第28話 ヴィリディは積極的、ウイエリティアは消極的
「ヴィリディ、貴女には新しく創った大地から過剰な塩分などを取り除いて欲しいんだ〜。かなりの範囲があるし、精密操作が必要だけど保有魔力足りる?」
わざわざしてくれるのかの確認は必要ないことがオグァとのやり取りでわかった。こちらに来てくれた時点で了承済みだということになるらしい。
♣︎それなら大丈夫デス!魔力と親和性が高い精霊は精密操作は得意なんデ〜ス。まして私は大聖霊、そんなこと造作もないですヨ〜‼︎
ただ目的のものと一緒に土壌中の水分も抜けちゃうノデ、終わったら水を撒く必要はありますネ。♣︎
「じゃあ水は私が撒くから、土壌中の栄養素の調整をお願いね。」
やはり聖霊魔法とはいえ弊害はあるようだ。というよりむしろ魔法適性の問題だろうか?研究課題が増えた‼︎
♣︎了解デ〜ス!♣︎
元気よく返事をすると、私の警戒に引っかからないほどの僅かな魔法量で発動する。
「そんなに少ない魔力量で魔法が発動するなんて、驚いた!」
♣︎ふっふっふ...、これは聖霊の特殊性からくる魔法適性ナノデ、他の種族には真似なんてできないんですヨ〜♪羨ましいですカ?♣︎
「ちょっと羨ましいかも…。まだ私の魔法も改良の余地があるということか。いいね、なんかやる気が出てきたぁー‼︎ 終わったら教えて。向こうで改良研究やってるから!」
♣︎思い立ったらすぐ行動...なんだか妖精みたいな好奇心ですネ。まぁ時間がかかるからいいですケド。♣︎
私の底知れぬ探究心は妖精にも引けを取らないらしい。素直に嬉しい!
ただ、探究心を好奇心と捉えられているのは心外だった。
===
[…闇雲に探すのではやはり無理があるのではないか?]
2回目の定例報告会で共通で思っていたことをカスタが漏らした。
〔そうだね〜。今までなんとかやってきたけどそろそろ限界だね。〕
《身体的+精神的に堪えるけんねー。頑張って調べて空振りば50回も繰り返しよーしね。》
今まで出すまいとしていた弱音が漏れる。
〔あーやめやめ!これ以上弱音を吐いたら止まらなくなる‼︎〕
[それで何か方法はないのか…?]
今まで思いつかなかったものが、ここで思いつくとは思えないが...。
《ラー様が楓様やったらどげん場所ば選ぶと?》
なるほど、私が楓ちゃんだったら…か。
〔付き合いがあったとはいえ、楓ちゃんマスターになったわけじゃないから難しい質問だなぁ。残念ながらその質問に答えられそうにないや。〕
《それなら考え方が近かカスタは?》
[茶畑を作るなら方法は2つある。
一つは、もともと環境が整っている場所を選んで作っていく方法。この方法は楽ができるが私たちのような追跡者からは見つかる可能性がある。
もう一つは、もともとは環境が整っていない場所で環境整備から進める方法。こちらは手間がかなりかかるが追跡者には見つかりにくい。
私ならば後者を選ぶ。ただ楓殿が選ぶ可能性はハーフハーフといったところだろう。]
なるほど…、そういう方法もあったのか。全然思いつかなかった方法だが、楓ちゃんがいかにも取りそうな方法だ。
《ラー様はどちらん方法ば楓様が取ったて思うと?うちゃ、1から整備する方やて思うっちゃけど。》
〔うん、私も楓ちゃんなら裏を搔こうとして、環境が整った場所はあえて選ばないと思うよ。〕
《ばってん、変化ばしとらん星なんてなかばい、特に生命が存在しとー場所では。》
[生命が存在しているかしていないかはリスト化されていたのではなかったか?]
〔そういえば…楓ちゃんが作っていたような気がする。〕
《ちょっと探してくるね。》
5分後、尊桜が紙束を両腕で抱えてきた。
てかあれほどの量を1人で処理していたの⁉︎ま、まあいくらなんでもそんなブラックすぎる仕事を楓
ちゃんがするわけないか。あはははは...。
《机ん上に積み重なっとったばい。これだけん量ば一人でするなんて、楓様は本当に働き屋なんやなあ。》
…マジで1人でやっていたらしい。日本人は仕事したいしたい症候群なのかな?
〔生命が存在しない星だけでこんなにもあるの⁉︎ これ、探す場所増えてない?〕
[もう観念して一つずつ探していくしかあるまい…。]
疲れに疲れが重なってボロボロな体を無理を押して動かす3人だった。
===
♣︎それじゃあ、私の仕事は終わったノデ、帰らせてもらいマ〜ス!また何かあったら遠慮無く呼ぶですヨ‼︎♣︎
右手で敬礼をして笑顔でそういい、帰っていった。
…聖霊はかなりフランクな性格の者が多いのだろうか?
とにかく助かったことには変わりない。無事に終
わって一息つく。
乾いた土を湿らせた後、いよいよコツコツ育ててきた幼苗を植え変える作業に入る。
生育において天地返し(表土と下層土を1m程度ひっくり返して混和すること)は重要だ。
ただ広大な土地でそれをするのはかなりの重労働になる。
「次は…ウイエリティアかな。」
風魔法は使い方ひとつで凶悪魔法にもなったり、実用的な魔法になったりする。今回はかなり実用的な使い方になる。畑作りで凶悪魔法を使うはずなんてないけどね。
「あーテステス。こちら楓。今からウイエリティア、こっち来れる〜?」
♠︎もう後ろにいるんだけど...。♠︎
呼び掛けた途端、背後から声がかけられる。
まさか後ろにいるとは思っていなかったので、
「ひゃあっ‼︎‼︎」
私らしくない声が出てしまった。恥ずかしい…。
「も、もう!来てたならはやく言ってよ!驚いて、はしたない声出しちゃったじゃない‼︎」
焦りと羞恥心を隠すために強めの口調になってしまった。
♠︎ご、ごめんって...。それで僕にして欲しいことって何?♠︎
ウイエリティアは私の口調にたじろいだものの、本題を切り出す。
ようやく落ち着きを取り戻した私は、手伝いの内容を話す。
「定植の手伝いをして欲しいんだよね。ウイエリティアには、土埃をあげないようにしつつ天地返しをしてほしいんだ。範囲はまずは今ラインが引いてある内側をしてね。」
気怠げな表情がさらに曇っているのがわかった。
♠︎この範囲なら朝飯前だけど...これ何回繰り返すの?♠︎
「うーん、30回くらい…?」
ウイエリティアが聞いてきたから答えたのに、当の本人は何も言わずに逃げ出す。
「ちょっ⁉︎ 待ってよ〜‼︎」
追いかけっこが終わった頃には、辺りは真っ暗に
なっていた。
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