第2話恐怖

 私は主人が乗る電車の端に陣取り、主人にメールを送った。


『何時頃帰れそう? 早く戻って来て欲しいなぁ? 話があるの。愛してる?』


 そう送ってみたものの、夫から返信のメールは届かない。すると、私の携帯に着信が一通。


 =私の携帯着信一通目=


『早く会いたいなあ?』

『待ってるからね? 今日はいっぱい話そうねえ? 愛してる!』


 多分あの男が、彼女に扮して送ったメールが届いた。そのすぐ後、主人からと思われる着信がピンクの携帯に届く……。


『もうすぐ着くよ。俺も愛してる!』


 私には返信せずに、あの女には返信した! なんてこと。これは……。裏切り以外の何ものでもない。腹が立つ! この夫は、私よりあの女を選んだ。

 その場を駆け出し、一括入れて叫んでやろうかと思ったがその瞬間、新たなメールが私の携帯に届いた。


=私の携帯着信二通目=


『三橋夕子の男より。あなたとお話がしたいと思います。これから三橋夕子様マンションでお待ちしております。もしこれを無視した場合や警察などに連絡した場合、あなたと奥様の命頂戴します。まあ、四人でゆっくりお話しましょう!』


 あの男からのメールだ。私の思いは、爆発しそうになっていた。夫が取る行動はどういったものなのか観察してやろう。行動しだいではと……。怒りは頂点に達していた。電車がホーム入った。夫が、携帯を再度取り出した。


「あっもしもし? あの! 変なメールで、殺人予告……」


 警察に電話した! この男は私の命より、自分の命を選んだ! 勢い良く夫の背中を入ってくる電車めがけて突き飛ばした……。


 私は、その場を走り去る。周りの人たちが私を見ていた。帽子を深々と被り、その場を駆け足で階段を降りる。気が動転してどう走ったかなど、覚えていない。とにかく慌ててホームを出た。出たところで、急に恐怖感が襲い掛かった。


「ああ! 私は主人を……主人を……殺してしまった……」


 気が動転する中、私は男にメールを送った。


『私、主人をホームに、突き落とした……』


=私の携帯着信三通目=


『とにかく逃げよう! こちらも準備して迎えに行く! 待ち合わせ場所は××市東駅近くの喫茶店メロディアンで落ち合おう』


 私は自分でも困惑したまま、言われたとおり喫茶店に向かった。

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