第4話【証言】
「無くなったのは三日前。私と息子の
「
「夫は今一人でインドに出張しています。大きな案件が入ったとかで長引くと聞いたので、いい機会だと実家に戻ってきたんです」
「なるほど。佳代子さんがネックレスを最後に見たのはいつですか?」
「母じゃなくて私が、ですか? 空港まで迎えに来てくれた時に着けていたのを覚えています。外したのはいつだったかしら……」
私の問いかけに一瞬どきっとしたように見えました。私のきのせいでしょうか。
「なるほど。奥さんはよくそのネックレスをつけていたのでしょうか?」
「そうですね……ほぼ毎日つけていたかもしれません。母はネックレスをあれしか持っていないんですよ? 他のアクセサリーは色々持っているのに」
それはすごいですね。真珠は冠婚葬祭なんにでも使えると言いますが、それだけというのはあまり聞いたことがありません。
「それで、こんなことを聞くとあれですが、ネックレスを盗みそうな人に心当たりはありませんか?」
「え……そうですねぇ。家政婦さんとか怪しんじゃないですか? 私が嫁いでから入ってきた人なのでよく人柄知りませんし。家族が盗む意味も分からないですし」
なるほど……消去法ですね。仲の良さそうな家族ですから、わざわざ奥さんの悲しむことをする意味が無いと。それは一理ありそうです。
「分かりました。ありがとうございます」
「いえ。見つけられないと思いますが、せいぜい頑張ってくださいね」
あれ? なんか気にかかる言い方ですね。あ! もしかして私、胡散臭い人だと思われていますかね。
やだなぁ。もぅ。私だって好き好んでこんな人様のおうちに上がって探偵じみたことをしたいわけじゃないんですよ!
「おいたん。こにちわ!」
まーくんが満面の笑みで話しかけてきました。この年頃の子供は可愛いですねぇ。目がぱっちりしています。将来イケメンさんになりそうですね。
「こんにちは」
さすがにおじさんじゃなくておにーさんだよ、という歳でもなくなったのが辛いですね。
挨拶したあとは自分の世界に戻って行ったのか、まーくんは床に落ちてる何かを拾っては部屋の隅にトコトコと走っていきます。何しているんでしょ?
「ねぇ。まさるくん。何をしているの?」
「ぷるーむたんのうんち、はこんでいうの!」
ああ。なるほど。床に落ちてるプルームちゃんの落し物を拾ってはせっせとトイレに戻しているんですね。幸いうさぎのものはコロコロと乾いていますから、手は汚れないですし良かったです。
「ねぇ。おいたん。ぷるーむたんはいちわってかぞえるんだお!」
「お! よく知っているね。昔鳥しか食べれなかった僧侶たちが、うさぎは鳥だって言ったのが理由だね」
「うん! ぷるーむたんはとりなの! だからね、しおいうんちもするんだお!」
「なんだ、皆ここに居たのか。探したよ。ああ
あ。
何が出るのかな? お寿司かな? あ! いえいえ。そんな意地汚いことなんか考えてないですよ。
「すいません大塚社長。有難くごちそうになります。幸いネックレスの行方も分かったようなので、それまでには見つけておきますね」
「なんだって? 佐久間くん。本当かね! さすが渡部さん絶賛するだけある。答えを聞くのを楽しみにしているよ!」
なんだか盛り上がらせてしまったみたいですね。どうしましょう。これでもし間違っていたら……いえいえ、ひとまず家政婦さんを呼んで早く在処を聞き出さなくては。
私は家政婦さんを探して声をかけます。家政婦さんはびっくりした顔を見せていますが、大事なことなのでちゃんと聞かなくては……。
「すいません。ちょっとお聞きしたいことがあるんですが、今よろしいでしょうか?」
「はい。なんでしょう?」
「三日前の…………ですがまだ捨ててないですか?」
「え!? あの……それはどういう意味でそんな質問を?」
「それはひとまず一緒に中を確認したら分かると思うんです。どうですか? まだ捨てずにこの家にありますか?」
「すいません……実は昨日収集の日だったのですが、うっかり捨てるのを忘れてしまっていて。まだ家の裏の物置に置いてあります」
なんという強運! 危なかったですね。本当なら既に証拠は焼却炉の中。もう取り戻すのは不可能でした。
困惑した家政婦さんを急かして、私は目当てものがある裏の物置まで向かいました。
ところで……会長はどこで何をしているんですかね?
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