第9話 キノコはキノコ、俺は俺

どうやってか人の言葉を話すキノコのトードと森の中で出逢い、他の生き物が生きている場所に案内してもらっていた。


そのトードの話のなかで出てきた、母株について詳しく話を聞いてラーと話し合っていた。


「それで、トードの話についてどう思いますか?」


〔う〜ん、やっぱり人為的な面が多少なりともあると思うなぁ。正確なことは本体を見てみないことにはわからないけどね。〕


「じゃあ、とりあえず他の方から話を聞いた後、その母株を見に行ってみますか。」


そうして次に取る行動を決めていたとき、ようやく目的地に着いた。


「着いたぜ。ここがなんとか植物から見つかっていない場所の一つ、マアスの地だ。」


案内された場所はとても生き物が生きているとは思えないほどには廃れていた。


本当に生きることができるのか?こんな不衛生な場所で...。てか、臭いキッツ‼︎


〔本当にこんな場所にいるんですかぁ?とてもじゃないけどこんな場所で普段から生きているとは思えないですけど...。〕


「ちゃんといるって。俺たちは普段地中に暮らしていて匂いはほとんど感じない場所にいるんだよ。」


そう言われてようやく納得することができた私とラー。


「それでどうやって地下にいくことができるんですか?私たちは急いでいるんですけど…」


しかし、トードは答えない。

しばらくしてようやく口を開いたと思ったら


「地下に行く方法?そんなもんしらねぇよ。自分で探してくれや。」


おい、このキノコは喧嘩売ってんのか?今はそんなもの買っている場合じゃないってんのによぉ〜。


〔…それはどういう意味か説明してもらえますか?〕


「説明するも何も、俺らは生まれた時から地下にいるし、1度も地上に出たことなんてないからな。地上にどうやっていくのか俺たちも知らねーんだよ。」


…まさかの新情報が出てきた。


「じゃあどうやってこのキノコを地上に送り出したのですか?」


「それに関しては俺たち一族の秘術でな。あまり詳しくはできないんだわ。ただ言えるのはもともと地上にいたやつを使役して、五感を共有しているってことだけだぜ。」


「だいたい事情はわかりました。ここらへんの地下にあなた方はいるんですよね?」


「ああ、それは確かなことだ。」


大まかな場所がわかっているならあとは簡単だ。探索魔法で生体反応を探ればいいだけだからだ。


「それじゃあ…」


〔うんわかってるよぉ。{サーチ}〕


そしてカップヌードル1個が出来上がるくらいの時間が経ち、


〔見つけたっ!ここから北に30m行って、地下に72m潜ったところに生体反応と生活空間らしき場所があるよぉ。〕


「先輩ってこういう時だけ役に立ちますよね。ほんと、なんでこういう時だけしか役に立たないんですかね…?」


〔ねぇ、私に対してとてつもなく失礼だってわかっていっているのかな?かなっ⁉︎〕


先輩のツッコミは無視を決め込み、トードに話しかける。


「それじゃあ私たちは今から地下に潜ります。振動があるかもしれませんが 気にしないでくださいね。」


「おう!わかったぜ。それじゃあ地下でまた会おうぜ。」


そう告げて私たちは地下に潜る準備を始めた。


〔地下に潜るといっても、いったいどうやって潜るというんですぅ〜?私、流石に地中で息をすることは出来ませんよ?〕


「それは私も同じですよ。だから穴を掘るんですよ。」


〔でも、そんなことしたら植物どもが地下空間に入ってきちゃいますよ?〕


「フッフッフ…。心配無用ですよ、先輩。それについての対策案はあります。」


そういって対策を先輩に説明する。そして説明が終わる頃、ちょうど穴も掘り終えて、準備はいよいよ大詰めに入った。


「それじゃあ先輩。手筈通りお願いします。」


私が合図すると、


〔りょうか〜い!〕


そういって{イリュージョン}の魔法を発動させる先輩。


私の-博学-によってはじき出した演算結果によると、私たち神レベルがこの魔法を使うと権能の力も相まって全ての感覚を欺くことができるほどになるはずだ。


穴を偽装した私たちはゆっくりと穴の中に入っていった。


10分ほど降りただろうか。しばらく降りたと思った頃、ようやく明かりが見えてきた。


「おそらくあれが、地下集落なんでしょうね。」


〔そうだね。そしてあの集団があちこちにあるんでしょうね。〕


 その光を頼りに更に降りていくと、明かりも強くなっていき、ついに足場を踏むことができた。


降りて早々、1人の屈強な男が近づいてきた。身長は優に私たちの2、3倍はありそうだ。そして体格もかなりしっかりしている。まるでプロレスラーのようだ。


警戒心を露わにしていると、その男は話しかけてきた。


「おう、お前ら!本当に降りてくることができるとはな‼︎ 歓迎するぜ。」


聞き覚えのある声で、ようやくその男の正体がわかった。


「あなた…、トードですか?」


「そうだぜ。俺があのキノコを操っていた者だ。ただトードっていう名前はあの姿の時だけだから、トルって呼んでくれや。」


名前を分けるのって面倒ではないかと思ったが、話がややこしくなりそうだったのでこの話題は止めておくことにした。


「では、トルさん。早速で悪いのですがこの集落のお偉いさんと話がしたいのですが、案内していただけますか?」


私がそう聞くと、トルは


「いいぜ。ただ…その前にあんたが踏んでいるそちらの嬢ちゃんを助けた方がいいんじゃねえのか?」


そう指摘され始めて今まで先輩を踏んでいたことに気がついた私。


「えぇーーーーー‼︎ 先輩、いつからここにいたんですか⁉︎」


〔楓ちゃんが、トルと、交渉を始める、前ぐらい、からかな...。〕


「最初からじゃないですか!いってくださいよ‼︎」


「いや、そこの嬢ちゃん、ずっと訴えていたんだけどよ、あんたが気付いていなかっただけだぜ。」


「マジですかっ⁉︎」


---こうしてスタートダッシュはグダグダな切り方となった。---

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