風真尋です。よ、よろしくお願いします……」
「ん。こちらこそよろしく。そうだ!君達も一緒に食べる?」
……どうやらこの人は休日ですら忙しいらしい。
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