第4話 交渉って大抵成功しねいよね

ヒューマン側の本陣を訪れようとした矢先、攻撃されるというなかなか過激な歓迎のもてなしを受けたラーと楓。そんな2柱はようやくヒューマン側の将軍に会うことができるようになり、若干浮かれていた。


〔いやぁ〜。最初こそはイラッと来たけど、あれが素というわけではないことがよくわかったねぇ〜。平和そのものだしねぇ〜。〕


「そうですね〜」


いつもの通り適当に相づちを打っていたがふと先ほどの言葉に含みがあることに気がついた。


ってどういうことです?未来予知か何かでこれから起きることを知っているんですか?」


〔だって〜。最初あんなに敵対的だったんだよ?それがたかだかこの程度で終わるはずないじゃない!〕


「た、確かに…」


珍しく先輩に言いくるめられる私。


「私とした事が…。先輩に言いくるめられるなんて…‼︎」


〔ひどい⁉︎ 一応あなたの先輩なんだからねっ‼︎〕


「そう思うなら先輩らしく振る舞ってくださいよ...。」


〔まっ、それは置いておいて。これからどうするつもりなの?このままじゃほぼ確実にこの世界救済できないけど?〕


先輩の言うことは正しい。このままヒューマン側の言い分を聞いたところで平行線に終わることぐらい容易に想像できる。2柱で話し合い、結果一石先に投じることになった。



===



そして面会の時間がやってきた。地下にあるためかなり薄暗い。唯一私たちを照らすのは、各所に設置されている松明たいまつや照明石と呼ばれる光る石だった。


よくこんな暗い場所にずっといられるなぁ〜などと思っているとやがてある部屋の前に到着した。案内の人が、


「この部屋の先に我らヒューマン軍の将軍がいます。」


とだけ言ってさっさとどこかに行ってしまった。


〔何か一悶着ある予感しかしないんですけど。帰っていいですかねぇ?〕


「帰らないでくださいよ...、先輩。死ぬときは一緒ですよ!」


〔なんでそんな爽やかな笑顔でさらっと怖いこと言うの⁉︎ 大丈夫だよ〜。私たち神には死という概念は存在しないし!〕


「それ…なんの慰めになってませんよ。まぁ、ここまで来ちゃいましたしさっさと行きましょうよ。」


そして扉を開ける!その先にはなんと---


1人の老人が静かに座っていただけだった。



===



その老人は老人と言うほど歳をとっているようには感じなかった。しかし部屋の暗さが相まってシワがより深く見え、そのことがより一層老化を促進しているようだった。


なんだか老化促進剤みたい(笑)。そのとき見た目以上にしっかりとした低い声で、


「よくいらした女神方。どうぞお座へ。」


と老人は話した。


私は意外に感じつつ、その声に従ってとっとと座った。


着いた席の前には多くの地図やコンパス、鉛筆が雑多に置かれていた。ほとんど見覚えのない土地ばかりの周辺地図みたいだ。


しかしそれらの地図が表していた地点は…


「おやぁ〜、これらの地図、み〜んな多種族連合に参加している種族らの各本拠地の周辺図じゃないですかぁ〜。どうしたんですか、こんなに?上空から爆撃でもするんですかぁ〜?」


そう、各種族が住んでいる土地の中枢地区ばかりだったのだ。


「これ全てを爆撃したならとんでもないことになりますね。どうしてこんな物騒な地図を置いているのか教えて戴けるとありがたいのですが?あと先輩はどうしてこんなことに気がついたのですか?」


〔それを説明する前にまず自己紹介しないといけないよ、楓ちゃん。相手に失礼だからね?〕


「うぐッ⁉︎ まさか先輩に正しいことを言われることになるなんて…。私とした事がっ‼︎」


〔それは私に失礼だとは思わないのっ⁉︎〕


先輩のツッコミは華麗にスルーして自己紹介を始める。


「私は茶摘楓です。叡智の女神です。一応こっちのの補佐をしています。」


〔一応⁉︎こっちのっ⁉︎ ま、まあひとまず置いておいて…。は〜い!豊穣の女神、ラーだよ!〕


「これは懇切丁寧にどうも。ワシはパース・デストという。ヒューマン種同盟の盟主をしているものだ。」


自己紹介も終わり早速本題に入る。


「それで早速ですが、教えてもらえますか?これらの理由。私たちもなるべく穏便に済ませたいのですが。」


〔楓ちゃん、急ぎすぎじゃn...〕


「ちょっとうるさいから黙ってて。」


そう言われてシュンとするラー。


私より年上なのに童顔だし、性格幼稚園児だし...。ロリみたい。よし、これからはロリ神と呼ぼう!


〔…なんか失礼なこと考えてない?〕


「気のせいですよ。」


おっと、勘だけは鋭いロリ神なのでこれからはもっとポーカーフェイスを意識しなきゃ...。


「それでどうなんですか、パースさん?」


私たちのくだらない会話劇を待っていたらしいパースは徐ろに、だがはっきりと話し始める。


「察しの通り多種族連合に大打撃を与える為の戦略だが?何か問題でもあるのかい、お嬢さん方?」


開き直ったのかかなり強気に聞き返してくるパース。


「勿論、問題があr...」


〔いえ、特に問題はないですよぉ〜。〕


…え?


「ちょっ、先輩⁉︎」


〔いやぁ、本当に問題ないからね。ただ、問題はそこで使う兵器の方だよ。〕


こういう時だけ冴え渡っていて無駄に格好いい先輩。なんか悔しい…。


「ほうぅ、では問題とは?」


〔いいでしょう!教えましょう、パースさん!


キーワードは土地の回復力です。今まで大量に使われてきた兵器や魔法によって土地が疲弊し、この惑星の活性エネルギーはどんどん奪われています。ご存じの通り今や地表はボロボロです。これらが元の姿になる方法は残念ですがもう残されていません。


そこまでした元凶は…もうわかりますね?〕


「ワシらの戦争…というわけですな。」


〔ご名答ぅ〜!というわけで今すぐやめてくださいな。ちなみに多種族連合側は交渉なら始めてもいいと言っていましたよぉ〜?〕


しばらく考え込んで(おそらくフリだろうが)、


「断りますな。」


…予想通りの答えが返ってきた。



---更なる波乱が渦巻いているのを感じさせて---

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