知識で乗り切る異世界生活(？)

第12話 元凶は単純にして厄介な事が多い

次の討伐に向かう途中のラーと楓は毎度の如き雑談に耽っていた。

「それで、この調子であと9体も狩らなければならないと考えると、先行きが不安でしかないですよ...。」

率直な感想を言うと、ラーも同じことを思っていたらく、首を縦に振った。

〔めんどくさいし、とっとと終わらせる方法はないのかなぁ〜？〕

そう聞いて、ハッと思いていた。

「そうですよね！あぁ、なんでその方法を思いつかなかったんでしょうか‼︎」

〔急に、いつになくハイテンションになっててかなり引くレベルなんだけど…。〕

珍しく立場が逆になっていることにも気がつかず、嬉々として魔法式を弄る楓。

スルーされていたラーが眼に涙を溜め始めていた頃に、遂に魔法式の改造が完成した。

「完成しました！これが{コンダムネーション}の上位互換の魔法、その名も{ダンナッティオ}です‼︎　この魔法の定義はですね…。」

自信満々に新魔法を紹介するが、いまいちその凄さが伝わっていない気がする…。

〔それで、その魔法はどこがすごいの？〕

…やっぱり伝わっていなかった。

「えぇ⁉︎ ここまで説明してわかってもらえなかったんですか⁉︎」

〔いや、長すぎて全然何が言いたいのか伝わってこなかったよ。〕

流石に何かは伝わっていただろうと思っていた私は、かなりショックを受けた。

「マジですか...。それじゃあもう一回簡潔に説明しますね。要は相手の場所さえ分かっていれば、あの時と同じ魔法を遠距離からも放てるようになったんですよ！」

〔本当に⁉︎ もしそうなら、{サーチ}と併用したら無敵じゃんか‼︎〕

ようやく効力をわかってもらえたようでないよりだ。

「そうなんですよ！だから上位互換なんです。これで残りの9体も一斉に殲滅することができるようになりましたよ。」

〔なら、母株と子株もまとめて{サーチ}で探し出しちゃおうか。〕

「そうですね。面倒になってきましたし。」

割と軽いノリで作業を順調に進めていく。

－－－そしてこの日、世界からすべての植物型モンスターが消滅したのだった－－－

===

「いやぁ〜、久しぶりに一仕事した気分ですよぉ。」

〔マジで同時に殲滅させることができるとは思わなかったよ〜。禁術一歩手前レベルの破壊力だね。〕

「私もむやみやたらに発動できませんよ？実際、この魔法は相手の居場所を正確に把握しておく必要があります。それにこの魔法、想像以上に集中力が削られますしね。」

放ったばかりの今、かなりの疲労が蓄積されており、ラーの支えなしでは歩くこともままならない様子だった。

ここまでになるとは私にも驚きだ。

「ぐぬぬ...。まだまだ改良の余地がありますね。」

〔これ以上改良したら、本当に禁術になっちゃうよ？〕

「でも、多分バレないし、バレても大して問題にならないですよね？神域の神々ってかなりザラですし。」

私がいつぞやにラーが言っていたことを踏まえて指摘する。

〔うっ...。確かにそこまで厳しくないかも…。でも私の信条としてNOなんだよ‼︎ いくら相手が楓ちゃんでもそこは譲れない‼︎〕

「もう既にここにいること自体、譲歩してますよね？今更ではないですか？」

そこでかつて自分が説明したことを思い出したらしく、〔ぐぬぬ...〕と言いながら唇を噛んでいる。

ふっ、してやったり...‼︎

「とにかく終わったんですから、地下のトードさんに報告してあげましょうよ。」

〔そうだね、それじゃあ行くとしますか!〕

見事に殲滅した2人は一方はおんぶされたままの姿で、悠々と地下空間に通ずる穴へと向かうのだった。

＝＝＝

しばらく歩いて地下空間に戻った2人は、宿でシャワーを浴びた。その後、トードに事の成り行きを説明をしに行った。

「…というわけで、地上から植物型モンス

ターは地上から1匹残らず消滅しました。ですので安心して地上に出られますよ。」

終始呆け顔で聞いていたトードはようやく口を割った。

「それ本当かよ。...いや、ほんとらしいな。確かに、地上には1匹も見当たらないぜ。」

どうやらさっきのボゥーっとした時間はキノコ姿になったいたようだ。

「ええ。だから問題ありませんよね？あっ、地上に出るときは私たちが通ってきた穴を使ってもいいですよ。」

しかし、悩ましげな顔のトード。

「って言ってもなぁ、流石に今すぐってのは無理があるぜ。説明やら準備やらでなんだかんだ数年はかかるだろうな。」

なるほど、悩みの原因はそこか…。

原因はわかったものの、そこは神たち。そんな雑用を手伝うはずもなく...

「そうですか…。わかりました。では後は頑張ってくださいね。」

私の薄情さが流石に眼に余ったのかラーが...

〔うん、そうだね。帰ろっか。〕

一切反対するコトなく私に同意してきた。

こういうとき、本心があからさまに表に出てくるなぁ、この人は。まぁ、雑用を手伝うほど私も寛大じゃないけどね！

別れは最悪のシチュエーションだったが、こうしてまた新たな世界を救済した私たちは、帰ることを決めたのだった。のだが...

「そういえばよ、結局突然変異の母株が現れた原因は分かったのか？」

Oh...、すっかり忘れていた。でもまぁ、放っておいても適切に対処すれば大丈夫だから丸投げするか‼︎

「それはですね…」

〔この世界に流れている嶺脈にあるんだよ〜。〕

嶺脈という言葉にイマイチピンときていない様子だ。

「あ、嶺脈っていうのはですね、地上で特に魔力を受けて盛り上がった山脈上の地形のことです。」

私の解説を聞いてようやくなんとなくは理解できたらしいトードは私たちに曖昧な笑みを浮かべた。

「そのれいみゃくってのをどうすればいいんだ？」

「それについては簡単で、その地点に植物が生えすぎないように気をつけておくだけでいいんです。簡単でしょ？」

自分なりにお茶目だと思う仕草で軽く挑発する。

「それくらいなら俺たちにだってできらぁ。あんがとな、嬢ちゃんたち！」

屈託のない笑顔に見送られて宿に戻った。

「サボると、また地下生活になっちゃいますからきちんとしてくださいねー！」

振り返って大声で呼びかけると、トードはこちらからも分かるほど大きく首を縦に振った。

＝＝＝

出立する直前。

楓はトードに数粒のある種を渡した。

「これは？なんかの種か？」

突然渡されたトードは困惑していた。

「これはですね、『お茶』という品種の嗜好品です。私の好物です。是非地上に出たら、地面に植えてみてくださいね！

あっ、安心してください。これは暴走しないようにちゃんと調整してますから。」

無事お茶の布教を成功した私は、今度こそ神界に

帰った。

－－－その後、新たに神茶教が立ち上がっていたことには微塵も気付くことのない楓だった－－－

このくだり、どこかでも似たようなことがあった気が…。