正露丸のテレビcmに思う

 初夏から夏にかけての時期、テレビやラジオをつけていると、正露丸のcmをよく聞くような気がする。この時期は、食中毒や、冷房で冷えたりして、お腹の調子を崩す人が多いからだろうか。

 つい先日、正露丸のテレビcmを聞いていて、ふと思うことがあった。

♪いろんな下痢に、いろんな下痢に、正露丸♪

そのテレビcmの最後で、正露丸と言えば、お馴染みのあのラッパの旋律に乗せて、良い意味で力の抜けた女性のかわいらしい声で、そう歌われている。私はこの「いろんな下痢」と言う言葉が、妙に引っかかったのだ。

 いろんな下痢とはいったい何なのか。食あたりや水あたり、感染性胃腸炎などウイルスから来る下痢や、緊張やストレスなどの精神的な要因から来る下痢だってある。

 私は過敏性腸症候群を患っているため、お腹がものすごく弱い。

 仕事に出ていた頃は、バスや電車での通勤中や、職場に付くと、しょっちゅうお腹の調子を崩していた。そのため早退や欠席することも多く、職場の人たちには、かなり迷惑をかけていたかもしれない。

 そのうちに、バスや電車に乗ったら、あるいは職場に行ったら、またお腹が痛くなるのではないかと、不安に襲われるようになった。最終的に仕事に行けなくなってやめたのも、その不安感が強くなって、外に出られなくなったからだった。

 今は薬を服用しているので、あの当時よりも症状はだいぶ落ち着いてきているけれど、それでも今だに1泊二日以上の急な長時間の外出ができない。出先でお腹が痛くならないかと不安になるからだ。

 もし出先で急にお腹が痛くなっても、全盲の私には、行ったことのないような場所で、トイレを探してこもることができないので、なおのこと不安が募るのだ。

 何が言いたいかって、とにかく下痢は本当にたいへんなのだ。トイレに何回も駆け込まなければならないし、お腹はもちろん、お尻も痛くなるし、最悪の場合、トイレや下着を汚してしまうことだってあるのだ。

 それを下痢止めである正露丸のcmともあろう物が、良い意味で力の抜けた女性のかわいらしい声で歌うのは良いとしても、「いろんな下痢」と言う簡単な言葉で、軽々しくさらっと片付けないでほしいと思うのだ。

 もしかしたらこのcm製作者は、下痢の苦しみや辛さを分かっていないのではないかと、薄っすらと疑念を抱きたくなるぐらいに、この「いろんな下痢」と言う言葉が、妙に引っかかるのだった。


 それと最近の正露丸のテレビcmで、もう一つ気づいたことがあった。それは正露丸と言えば、お馴染みのあのラッパの音が無い。

 cmの最初に、一瞬それっぽいラッパの音が流れるだけで、例の旋律は、さきほどから何度も触れてきている♪いろんな下痢に♪のサウンドロゴに取って変わられていたのだ。

 これは非常に残念なことである。

 あの音源も古いから、新しい物を作ろうと言うことになったのかもしれない。それも充分わかる。でもなあって感じ。

 世の中どんどんいろんな物が、新しくなっていっているなあとつくづく感じた10数秒間であった。

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