第11話 初討伐はあっという間
母株がいたと思われる痕だけが残る荒原を、ただ茫然と眺めることしかできなかった。
「彼らが移動するなんて1回も聞いたことないんですけど…。」
〔この痕...。2、3日前に付いたっぽいね。あの移動速度なら、もうこの近くにはいないだろうねぇ。取り巻きの植物も根こそぎいないし。〕
昨日までの情報収集の意味がぁ‼︎
まさかこんなことになるとは思っていなかった2人は揃って頭を抱えていた。
しばらくして、ラーがあることを思い出す。
〔あっ!そういえば昨日、本に“移動型植物は新月の夜になると移動する”って書いてあったのを見たような...。〕
そのことを聞いて動きを止める楓。
「センパイ…?それは本当ですか…?」
〔う、うん。確か書いてあったと思う...。〕
私の質問に答えつつ、ジリジリと後ずさる
ラー。
「センパ〜イ!なんで逃げるんですかぁ〜?別に悪くなんてしませんよぅ?」
〔ごめん、ごめんなさい!だからゆるしてぇーーー‼︎〕
この後、荒原が元の大きさの5倍ほどになったのに気がついた2人は猛反省した。逆に言えば、荒原が5倍になるまで喧嘩が続いたことになる。
やばっ、自重しないと…。
===
この世界を救済しにきたはずなのに、環境破壊に貢献した神2人は最悪の雰囲気だった。
対象に見事に逃げられたとわかったからだ。
「はぁ〜。まさかこんなことになるなんて…。全く予想してませんでしたよ。」
〔私もだよぉ。まさか昨日が新月の日だなんて…。こんなことになるなら、あの情報のこともしっかり調べておくんだったぁ…。〕
頭の上にできた、顔と同じくらいの大きさはありそうなタンコブを必死に冷やしているラーから出た言葉は、説得力のあるものだった。
「結局振り出しに戻ったわけですけど、どうにかできないですかね?」
〔と言われてもねぇ。特には思いつかないしなぁ。〕
次の策を考えるが全く思い浮かばず、行き詰まる2人。
っとそこで、ふと楓が思いついた。
「そういえば、先輩は{サーチ}の魔法が使えましたよね?」
〔うん、使えるよぅ。けど、それがどうかしたの?〕
「実はですねぇ、こんなものをさっき見つけたんですよ〜!」
そういって私はあるものを取り出した。
〔これは…、植物のツタ?〕
「そうです!これは母株のツタなんですよ‼︎ そしてこのツタを使って{サーチ}の魔法にかければ、あら不思議!どこにいても対象がどこにいるか一瞬でわかるというものなんです‼︎
たまたまさっきの喧嘩の途中に母株の特徴と一致するものが落ちていたのを見つけたんで、拾っておいたんですよ!」
〔なるほど!それじゃあ早速始めるね!〕
{サーチ}にかけた結果、1つの反応が見つかった。
〔おっ、北東にしばらく行ったところに反応があるよ。多分あたりだね!〕
「それじゃあ殲滅戦に行きますか‼︎」
〔楓ちゃん...、だいぶ物騒になったね。〕
こうして、1発派手に暴れることになった。
いやもうすでにかなり暴れたのだが...。本人たちは気にしていないらしい。
===
植物の母株の1つはかなりの余裕を持っていた。子株が齎した情報にこそ驚かされたものの、どうやら襲撃者からは無事逃げ切れたらしかったからだ。
しかし、運命の日がやってきた。
その日の朝、新たに根ざした地に順応すべく、子株も動員して栄養を集めていた。
その途中、ある1株の生命反応が消えたのに気づいた。
別の子株たちに様子を見に行かせた。しかし、それらの生命反応も感じられなくなった。
そこで初めて危機感を感じたが既に遅かった。元凶らしき人物が2人、こちらに歩いているのが見えた…。
「キッ、キキィ…(これ、終わったかも…。)」
===
小さめの植物型モンスターを数匹駆除したところで、ようやく母株らしき大型植物モンスターが見えてきた。
てか、デカすぎない?軽く25mはありそうだ。しかも耐火とか無敵生物じゃん...。
「ギ、ギギュギュギャー!(侵入者め、今すぐ出て行かないなら容赦はしない!)」
植物が警告らしき奇声を上げる。
「なんていっているかわかります?」
〔私は植物じゃないよ?わかるわけないじゃんか。〕
「でも最近植物みたいに空気なこと、多かったじゃないですかー。」
〔グハッ〕
ラーはココロに659のダメージを受けた。
〔と、とにかく、さっさとこれを片付けちゃおうよ。その後に1度、私に対する認識について話し合わなければなるまい。〕
「それもそうですね。先に片付けちゃいましょうか。あと、認識の擦り合わせは謹んでお断りします。」
視線をバチバチと闘わせることに必死になり、ついモンスターを無視してしまった。
無視されたモンスターは怒ったらしく、こちらに向かってきた。しかし図体がデカくなっただけで、攻撃方法は雑魚株とあまり変わらない。
上手く攻撃を避けつつ、反撃の機会を窺う。
「それじゃあ、さっさと終わらせちゃいますね。」
そういうと懐に潜り込み、指先大の黒い粒をモンスターにつけた。
最初、攻撃されたと思っていたモンスターは不発だと思い込み嘲笑ってきた。しかし異変は直後に起きた。
{コンダムネーション}
楓は放った魔法名を呟いた。
その直後、
一瞬で植物体の数カ所に大穴が穿たれ、モンスターは絶命した。
〔えげつないね、その攻撃見た目全く運動系魔法には見えないんだよねぇ。まぁ、痛みを感じることなく死ねたのはせめてもの救いなのかなぁ?〕
「というかそもそも植物は痛みを感じるんですかね?」
雑談を終えて、残った死骸や子株を一斉に処分し、次の討伐に向かうのだった。
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