第27話 オグァのツンデレ疑惑
−−−「先輩知ってますか?この広大な空間には神に近い存在や実際に神として存在する者が数多いるんですよ。私たちが神域にこもり、外の世界を知らないだけで…。」
〔それくらい知ってるよ〜。なんだかんだで私だってここにいて長いんだから〜!〕
かつて楽しげに私と話していた少女は今、私の隣にはいない−−−。
===
目が覚めるといつもとは違う天井が広がっていた。
この光景は毎朝違う。
もう見慣れた。
けれどいつも見慣れた天井じゃないことに不安を覚える。
〔また違う夢だったなぁ。けどそれは決して不快じゃない、むしろ心地の良いものだからなおさら私に暗い影を落とすんだよね。ほんと、なんであんなことしたんだろ…。〕
いつまでこの生活が続くのだろうか。
まだ20ちょっとの場所しか捜せていない。
残りの数の方が果てしなく多いことに心が折れそうになる。
それでも踏ん張って今日も捜索を続ける。
一度私欲のせいで終わらせてしまったあの日常を取り戻すために−−−。
===
聖霊たちを呼び出した翌日、久しぶりに誰かと心の底から語り合って心も晴れていた。
「ふゎぁ〜〜〜、よく寝たぁ。こんなに寝たのは久しぶりかも。」
家にいるのがいづらくなったとき以来、しっかりと眠れていなかった。久しぶりに熟睡できて身体は凝り固まったため、大きく伸びをして解すと、欠伸が自然と出た。
一時的に住まう家として大きめのテントを設営していたのだが、床は少しごつごつしていた。
その床でよくこれほどぐっすり眠れたものだ、と我ながら感心する。
その中から出ると、昨日も見た大海原が水平線の先まで続いていた。ただ昨日よりもより綺麗に見えた気がした。
「海に近い場所にテントを設置したのは正解だったなぁ。朝からこの景色を見たら目が覚めずにはいられないね。」
朝ご飯の用意をするため、食材を探す。土地がそこそこ狭いので土壌には塩が染み渡っている部分が多く、近くに食べられそうな植物は見受けられない。勿論、動物もいない。
一方海の方には海藻をはじめとする水生植物、小魚などの肉食水性生物も豊富にいる。
「しばらくは魚のみの食事になるかなぁ。でも栄養バランスを考えると向こうの方にも行って、野菜も摂らないとなぁ。でも面倒くさいし...。あ〜あ、はやく聖霊たちの力を借りてこの辺りも豊かにしないと。」
これからのことを考えると、はやり大聖霊たちの力は必要不可欠だった。
そこで聖霊たちとは盟約を結んだ。これは信頼の証であり、違反時の制約はないものとした。その盟約の内容は、
†一、互いに助け合うこと
一、互いに信頼を失うような行動は戒しめ
ること
一、互いに過度に干渉しないこと
一、互いに無理を強いることはしないこと
一、互いに合意のもと協力すること
一、上記の盟約を信頼の元に遵守すること
†
というものだった。互いに対等な立場から結んだ信頼そのものを体現した盟約。
彼らは快く受け入れてくれた。
朝の支度を終えて早速彼らの力を貸してもらおうと、呼んでみる。無理を強いるつもりはことさらないので、タイミングが悪かったなら素直に諦めて1人で作業しよう。
「朝から悪いんだけどオグァ、こっち来れる?早速手伝って欲しいことがあるんだけど。」
私が呼びかけると、あからさまに不機嫌な声が聞こえてきた。
❤︎…早々私に手伝って欲しいことって何なの?しょうもない事なら私、読書の続きをしたいんだけど。それに神どもの協力なんてしたくないし。❤︎
そこまで拒絶されると、なんだかこんな朝から呼ぶことを申し訳なる。
「まあまあそんなこと言わずに。えーっとね、この星の土地が狭いから拡張したいんだけど、なんせこの星は活動が鈍くて広がらないんだ〜。私1人じゃ時間がかかりすぎるから手伝って欲しいんだけど。…ダメかな?」
数秒間が空いて、
❤︎…まぁそういうことならいいけど、今すぐはいや。あと2時間くらい待って。❤︎
それだけ言うと通信が切れた。
「…一朝一夜じゃ確執は消えないか。いつかお互いに笑い合えるといいんだけどなぁ。」
苦笑いして、そんなことを思っていた。
にしてもよかった、引き受けてくれて。あと2時間、どうやって潰そうかな〜。
===
27カ所目を捜し終えたとき、尊桜から連絡が入った。
《ラー様、そちらはどういった状況と?こちらは今んところ全て空振りばい。》
やはり尊桜の方も見つかっていないらしい。見つかるとも思っていなかったが。
〔こっちも全部空振りだよ〜。まだまだ未捜索場所は絶望しそうなほど余ってるけどね。〕
皮肉を込めて現状を伝えていると、カスタからも連絡が来た。
[お主らの声は聞こえていたが…やはりお主らも手がかりなし、か。]
〔‘も’ってことはそっちも見つけられていないんだね。〕
[まだ悲観するほどでないことはわかっているが、かなり堪えるものだ。]
全くだ!なぜこんなことになったのか、元凶は問い詰めてやりたい。
…元凶、わたしでした。あの時の自分をぶん殴ってやりたい‼︎
〔でも誰かが見つけるまで続けるしかないからね〜。さっ、今日も頑張ろ!〕
明るく振る舞い、通信を切る。静かな自分への殺意を押し殺し、見つかるかもわからないお先真っ暗な将来に怯える心も隠して−−−。
===
ようやく支度を終えたらしいオグァを迎えて、計画を伝える。
流石に女の子なだけに昨日とは見間違うほど化粧や衣装は可愛らしくなっていた。
女の子って本気を出すと驚くほど変わるね〜。…私も本気を出せば変わるのかな?
❤︎つまり私は貴女が発動した魔法の補助をすればいいのね?…ねぇ、聞いてる?❤︎
ぽけーっとした私の様子を怪しく思ったオグァが睨んでくる。
「う、うん。聞いてる、聞いてるよ?それで簡単に言っちゃえばそれだけでいいよ。規模がかなり大きいから私1人の魔力だけじゃあ心配だから。成功すれば土地の広さが一気に広がるし、できることも増える。重要な仕事だから、頼りにしてるね♪」
両手を合わせて改めて頼み込むと、少し照れているのか、やや上擦った声で返事が聞こえてきた。
❤︎私がここにいる時点で手伝ってもらえることは貴女もわかっているはずよ?だからそんなに必死に頼み込む必要なんてないわ。なんだか目障りだし。❤︎
言葉のチョイスが辛辣っ⁉︎
楓はがらすのはーとにダメージを負った。
「言葉ひとつ一つが心に刺さる…。それでも、ありがとね。それじゃあはじめよっか。」
地殻を上昇させる魔法を一帯に発動させる。
❤︎これだけの大規模魔法を独り補助なしで発動させることができるってことは...やっぱり貴女も立派な神なのね。ムカつくわ。❤︎
私が神だということを再認識したオグァは、その桁違いの魔法力に苛立ちつつもその補佐に出る。
ようやく2人で完成させた大規模魔法は安定し、効力を発揮した。
突然海が干上がったと思うと、地面が姿を現し遥か彼方まで広がっていった。
想像通りの効果だが、想像以上に壮観だった。我ながらすごい魔法だ!
「おかげで想定してたよりはやくに終えられたよ。お疲れ様。」
労いの言葉をかけると、オグァはそっぽを向き、
❤︎これで用は終わりでしょ。なら私は帰ってもいいわよね?あんまり神と同じ場所にいたくないから、早く帰りたいし。❤︎
そうして聖霊界への門を開く。
「向こうに行ったらヴィリディを呼んでくれないかな?次は彼女の力が必要なんだよ。」
❤︎そんなの自分でやりなさいよ…と言いたいとこだけど、まだ魔力が回復してないんでしょ。それくらいならわけないわ。伝えといてあげる。感謝しなさい!❤︎
ツンデレかっ‼︎ っというと間違いなく機嫌が悪くなるので口には出さない。
そしてちゃんとヴィリディに伝えてくれたらしく、オグァが帰って間も無くやってきた。
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