第6話 戦略は常識を変える

ヒューマン側の混乱など露知らず、更なる打撃を与えようと作戦を仕上げていく楓とそれについて質問をするドラグ。その脇で様子をさらに眺めているラー及び幹部ら。


てか補佐するとはいったけど参謀たち放っておいて私が立案したらダメなんじゃ...?


…ま、いっか!


そして結界を張ってからおよそ2時間が経ったころ、ついに共同作戦が練り上がり、夕刻に決行することが決定した。


〔…で、どうなったんですかぁ〜、作戦の方は?私、わからなくて結構暇だったんですけどぉ〜。〕


こっちは頑張って考えていたのに暇してたって...。腹立つーーーっ!


とりあえずふっくらした頬を抓ってお仕置きをして、答えを返す。


「けっこうな良案ができましたよ。少なくともヒューマンが3回は絶望できるほどには、ね。」


〔ほのふひゅにのありゅはおやめりゃほうわいいひょ?いひゃ、ほんひょうだひょ?(その含みのある顔はかぁーなり怖いからやめた方がいいよ?いや、これは本当だよ?)〕


「はいはい。以後気を付けますー(棒読み)」


〔…へぇ、へっはいにはかっへはいよへ。ほんほにきほふへはほうがいいひょおもうへど...。(…ねぇ、絶対わかってないよね。ホントに気をつけた方がいいと思うんだけど...。)〕


こうしてつまらない会話をして時間を潰したり、作戦の具体的な説明をして時間が過ぎていった。


そしていよいよ作戦決行の時間が来た---



===



「さあ、皆のもの!よく聴け。今夜、我らはようやくヒューマン種に反撃をする時が来たのだ!恐れることは何もない。既に伝えた作戦及び作戦実行班に分かれ、奴らを一網打尽にするのだっ!」


戦士を自ら鼓舞して指揮を上げるグラム。


へぇ〜、なかなかやるじゃん!伊達にトップを務めているわけじゃないんだなぁ〜。


そして行動を開始した様子を眺めているとグラムが壇上から降りて来た。


「お疲れ様です、グラムさん。名演説でしたよ!」


〔うん!さすがだね。上に立つものの威厳を感じるものだったよぉ!〕


私たち女神にベタ褒めされ照れているグラム。


…いつもの様子と違い顔が赤くなっている様子。ギャップがあって可愛いなぁ、おい。


流石にこのツッコミは心に押し留めて、次の行動に移る。


「さぁ、時間は残されていません。直ぐに次の行動に移るべきでしょう。」


そういうと首を縦に振るラー&グラム。


「では、まずは作戦通りに行動を。もし作戦実行に支障が起きたなら直ちにパターンBに変更してください。」


パターンというフレーズを使う日が来るとは思わなかった!


そんな私の気持ちを一切察しない2人は


〔おっけ〜〕


「了解した。」


粛々と返事をして行動に移った。


---それじゃあ始めるとしよう。仕返し(八つ当たり)の始まりだ‼︎---



===



ヒューマン種同盟軍の第二小隊長ハイドロは目の前で繰り広げられている光景が未だ信じられずにいた。今まで短絡的で直線的でしかない攻撃ばかりしていた亜人どもが戦術を使い、自分の小隊を壊滅まで追い込んでいたからだ。


---すぐに帰還し報告しなければ!---


そう思い、転移魔法陣の用意を始めた。

しかし、発動しようとしたが結局発動することはなかった。


(このとき、各戦場では自然界から魔力補填するのを妨げる妨害魔法が張られていた。)


そしてとうとう亜種族連合の兵士に見つかってしまった。


この場所での戦いでは亜人族の圧勝という結果に終わった。



===



各地の戦況を水晶に付与されている遠隔地透視魔法で監視していた偵察チーム内では結界が張られたとき以上の衝撃が走っていた。


とにかく参謀らに入手した情報を報告しようと必死に走っていった。


15分後---


新たに齎された情報に、ヒューマン種同盟参謀の1人、ルサーは再び絶句していた。


亜人が連携した動きでヒューマン軍を圧倒しているという情報が飛び込んできたからだ。


報告に上がってくる情報ほぼ全てが全滅、というものだったため何か裏があると考えていた。そしてその原因が亜人族側にあることも…。


しかし1番の驚きはそんなことではなかった。今までヒューマン種が1番強い種族だと思っていたが、亜人種が連携するとヒューマンすらも凌駕するということに気付いてしまったからだ。


そのことに戦慄を覚えながら臨時の参謀戦略会議に参加していくのだった---



===



既にヒューマン側に混乱が広がっているとは全く思っていない楓は更なる追撃を与えるために作戦通り動き出していた。


「それでは15分後に作戦を決行します。各々配置は完了してますか?」


水晶に通信魔法を付与した携帯版通信機を各隊長に持たせて連絡が取れるようにしていた。


「こちら伊号隊。エルフ領に到着しました。今のところヒューマン側に動きはありません。作戦通りです。」


「阿号隊です。ドワーフ領も問題ありません。」


連絡が全ての隊から届き、作戦通りにことが運んでいてひとまず安心した。


〔今のところ上手くいっているようだねぇ〜。このまま上手くいけばいいんだけどねぇ。〕


おい、フラグを立てるんじゃない駄女神!

この前もフラグ立てたよな‼︎


心の中で口をこぼしていると、その時


「こ、こちら烏号隊!ヒューマンが進軍して来ました‼︎ これからパターンBに移ります!」


ほら来た、フラグを回収しやがった…。


「はぁ〜。しょうがないです。烏号隊は直ちに迎撃を。そのほかの隊も準備が出来次第、順次作戦を開始してください。ここが正念場ですよ!気合を入れてください‼︎」


こうして最終決戦(自称)が始まった...。


【(ピーンポーンパーンポーン)戦闘シーンは全て書いていると書くのも読むのも面倒なので割愛します】



===



各地から多種族連合勝利の一報がどんどん入ってくる中、私とラーは再びあの人に会いにいった。


「やはり…貴方のせいでしたか。結界といい、亜人どものとっていた戦略といい...。まんまとやられましたなぁ、これは。」


そう、パースだ。


「そう思うなら今すぐにでも和平交渉を亜人たちとして戦争をやめてください。」


しかしここまで追い詰められてもなおすぐにYesを返さない。


「一体何がそこまであなた方を...いえ、あなたを駆り立てているのですか?」


私はパースに尋ねた。しかし思いがけない方向から答えが返って来た。


〔それはねぇ、この人がだということが関係していると思うんだよねぇ。〕


わずかに眉が釣り上がったのがわかった。


〔…どうやら〕


「当たり、みたいですね」


ここまできて、とうとう観念したような表情をしたパース。


「神というのは本当に万能ですな。そこまで見透かされるとは…。いいでしょう、私たちの負けを認めましょう。和平にも応じます。」



---こうしてようやく数百年に及んだ

戦争に終息の兆しが見えたのだった---


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