味付け海苔はデザートです

 好きということに、理由は無いと人は言う。でもそれは理由が無いというより、分からないだけなのではと私は思うのだ。

 私には、子供の頃からずっと好きな食べ物がある。それは味付け海苔だ。

 今もそうなのだが、私は幼い頃から、食べ物の好き嫌いがとても多かった。そのため、盲学校の幼稚部の頃は、給食のおかずがほとんど食べられなかった。だが味付け海苔をかけたご飯なら、綺麗に平らげることができた

 なんなら3食全て白いご飯と味付け海苔さえあれば、それだけでもう充分と言っても過言ではないぐらい、私は今でも味付け海苔が好きだ。

 今から約4年ほど前、すでに同棲を始めていた元相方を、初めて母に紹介した時、毎日の食事の準備は自分がやっている(ちなみに片付けは私が担当していた)と話す彼に対して、

「この子好き嫌い多いでしょう?そういう時は味付け海苔食べさせておけばいいでね」

と言った母の言葉に、彼はたいへん衝撃を受けたと言う。

 そんなわけで、実家を出ていた間も、食卓には常に味付け海苔がストックしてある状態だった。

 そんな味付け海苔、ご飯にかけて食べるのももちろん好きなのだが、私はそれよりも、味付け海苔だけを食べる方が好きだ。それはなぜなのかは自分でも良く分からない。

 そして味付け海苔は、おかずとして食べるのももちろん良いのだけれど、私は食事の最後に食べるのが1番好きだ。

 そう、味付け海苔は私に取って、ご飯のお供でも、おかずでもなく、デザートなのだ。

 そんな私に元相方はよくこう言っていた。

「そんなに味付け海苔が好きなら、「味付け海苔はデザートです。」っていうタイトルの本出したら?」

というわけで、もしこの連載が書籍化されることになったら、そのタイトルはぜひ「味付け海苔はデザートです。」にしたいなあと、密に考えている。

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