下ネタとデリカシーの定義
そう言えば、今日友人から聞いた話、「チェリー」と言う名前のラブホがあるらしい。
チェリー、確かにかわいらしい名前だが、ラブホにつけるのはどうなのだろうか。
「チェリーがチェリーに行きやがった」とか、からかいのねたにされないだろうか。(2020年11月三日の私のツイートより)
そんなツイートをしたところ、ペイング質問箱の方に、
「ラブホについてツイートされてましたが、羽田さんは、ラブホに行ったことがあるのですか?」
と言うような質問が届いた。
ペイング質問箱は、匿名でツイッターのフォロワーに質問が送れるので、誰が送った質問なのか分からない。
そう言うこともあって、私はその質問に、ちょっと不快な気持ちを覚えた。
それでも、
「今よりもうちょっと若かれし頃に行ったことがあります。てかデリカシーの無い質問はやめていただけますか?」
と、ラブホに行ったことがあることを、正直に認めつつも、そのままの苛立ちも込めて返した。
確かに、この日久しぶりにドライブに行った友人と、1番盛り上がった話を、のりと勢いのままにツイートしてしまった私にも落ち度があると思ったからだ。
すると、同じ人物だと思われる人から、こんな質問が届いた。
「羽田さんの中での、デリカシーの定義を教えていただけますか?」
デリカシーの定義・・・。そんなの定義づけと言う問題ではないだろう。
それまで抱いていた不快な気持ちが、この時確かな怒りへと変わるのがわかった。
「定義と言うか、相手の立場に立って、創造したり、考えたりすれば分かることなのでは?」
と、私はその質問を投げてきた主に、思ったことを、感情のままに答えてしまっていた。
私は全盲女子だが、下ネタにはとても興味がある。エッチな物やことも、人並に好きだ。
その証拠に、自分の書く詩や小説のテーマにも、性を取り入れることは多い。
全盲女子が性について書くと言うのは、あまりやっている人が居ないから、これは物書きとして受けるかもしれないと、あえて狙っているところも少しあるが、自分が書きたいから書いていると言うのが本心だ。
ネットで活動するようになり、このことは賞賛されることもあるけれど、その一方で、時に読者に不快な思いをさせてしまうことも少なくなかった。
実際エブリスタで活動していた頃、そこで連載していたエッセイや小説を読んだと思われる人から、
「全盲のくせに、セックスが好きだなんて気持ち悪いんだよ」
と言うようなコメントが付いたことがあった。
さきほども書いたように、全盲の自分が、あえて性について書くのは、狙ってやっていることでもあるので、批判的な反応が来ることも、それなりに覚悟はしていた。しかし、実際に言葉でそう言われちゃうと、正直とてもへこむ。それと同時に、
「障碍者はセックスしちゃいけないのかよ!障碍者が性について考えちゃいけないのかよ!」
と、怒りがこみ上げてきて、いたたまれなくなる。
と言うような自分が、物書き羽田光夏である自分だとするなら、本名の自分は、下ネタなんて、とてもじゃないけど言えないと言う人見知りな面もある。
そのため、ツイキャスやスカイプなどで、何回かお話させていただいた人が、私のツイートや、投稿サイトで書き散らかしている文章を読んだ後、
「羽田さん下ネタいけるなんて意外ですねえ」
と言うようなことをチャットで送ってきた時には、
「私は下ネタを言ってはいけなかったのだろうか」
と、かなり複雑な気分だった。
そう言えば、少し前にnoteで公開した新作詩「見えない蜘蛛の巣」を読んでくれたフォロワーさんから、詩の中の1節、
「セッションもセックスも、そこに相手が居なくたって成立する」
と言うフレーズに対して、
「いきなりのセックスと言う言葉に、思わずどきっとしてしまいました」
と言うような感想をdmでいただいたことがあった。
自信過剰かもしれないのは充分分かっている。きっとdmをくれたフォロワーさんも、冒頭のペイングでラブホの質問をしてきた人も、全盲、あるいは障碍者は、性についてあまり知らないだろう。全盲、あるいは障碍者には、性なんて関係ないことだろう。そう思っている人が多いからこそ、詩やツイートの中で、「ラブホ」や「セックス」と言った性的な言葉を、何の気なしに使う私に、過剰なほどに驚くのかもしれない。そう思うと、何とも言えない感情がこみ上げてくるのだ。
物書き羽田光夏は、良い意味で下ネタが好きだ。だからエッチなことも、ごく普通のことのように書く。でも、ふと本名の自分になった時、羽田光夏である自分がしていることに、ものすごく自己嫌悪感を覚えてしまうのも事実だ。
本名の自分と、物書きの羽田光夏である自分は、同じ自分のはずなのに、そのことを、まだ自分の中で、うまく消化し切れていないのかもしれない。
「羽田さんの中での、デリカシーの定義を教えていただけますか?」
この質問を投げかけられたことで、私はその事実に、改めて気づかされたのだった。
書くことに本格的に専念しようと動き始めつつある今だからこそ、このことは、一生向き合わなければならない案件かもしれない。
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