第10話 植物の情報収集は侮れない!
私(楓)がラーを踏んで登場というグダグダスタートを切ったものの、そのあとは特に問題もなく、植物に関する情報を集めることができた。
「いい感じに集まってきましたね。ここらへんで
いったん、集めた情報を整理しませんか?」
〔そうだねぇ。これ以上集めても聞きたい情報が出てくるか分かんないしね〜。じゃあ今日のところは宿に戻ろっか。〕
そうして宿に戻ろうとした時、
「…そういえばどこでしたっけ、私たちが泊まる予定の宿は?」
〔…〕
そぉっっっと視線を外し、一切合わせてくれない先輩。
「ちゃんと聞いておいて下さい、と言いました...よね?」
私が侮蔑の感情を込めた視線で尋ねると
〔---っ⁉︎〕
ラーは回れ右して全力ダッシュを始めた。しかしこうなることを予測していた私は落とし穴を設置しておいた。その穴に見事に嵌り落下していった。
===
「今度から気をつけてくださいよ。」
〔はい、すみません...。〕
穴から救出され、泥まみれのまま探しまわり、なんとか宿を見つけることができた。
しかし、予定よりもかなり時間が遅くなったので、ラーは楓から説教をくらっていた。
汚れを取ったあと、2人揃って食事を食べていた。
「この宿の料理、日本料理に似ているものが多くて思い出しますぅ。なつかしいなぁ〜。ちょっと寂しいかも…。」
〔もう今更なんだから、気にしない気にしない。それにしても美味しいなぁ、これ。なんていうの?〕
「えぇ〜っと、“ついとん”っていうらしいですよ。これも日本の“すいとん”に似ていてなつかしい
なぁ〜。」
なぜか異世界にいるはずなのに日本を感じて、思い出に浸っていた。
〔楓ちゃん?宿に戻ってきた目的忘れてない?〕
回顧していたせいで見事に忘れていたが、覚えていたフリをして答える。
「ももももちろん、覚えていますとも。ええ勿論!日本風料理を食べるためですよね?」
〔やっぱり覚えてないじゃん‼︎ もぅ〜、しっかりしてよね...。情報を整理するつもりだったんでしょ?〕
…そうだった。あまりにも日本が恋しすぎて忘れてしまっていた。
〔それじゃあ、それぞれ集めた情報を書き出して行こうか。〕
そうして書き出したことをリスト化してまとめる。
「どうやら聞いた話から、あの植物には火が効かないみたいですね。植物なのに不思議です…。はっ!この生態を利用すれば燃えない茶葉を作ることができるかも...。」
〔お〜い。楓ちゃん、今お茶なんて育てていないでしょうが。それより他に有力情報は…。あ、母株の場所はわかっていて地図があるらしいよぉ〜。〕
「それはかなり作業が楽になりそうですね。なら早速明日から討伐に行きますか?私としては文献を漁ってみるのもいいと思うんですけど。」
そういうと、
〔う〜む。〕
といって悩み始めるラー。
ラーが悩んでいる間、私は5杯目の“炊き込みごへん”という穀物を数種類混ぜて炊き込んだものを食べ終え、6杯目のおかわりをしようとしていた。ちょうどそのとき
〔うんっ。決めた!念のため明日も情報収集しよう‼︎ って、どんだけ食べるの、本当に楓ちゃん⁉︎〕
失礼な。私はちゃんと茶摘楓だ‼︎
「本物の楓です!失礼な駄女神ですね‼︎ それで明日は情報収集の続きなんですよね?」
私が確認のためにもう一度尋ねる。
〔うん。それでいいよ。前回とは違って相手とコミュニケーションを取る方法がないからね。確実に戦闘になる。その時に相手の弱点を知っているとかなり有利にことを運べるからね。というかちょっと待って!私のこと、駄女神って言わなかった⁉︎〕
「いってませんよロリ先輩。気のせいです。」
〔わーーーぁ!今度はロリって言ったぁー‼︎〕
こうして次に取る方法を決めて今日は就寝したの
だった。
ちなみに先輩はかなりメンタルに響いたらしく、ものすごく落ち込み、全身が白く灰のようになっていた。
私?もっちろん無視、むし。あんなの相手にしてたらキリないし...。
---
翌日、昨日の夜に決めた通り情報集めをするために図書館に来ていた。
「この図書館、地下にあるとは思えないほど大きい上、太陽の光が差し込んでいるのかと勘違いするほどに明るいですね。」
〔確かにねぇ。こんなに技術力があるのならどうしてあんな植物に打ち負けたんだろうね?〕
答えが返ってくるはずのない疑問をただ互いに言いあって、時間を潰していた。
どうやら昨日のSHOCKからは立ち直れたらしい。いやぁ、よかったよかった。まぁ、そんな状態にさせたのは私なんですけどね‼︎
そこに司書の1人が近づいてきた。その腕には何冊かの本を抱えていた。
「この青い背表紙の本が歴史書です。そしてこちらの橙色の背表紙の本が伝記になってます。
帰宅する前に、また声をかけてカウンターに返却してください。これらの本は外に出すことが禁止されているので後ろの本棚には戻さないでください。図書館なので私語も当然禁止です。絶対ですよ?」
司書の女性は口元に人差し指を持っていき、ウィンクをしてそう言った。
なんだこの司書さん...あざと可愛すぎる‼︎
ヤヴァ〜い、鼻血出そう…。
なんとか鼻血を堪えてることに成功し、達成感に浸っていた。
〔ほら、早く戻ってきて。早く進めるよぉ〕
先輩に言われて初めて我に戻った私は先ほどの、あざとい司書さんに持ってきてもらった本から新しい情報を得ようと読み漁る。
どうやら5分ほど悦に浸っていたらしい。急がないと…。
〔この情報も、その情報もほとんど全て聞いた話と一致するし、やっぱり時間の浪費だったかのか
なぁ〜?〕
流石に同じ情報ばかりでそろそろ疲れてきた。いったん休憩を挟もうとした時、ふとあるページの数行に目が止まった。
「あれ?この記述は...。えぇっ⁉︎」
〔どっ、どうしたの?楓ちゃん?〕
「この文章見てください、先輩!」
その文章を読み、私と同様驚く先輩。
〔これ、本当なのかな?もし本当だとしたら…〕
「はい、間違いなく元凶はあれですね。」
とんでもない発見を見つけることができた私たちは他の書籍をしばらく漁ったあと、本を返却して帰路についた。
…今度時間があったらもう一回あの司書さんを訪ねよう。うん、そうするべきだ!というかそうする運命なのだ、きっと‼︎ これも神様の啓示なのだろう。
…てか私が神だし。
〔あの記述は他の本には出てきていなかったから、眉唾だという可能性は捨て切れないけど、充分試す価値はあるね。〕
私の心境は清々しいくらい自然にスルーしてラーは話しかけてきた。
「とりあえず、10匹のうち3匹くらいは明日中に仕留めたいですよね。」
〔文献通りならあれを準備するだけで作れるんだけど...。〕
そういって手際良く材料の準備を進めていく。約15分経ってついに完成した薬はなぜか材料とは微塵も関係ないほぼ透明色になっていた。
「これ、使い勝手は途方もなく悪いですね。少しでもよそ見したらすぐ無くしてしまいそうですし…。」
〔以前着色しようとしたら薬の色と同時に効果も大幅に変わってもはや別の薬になったからねぇ。〕
とりあえず生命力G以上のえげつない植物への具体的な対策方法が立ってきたので、いよいよ明日、母株討伐に出向くことになったの
だった。
===
翌日になり、
「〔……えっ?〕」
…そこには荒原が広がっていた。
---ものの見事に10ヶ所全てから母株はおろか、子株すら1つも見つからなかった。どうやら逃げ出したようだ---
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