第17話 尊桜の異世界救済記
最近、というのも地球から帰ってきてからだが、2人の知識チートしたい欲が日に日に強くなってしまっている気がする。
ただでさえ存在が反則なのにどうして余計なことに手を出すのかなぁ。ほんとうにその火消しに回るの、めんどくさい。というか普通逆でしょ、役回り!
今にも投げ出したい役をなんとか割り切ってこなしていた。
「いい加減趣味に打ち込むのを切り上げて、次の世界を探しましょうよ〜。」
〔えぇ〜、まだ試したいこと沢山あるから行きたくないよぉ〜!〕
「幼稚園児かっ!もぉ〜、尊桜からも何か言ってあげてよ‼︎」
夫婦みたいな会話劇を繰り広げていることにも気がつかない楓は話を振った。
《えっ、うちと⁉︎ うちゃ...もっと地球で経験したことば試してんごたーばい。》
票数2対1で否決。
〔ほら〜、まだまだ試したいんだよぉ。だからまだいかな〜い!〕
むむむ...。こうなったら...。
「はぁ…。あまりこの手は使いたくはなかったんですが、仕方ありませんね。」
そういって2人に兼ねてから考えていた新たな方法を聞かせた。
「今回は2人が別々の世界に行って救済してもらいます。私は2人の監視とサポートでここから視ています。そして2人は救済が完了するまで神域に帰ってくることはできませんので、そのつもりで。」
一方的に計画を告げて2人分の転送魔法陣を描き始める。
「ちょちょちょ待って!本気で言ってる⁉︎ 私にできることとか、ないに等しいんだけど‼︎」
《そうばい!うちゃ神やなかやけん祝福もなかばい‼︎》
反論してくる2人。しかしそこは冷酷で残虐で有名なわ・た・し(自称)!スパッと斬り捨てる。
「今の今まで惰性に任せて私の忠告を聞かなかった2人が悪い。ということで諦めて行ってきてくださ〜い☆」
片手で横ピースを決めて、ギャーギャー言う2人を無慈悲に見つめ、送り出すのだった。
===
Side of 尊桜
送られた世界は見渡す限り大海原の翠星だった。
《空から見えたこん世界、ばり蒼うて綺麗やったばってん、いじゃ誰かと接触しようとすると難易度跳ね上がるね...。》
楓様から与えられた条件はこの世界の救済。しかしこの世界の問題がわからなかったので首を捻っていると、楓様から連絡が来た。
「尊桜、無事着いたみたいですね。ではこの世界の現状を簡単に説明しますね。」
他人行儀の話し方を聞き、緊張感をもってことにあたる必要があると悟った。
「その世界は簡単に言えば生物が絶えた世界です。そのため救済したと認定する条件は生物の多様性を取り戻すこととします。」
それなら簡単だ。能力をうまく使って成功すれば生物すら創れる。
「ただし、生命創造系の能力の使用は当然禁止です。それじゃあがんばってね〜!」
そう締めくくり通信は切れた。
しかし最後の言葉のせいで、暫くその場で呆然としている私だった。
少し経って、ようやく我を取り戻せた私は深く考え込んだ。
①どうすれば生命を誕生させることができる
のか。
②どうやって能力なしで生命誕生に必要なも
のを揃えられるのか。
③楓様が私をこの世界に送り込んだ意図は何
なのか。
3つの疑問に対して自問自答を繰り返し、一通り終わった頃には1日が過ぎていた。
結局自分なりに行動順位を整理し、まずは海の成分を調べることにした。
鑑定魔法の結果、
ミネラル:6.7%、水:88.6%、有機物:4.7%
この結果なら、今すぐにでも生命が誕生してもおかしくない。しかしこの世界では一度滅亡してから生命は誕生していない様だ。
不思議に思ったものの、原因はすぐに思い当たった。
《こん水…。生存するには有毒すぎる。》
そう、この海洋にはミネラルの中でも亜鉛が特に多く、逆にカルシウムなどが殆ど入っていなかったのだ。
だからといって諦めるわけにもいかず、なんとかアイデアを捻り出す。
そこであることを思いつき、実践した。その結果、見事課題を解決することができたのだった。
===
無事ミッションをクリアして神域に帰ることができた尊桜。
「おめでとう。それにしてもよくあんな方法思い付いたね〜。」
《本当そうばい!地球でそんことば学んどらんやったら絶対気がつかんかったばい〜‼︎》
尊桜が思いついた方法は、
まず精密な海洋水の成分を割り出し、地球の海水との違いを洗い出す。そしてその成分に適した植物が生まれる様に調整したタンパク質のRNAを創り出して海に放ち、しばらく待った。
と言うものだった。その結果見事生命(バクテリア)が生まれ、数種類の水性植物を確認したため、試練成功とみなされ、無事帰ってこれたのだ。
《それにしたっちゃ送り出しゃれたばっかりは本当にどうすりゃよかかわからんやったよお。それにしたっちゃなんでこげん課題ば出したんと?》
今までずっとわからなかったことを直接聞いてみる。
「あ〜、それはね。この方法なら得しかなかったからだよ。あなたたち2人は知識をふんだんに使えるし、世界は救済できるし一石二鳥じゃん?だからこの方法を取ったんだよ。」
《打算しかなか理由ば聞いて急に疲れが湧いてきたっちゃん...。それで、ラー様はどこしゃぃおるんと?》
「ラー先輩なら…。」
そういって尊桜以上に酷い状況を聞かされ、ただただラーの無事を祈るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます