第13話 充血
モンスター達の戦いは決着がついた。
フランケン田中は肉体が溶ける毒が回って戦意喪失。
妖狐はコウモリに血を吸われて獣人形態を保てなくなり、ボロ雑巾ギツネと化している。
巨大コウモリが甲高く鳴けば、コウモリ達がそれぞれのねぐらへ帰っていく。巨大コウモリは地面に降りて、人間へ戻っていく。
「さてと、悪ギツネはどうしたものか」
ケイトは服を着ながら、洋子の処分について考え始める。人間を支配し、モンスターによる世界を作ろうとする危険因子は取り除かなければならない。
「明日から、僕のもとで働いてもらおうかな」
彼はキツネを持ち上げて、首筋の毛をなでる。キツネは毛を逆立てて威嚇の牙を見せる。
「ふざけるな。死んでまえ!」
もふ尻尾の中に隠していた注射器を、ケイトの左腕に刺す。注射器の成分が血流にのると、ケイトの体に力が入らなくなる。ひざから崩れて、あお向けに倒れる。
「なっ、何を打った……?」
「鎮静剤の強化版よ。これで半日は動けへんよ。ほな、あのオオカミも倒したろ」
彼女は注射器をくわえて、フランケンの元へ駆けていく。
「に、逃げろ、叶実!」
ケイトの叫びで、叶実が血まみれの顔を上げる。鬼迫のキツネが視界に入る。叶実は逃げられぬと判断し、「近寄らないで」と牙をむき出す。
彼女は鋭い爪をフランケンの胸に突き立てる。洋子は立ち止まって、眉間にしわを寄せたまま見つめる。
「少しでも近づいたら、この人の心臓を止めるよ! 本気なんだから」
「フン! オオカミのくせに、うちらみたいに卑怯な手使いよって」
キツネは後ずさりして唾を飛ばす。ケイトは火花が出るウインクを叶実に飛ばす。叶実は舌を少し出して照れる。
「パパを殺さないで!」
バキュウウウウウウン!
木々を揺らし、耳をつんざく銃声が聞こえる。銀の銃弾が叶実の脇腹に命中し、オオカミの毛が薄くなって人に戻っていく。
皆が公園の入り口を見ると、拳銃を構えたシエリがいた。彼女は肩で息をして、唇が震えている。隣の朱美は顔面蒼白で、彼女と叶実を交互に見ていた。
「ケケケケケケン。シエリちゃん、そいつはパパを殺そうとした悪い奴! やってもう、グアッ」
銃弾がキツネの右前足に命中。キツネはもんどりうって、血反吐を出す。
「パパ、助けに来たよ」
彼女はふらついた足取りで、父のようなモノに近づく。
※※※
5月25日
今日は大好きなケイトさんに会えた。いろんな楽器をプレイしてもらって、とてもキチョーな体験! パパに似た人の話も聞いてもらえたし、とってもいい日。もしホントにパパだったらどうしよ。早良さん、ガンバ!
5月28日
パパ、早く会いたいよ。わたしの歌ってるトコ見てほしい。でも、にゃんにゃんダンスははずかしいかな。あー、早く早良さんからメッセージこないかしら。
5月31日
社長にメッセージ送るの忘れてた……。わたしったらホント忘れやすい。大事なことは色んな目につくトコに書いておこう。よく読む本にはさんでおけばOK!
6月3日
今日は「メリサの百年」タイアップ記念インタビュー。たくさん記者がいてキンチョーしちゃった。ちょっとカミカミだったかな。アルテミー社にパパ似の人がいるそうだけど、ホントだったらうれしい。
6月4日
パパは死んだはずだし、すれ違っただけの人は全く関係なかったはず。なのに、どうして、なぜかスッキリしないんだろう。気になって楽しく歌えない。頭がいたいイヤイヤイヤ。
6月5日
2日ぶりに家に帰ってきたら、部屋中の本に「パパは生きている」ってメモがはさんでる。これは自分が書いたのかな? 信じられない。
6月6日
コンビニ途中で、こわい人に会う。この写真の女に見覚えあるかって。見たことあると言ったら、白い紙袋もらった。中身はピストル。これで女をやっつけてほしいって、かなりヤバイ。早良さんに相談しなきゃ。
(続く)
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