第14話黒田
プ・プ・プ・プ・『お掛けになった電話は、電源が入っていないためかかりません』
「えっ!? 何で?」
再度かけ直しても、同じだった。
「どうした? 掛からないのか?」
「えっえぇ……。電源入ってないって……」
「あぁ、もう、折角ここまで来たのになぁ……」
がっかりする黒田に提案をしてみる。
「iphoneさえなおれば、さっきかかって来た番号にかけれるんだけどなあ? さっきの番号とひろみの番号が違うのよ」
「そうなの?」
「うん、私、数字すぐに覚えられないし……着くかな? 電源……」
再度、私の携帯の電源ボタンを押してみるが、反応はなかった。シーツで携帯を拭いても同じだった。
「故障だな……」
「わかってる。どうしてくれるのよ! このiphone正規の値段なのヨォ!」
「知らねぇよ。落としたの自分じゃねえか」
「…………後ろから羽交い締めしたの、あんたじゃなくて?」
「あぁ、もうわかったぁわかった。修理してやるよ」
「えっ? できるの?」
「ああ、でも場所移さないとな」
その言葉と同時に男はニヤついた顔に変わった。
「な、何? やらしい顔……」
「5万円かかるけどいい?」
「はぁ? なんでよ。バッカじゃないの? 壊したの私じゃないし!」
「じゃあ、ニヒヒッ! タダで直してあげる代わりに、協力してよ?」
「協力? 何の?」
「大事な友達の未来の協力……」
「えっ? どういう意味ヨォ!」
「この部屋の状況、見てまだわからない? ただの物取りに見える? これ」
確かにそうだった。荒れ果てた部屋の模様。見るも無残に引き裂かれた洋服などを見るとただの物取りには見えない。
「何が絡んでるのよ。探偵でもない私に役に立てると思ってるの?」
「まあまあ、友達という名の強い見方がいれば、ひろみさんも安心だろうよ?」
「意味深ね?」
「そう、これは大事な役目なんだよ」
「うーん、会社休めないわよ!」
「友達の命が掛かってても?」
また逃げればこの男に羽交い締めにでも合うのかと思うと、黒田の携帯を取り、会社に休みの連絡を入れるしかなかった。
「さぁ、行こうか? とりあえず修理」
黒田は携帯から何処かに電話している様子だった。黒田は電話を切るとタブレットをカバンにしまい、私の手を取った。
「ちょっとぉ! 簡単に握らないでよ!」
「まあまあ、タイプじゃないから大丈夫だよ」
「何よ、その言い方は!」
そんな痴話喧嘩風にベッドルームから出て、リビングにはいると、マンション下に、何台も車が停まるような音が聞こえた。男は窓越しに行き、下を見る。
「早いな、第二弾か? ……急がないと……走れるか?」
男は私の手を取り走り出した。私も慌てて、バッグを持ちながら男と一緒に玄関に出る。ヒールを履く暇もなく、手に持ちエレベーター前に着くと、上層階へと上がるランプが付いていた。男はエレベーターを諦め、通路奥の扉を開けて、階段から下層階へと降りる。素足で必死に男についていくと、スーツの男と出くわした。
スーツの男は、胸元から、ナイフのようなもの取り出そうしたが、黒田はその腕を、蹴り飛ばし男を一撃で倒した。慌てて黒田の後ろに隠れながら、後をついて行く。
またもや、スーツの男が出現。男はパンチを繰り出したが、それを難なくかわし黒田は、飛び蹴りを繰り出した。この狭い階段際での、戦いは慣れているような、澄ました表情で私を制止しながら、男を次から次へと倒していく。
「何なのよ! あれは!」
私は、黒田に言葉をかける。すると黒田は、「追っ手だよ! 桂木興産の連中だろうな!」あっさりと応えたが、私には全く見当がつかなかった。
一階までに三人のスーツの男を倒し、難なくマンション裏手側に出ると、細い通路から路地に出た。素足のまま私は必死に黒田についていくしかなかった。
「もう少し、白の軽トラまで走って!」
五十メートル先ぐらいに停まってある軽トラ目掛けて必死に走った。軽トラの荷台に黒田電気とロゴが入ってあった。
黒田は運転席、私は助手席に何とか乗り込み、エンジンをかけてバックでUターンをして、大通りに出る。
「あぁもう、足が真っ黒だぁ!」
「洋服も買ってやるよ。一緒にがんばるんだったらな!」
「…………」私は黒田に睨みを効かせた。
「とりあえず、アキバに向かうよ」
朝の渋滞を避ける為、路地路地をウネウネと爆走しながら、また黒田は、何処かに電話していた。電話を終えると、胸元から、名刺らしきものを手渡す。名刺には、黒田電気社長、黒田武と書かれてあった。裏には、佐多山電気開発グループと出資会社、山岸興産グループの所在一覧と明記してあった。
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