第5話 神様の力はやはりチート

「…というわけで、交渉は決裂。私たちは独自に行動を始めることになります。」


提案を拒否されたことをドラグに伝えにきたラー&楓。


「具体的にはどんな行動をとるんです?」


やはりそうなったか、という顔で話を聞いていたドラグが尋ねてきた。


「具体的、ですか…。そうですね。私たちは今まで中立を保ってこの惑星の消滅の危機から救済しようとしていましたが、その立場を崩すだけです。簡単に言えばあなた方にしばらくは協力しましょう。」


そこで今まで暗かった顔が明るくなる多種族連合の幹部たち。


「ただし!もしそちらもヒューマン種たちと同じだとこちらが判断した場合は速やかに別行動に移ることをお忘れないように。」


こうして一時的に同盟関係になった私たちはこれからとる行動についてさらに煮詰めていった。


ちなみに先輩は終始空気扱いで、食器棚の横で静かに座っていたのだった。ちょっとかわいそうなことしたかなぁ…。



===



翌日、激しい爆裂音で目を覚ました。


「何事ですかっ⁉︎」


「どうやらヒューマン種が大規模侵攻を始めたようです。ここ以外にも各亜人族の本拠地が一様に爆撃されているようです…。」


昨日机にあった地図の地域全てを攻撃しているようだった。


〔おはよ〜う、何かあったん?〕


轟音が鳴り響いていたのに今の今まで寝ていた先輩に若干引きつつも現在の状況を伝えた。すると、


〔う〜ん、なるほどねぇ。でも焦る必要ある?楓ちゃんの能力を使ったら一瞬で終わるでしょ?〕


「…あっ!能力のこと忘れてた‼︎」


先輩にジト目で見られて恥ずかしくなり顔を背けた。


「じゃあ早速爆撃を受けている全ての地区に結界を張って当面を凌ぎましょうか。」


そういって-運動操作-の能力を使って結界を張った。


「あ!結界には絶対触れないでくださいね。少しでも掠ると一気に消滅しちゃいますから。」


そう、この結界は膜状の零運動エリアを広げて作られていたのだ。


〔とても中にいるものを守る結界としては有用だけど、敵からしたらえげつない殲滅級破壊兵器でしかないよねぇ。〕


ふざけたことを言ったお仕置きとして顔に一瞬その結界を張ってやった。


ラーは、むぎゃぁーーー‼︎って言いながら転げ回っている。


いい気味だ!


「では、攻撃の心配はしばらくはないので次の一手を考えましょうか。このままではまだ和平の場にあのアホ共を引きずり出せないので。」


そこでドラグが


「どうしてです?これほどの力がおありなのですから奴らも出てこざるを得ないと思うのですが?」


私は、


「それはですね。私たちが結ぶだけでは意味がないからです。」


と先に結論をいった。そしてその理由を説明しようとすると…


〔なんでですかぁ〜?私たちの目的は戦争を止めることだけなのですよぉ〜?」


今説明しようとしてたところだよ‼︎


というわけで再びの顔面結界の刑に処した。悶絶している先輩のことは放置して説明を再開した。


「ケプケプ。えーっとですね。


あの人たちはあなた方多種族連合を憎んでいるきらいがあります。ですので私たちが強引に和平を結ばせても差別等はこれからも続くでしょう。挙げ句の果てにはまた戦争が起こるかもしれません。


だからこそあなた方と結ばせる必要があるのです。」


この説明で納得した様子のドラグと先輩。


...まぁ、本音を言うとまた同じ世界に来るっていう二度手間を避けたかっただけなんです!ドヤァ


そんな私の心境も知らず話を進めていく。


「では我らの力が侮れないということを証明できれば良いわけですが…。女神様ほど見せつける方法は残念ながらないのですが。」


心配そうに、申し訳なさそうに話す姿を見ていると逆に普段の姿が気になってきた。


「別に力だけが能力を示す方法ではないですよ?」


〔そうだねぇ〜。戦略を立てて相手を巧妙にやり込めていったらいいんじゃないかなぁ〜?〕


しかし、なおもう〜む、と唸っている。


「我ら亜人は基本的に戦術を立てて戦うというのが苦手でして...。どうもどんな策が有効なのかイメージできないのです。」


〔大丈夫ですよぉ〜。私たちもアドバイス、しますからぁ〜!〕


「そうですよ。というわけで早速立てていきましょう!」


こうして反撃の狼煙が上がるのだった---



===



ちょうど楓たちが第2打撃を加えようと画策していた頃---


ヒューマン種同盟のパースら参謀は齎された情報に驚愕していた。


「それは本当かっ⁉︎」


「は、はい!謎の結界魔法が発動した後一切爆撃が通らなくなりました。しかも全く同波長の魔力の結界で全ての爆撃地が覆われています‼︎ 」


「馬鹿な...。そんなことがあり得るのか⁉︎」


困惑する参謀らに更に非情な情報が飛び込む。


「すみません、まだ報告しなければならないことがあります!」


一瞬で静かになる幕内。


「その結界は特殊な効果があるようで触れたものすべてが一瞬で塵化してしまいます‼︎」


これらの齎された情報により絶句するしかないヒューマン族同盟の参謀。そのときパースが重い口を開く。


「ほぼ間違いなく、この前訪れて来た女神共の仕業だろう。焦るな。いずれ結界が消える時が来る。そのときにすぐ動けるよう監視と編隊をしておけ。」


冷静な様子を見て落ち着きを取り戻し、即座に命令を遂行していく。


(一体どう動くか全く予想がつかん。敵に回すべきでなかったか...?)



---こうしてますます戦火が広まる気配が強くなってきたのだった---

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