10話 白凰学園の学校行事
「こちらご注文のお品です。ごゆっくりどうぞ」
お馴染みのセリフと共に運ばれてくるパスタ。あんまりファミレスとか利用しないんだけどめっちゃ美味そう。
空腹も相まって食が進む。なにこれくっそ美味い。
「あ、それ一口欲しい」
「ん」
フォークにパスタを巻きつけて、唯に渡す。確か唯って辛いの苦手じゃなかったか?と思っているとやっぱり苦手なようで。
「かりゃい……」
「まぁペペロンだしな……。唐辛子入ってるの見えてただろ」
「行けるんじゃないかと思ったんだよ……。けどやっぱり辛かったね」
まぁ行ける行けないの前に辛いの苦手って分かってるんだから、食べないっていう選択肢があれば良かったのにな。
ふと視線を感じて顔を上げる。……なんでお前達はじっと見てんだよ。食べろや。
「なんだよ……」
「付き合えば?」
「恋愛に興味ねえよ……」
他人の恋路なら良いんだが、いざ自分となるとその後の面倒臭さとかを考えてしまう。
両親のような関係を築ける自信があったら交際とかも考えるかもしれないが、まぁそんな自信なんて湧いてこない。
まぁこの話を続ける気は毛頭ないので話題を変える。
「高等部って行事多いよな。年間予定表見てびっくりしたんだが」
「中等部は少なかったんですか?」
「いや、むしろ多いくらいだったな。それ以上に高等部の行事が多いんだよ。まぁ学園全体って言う訳でもないけど」
例えば1年なら校外学習だったりだとか。何故か知らんがそれの回数が多いのだ。1回で十分だろとは思うが、まぁ行く分には構わないので文句は言わないようにしている。
他で言うなら……あぁ球技大会。これも春、秋、冬で計3回ある。
「そんなにやる必要あるか?ってぐらいあるからな。授業日数はどうやって賄ってるのか知りたいぐらい」
「行事で1日潰れるなんて中等部じゃザラだったからね。そういう事もあるから飽きない学園だよ」
確かにこの学園で飽きというのは生じない。面倒だと感じるところは多々あるが。
「ちなみに校外学習って何するの?」
「校外学習……ていう名義の日帰り旅行みたいなもんだしな。行先は去年と変わらないなら千葉だな」
まぁ千葉に行って何をするって話だが。ネズミや犬が戯れてるテーマパークしか思い当たらないし、大体の生徒はそこに行くだろう。
「そもそも神奈川に遊べる場所が少ないのがな。何故か小学生の修学旅行には人気だけど」
横浜の方なら中華街とか野球場だとか、ランドマークタワーだとかがあるが。まぁそもそもの話あそこは観光客が集まる場所というイメージがある。事実、「じゃあ中華街に行こうぜ!」なんて会話は市民の間ではしないし。
「まぁそう考えると千葉も悪くは無いよな。と言ってもまだ最初の行先しか分かってないからなぁ」
「葵は千葉散策はどこに行くの?あなた、人集まる場所は苦手とか言ってなかったかしら」
「あ?そんなこと言ってたか?」
「校外学習は千葉!ってなった時に『人集まるとこ苦手だなぁ……』て呟いていたね。私も真尋も聞いていたよ」
うーん……言われてみればそんな事を言ってた記憶がある気がする。別にそんな苦手でもないけどなぁ。
まぁ苦手かそうじゃないかはどうでもいい。
「玲と篠崎さんは中学の時にどこ行ったんだ?修学旅行とか」
「修学旅行は京都だったよ。まぁ中学なら普通……じゃないかな。校外学習というか自然教室は茅ヶ崎の方に」
「茅ヶ崎……って言うとキャンプ場か?自然教室ってそんなことやるんだな」
「うん。大変な事はすごく多いけど楽しいよ。夏とかにやる?」
「キャンプをかい!?ぜひっ!」
魅力的な提案に食い付いたのは唯。
そういやこいつキャンプとかに憧れてたからな。よくそういう話は聞いてたし。
「ふふっ……夏休みが一段と楽しみになる要素が増えたね。まだまだ長いけれど、待ちきれないよ」
「夏かぁ……予定は特にないな」
まぁキャンプは予定に入れても良いだろう。そもそも唯が行くなら間違いなく同行確定演出なので予定ってか確定事項だ。
というか気が早いよ。まだ4月だ。
「こういう予定って話し合ってる時が1番楽しいってよく言うよな」
「いざ予定日が近くなると面倒になってくるのよね。どこかの皐月葵もそういうのが多いから困ってるわ」
「どこかのって言っときながら人物確定させんのやめない?」
それにドタキャンなんて基本はしないぞ。まぁ面倒になって断ったことは…1度だけあるが。
「ふふっ……でもきっと真尋さん達と一緒なら楽しめると思いますよ」
「篠崎さんはどうだったんだ?キャンプやったんだろ?」
「私は…そこそこ楽しめましたよ。料理も美味しかったですし。でもその……一緒に寝泊まりをした人達に質問攻めに会いまして……」
まぁ中学生ってみんな恋バナとか好きだもんな。大方玲のことだろう。篠崎さんが玲をどう思っていようと、男女で一緒にいれば聞きたいことは10でも100でも出てくる。
篠崎さんも大変だな……と思うが、まぁ楽しそうに思い出を語っているので、別に嫌な思いをしたとかは無いようで安心した。
「ごちそうさまでした」
いつの間にか皿からパスタは無くなっていた。腹もいっぱいになったので追加注文はしない。とは言ってもドリンクバーを付けているので、ドリンクを飲みつつ会話は続けることにした。
☆☆☆
「じゃあ俺こっちだから。じゃあな」
「じゃあ葵。また明日会おうね」
唯達と別れ帰路につく。その途中に本屋に寄ると、お気に入りの作家である結城結月(ゆうきゆずき)先生の名前を発見する。
「あ、結城先生の新刊でてたのか。買って帰ろ」
結城先生の新刊の他に本を2冊購入し、書店を出る。結城先生の書く小説はよくあるラブコメであるが、読者が物語に引き込まれる感覚に陥る。まるでその物語を自分が実際に眺めている感覚になれる。そういう本だ。
俺は結城先生の新刊を早く読みたいと言う気持ちから少しだけ歩くスピードを上げてマンションへと向かった。
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