第14話 能力は環境と大きく関わる
新たな仲間に尊桜を迎えた楓たちはひと休みを終えて、次なる世界を探していた。
《なしてそげんことしよーんと?神様がすることやなかばい。楓様は本当に世話好きなんやなあ。》
最近尊桜はかなり打ち解けたらしく、方言まで話し始めた。
てか、その喋り方どこかで聞いたことあるような…。
尊桜がどこから来たのかは議論の余地があるが、ひとまず置いておく。
《こん世界とかどげんな?》
そういって尊桜が見せてきた情報には...
『求人募集〜!写真撮影技術が高い人大歓迎‼︎気に入った写真は高額取引もあり得ます。
連絡先:***-**-****
場所 :神域なのでお迎えいたします。
依頼主:ラー』
…緊急会議が決定した。
===
顔面蒼白で正座していたラーは絶望や苦痛、恐怖の感情が爆発するのを必死に抑えていた。
「…これはどういうことか一から説明してもらえます、よね?」
ニコッと微笑んだのだが、それでより萎縮してしまう。
《ラー様はなんでこげん広告出したんやろうか...。あっ!もしかしてばり好きな楓様ば盗撮するため…とかと?》
いよいよガクガクし始めたラーの様子から理由について確信した楓は、早速処刑すべく準備を始める。
〔か、楓ちゃん?その縄は一体なんのために使うの?(ガクガクガク)〕
先輩に向けてニコッと微笑んでまた作業に戻る。
いよいよ準備が整い、先輩に縄を結びつける。
《あー、なんかなし楓様がしたかことがわかったけん先に家ん中に入っとくね。何かあったら呼んでくれん、楓様。》
「わかった。それじゃあご飯でも作っておいて〜。」
〔私、生きて帰れるかなぁ...。〕
命の危機を感じ始めたラーなどお構いなしに粛々と執行準備を完了させていく楓。
そして処刑執行のとき---
ラーは漫画でしかみたことないような蓑虫巻きの逆宙吊りを自ら体験したことに感動を覚えていた。
…受けているのは自分だが。
〔楓ちゃぁ〜ん‼︎ そろそろ頭に血が上ってきて痛いので下ろしてぇ〜‼︎〕
「いやです今度という今度は絶対許しません。」
〔今回ばかりは許してくれる気配がないっ⁉︎〕
しばらくこの状態が続き、尊桜がご飯を作って持ってきたところで変化が訪れた。
《楓様、ラー様、ご飯がでけたばい。どこで食べると?》
「おっ?作るのはやいね。まだ10分くらいしか経っていないのに。」
尊桜は胸を張って、
《好きなことなら飲み込みくらい、はようなるばい。それに主人ば待たしぇるんな使えるもんとして失格やけん。》
といってのける。
最初の出会いが最悪だったあの子がこんなに立派になるなんて…!親心から涙が出そうになるよぉ。まだ出逢って3日も経ってないけどね‼︎
「なら冷めないうちに食べてしまおうか。先輩のはここに置いておくので私が回収に来るまでに食べておいてくださいね。」
そういうとテーブルの方へ歩いて行った。
〔どうやって食べろっていうのよぉ〜‼︎〕という悲痛な声は無視して…。
夜になってようやく束縛を解かれたラーは心の底から反省していた…。たぶん。もし次したら更なる地獄を見せてやる…‼︎
一方のラーは解放された後すっかり冷めたご飯を食べていた。
〔うぅ…、ご飯が冷たいよぉ。楓ちゃんの心だけ
じゃなくご飯まで私に温もりを分けてくれないなんて…!〕
反省しているのかしていないのか、いまいちわからない反応を口ずさんでいた。
「温かいのが食べたいなら自分で温めてくださいね〜。」
《これじゃあどちらが上司なんかわからんなあ…。》
尊桜からそんなツッコミが聞こえたような気がしたが、空耳として放っておいた。
===
食事を終えた3人は中断していた作業を再開した。
「はぁ〜、誰かさんのせいでかなり遅れているので今日終わらなかった分はお願いしますね、誰かさん?」
〔うぅ、わかったよ...。やればいいんでしょやれば!〕
《やっぱり立場逆転しとーよね?それよりもこん世界とかどげんな?こん世界は生まれもった性がめちゃくちゃになっとーんごたーばい。》
「なるほど...混性世界ですか。いいんじゃないで
しょうか。最悪自称豊穣の女神を生贄に逃げればいいだけですし。」
〔生贄っ⁉︎ 見捨てられるのがわかっている世界なんていきたくないよ‼︎〕
さすがに扱いに耐えられなくなったようで反論してきた。しかし、
「へぇ〜、別にこの後どうなってもいいなら構わないんですけど、ね?」
そういいながら、私は直径1.5cmほどの比較的小さいものを取り出した。
それの意味がわかった先輩は一気に蒼ざめ、反論も態度も萎縮していった。
《そん印鑑は...『堕天の令印』って言うやつと?確か自分ん血ば媒体に如何なる相手も堕天しゃしぇるっていう効果やなあ?》
「そうだよぉ、しかもこの印は有用なことに有効時間を設定できるんだ!」
そこまで言われて初めて置かれている立場を理解したラー。もはや楓には一切逆らえないような気さえしていた。
先輩としての威厳が…。
《結局、次に行く世界はどこしゃぃするんと?》
「そうだね...、ほかに見ていたところ余りに悪い世界はさすがにないから今回は待機になるかなぁ。」
《わかった。ほな一旦部屋に戻るさかいご用があったら呼んどぉくれやす。》
「えっ、ちょっと待って。博多弁だけじゃなくて京都弁まで喋れたの⁉︎」
急な尊桜のキャラ変化に驚いていた。
《はかたべん?きょうとべん?ちょいそれがなんかはわからへんどすけど、幾つかの方言は話せますえ?》
「マジで⁉︎ 他って何が話せるの?」
《そだねぇ。うちっちの地域では基本みんなは5つくりゃー話せてたね。ただ物覚えのえ者になってぐるど数十になってぐるど聞いだ。あてん場合は10種類弱じゃしかね。》
「すごいすごいすごい!さっきの説明の間だけで4種類も使い分けてる‼︎ なんで早くいってくれなかったのさぁ〜。」
《事情が事情やったけんねぇ。それに隠しとったわけやなかばいし。》
こうして新たな発見はあったものの、また暫くの間はこの平凡な日常は続くことになった。
…てか話している途中に手で口元を隠す尊桜の仕草、かわゆす‼︎
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