最高にかっこいい死に方

 先日nhkで放送された、フジファブリックの志村さんのドキュメンタリー番組を見た。

 志村さんが無くなってから、今年で10年になるそうだ。

 そっかー、あれからもう10年になるのかー。これまでにもたくさんの著名人の不法に触れてきたけれど、志村さん以上の驚きとショックは、今のところ無い。

 29歳の若さでこの世を去った志村さん。これを書いている現在の私は32歳。志村さんの年齢を、自分はどんどん追い越しているんだなあと思うと、非常に感慨深い。

 ちなみにフジファブリックについては、エブリスタでアップしていた音楽エッセイ「羽田光夏の♪rock with Me!♪」の「12月24日はクリスマスイブですが」の中でも書いているので、もしよかったらそちらの方もぜひ読んでいただけたらありがたい。

 この番組を見て改めて思ったのが、まず志村さんは故郷をものすごく愛していた人だったんだなあと言うこと。

 志村さんの故郷は、山梨県富士吉田市。

フジファブリックの名曲の一つ「茜色の夕日」は、志村さんが東京に出てきて1番最初に作った曲だったことを、この番組で初めて知った。それまで志村さんが作ってきた曲とは全く違う感じの楽曲に、当時のフジファブリックのメンバーたちも、かなり驚いたそうだ。あの曲の抒情的な切なさは、きっと故郷の富士吉田市への愛だったのかもしれないと、この話を聞いて、改めてそんなことを思ってしまった。

 ちなみにこの曲はその後、志村さんの誕生日と命日の日に、富士吉田市の夕方6時のチャイムとして流れるようになったそうだ。夕方の6時に、こんなにも抒情的で、切ないメロディーが流れてきたら、良い意味で物悲しくなって、涙もろい私はついつい泣いてしまいそうである。

 そこでふと考えたのは、私は自分の故郷を本当に愛しているのだろうかと言うことだ。

 私の故郷は静岡県浜松市。

これまでにも、京都、埼玉、群馬と、故郷を何度か離れたことはあったけれど、いわゆる地元愛や郷土愛と言うような物は、それほど感じてこなかったように思う。

 そりゃあ確かに浜松には、海も、山も、川もあって、地元に至っては、遊園地や、動物園や、寺まである。それにウナギや餃子だって美味しい。

浜松は、いろんな人が楽しめる場所や物が全部揃っている町だなあって思う。

 だけどそんな浜松を、志村さんのように愛おしく思っているかと言われると、べつにそうでもない。むしろできれば浜松にはあまり居たくないし、今後またどこかの町に住むことになったとしても、なるべくなら浜松には戻ってきたくないと思っている。それは浜松の町が嫌いなのではなく、そこで関わってきた人間たちといろいろあってのことで、つまりはちょう個人的な理由からそう思っているだけなのだが・・・。

 それでもいつか、物書きとしての活動が少しでも実を結んだ時には、志村さんのように、自分の故郷を愛せるようになれたらなあと、今ほんの少しだけ思っている。

 それともう一つこの番組を見て改めて思ったのは、志村さんは本当に音楽にその身を捧げた人だったんだなあと言うこと。

 富士吉田市でのライブのmcで語った、「プロで音楽をやっているって楽しそうに見えるかもしれないけど、じつはたいへんなことの方が多くて・・・。でも、この一瞬のために、これまでの苦悩が報われるんだなあと思うと、やっていてよかったって思うんです」と言うような言葉からしても、その情熱を強く感じ取ることができた。

 実際のところはどうなのかは分からないけれど、1説によると、志村さんの死因は過労死だったらしい。

もともと体があまり丈夫ではなかったと言う志村さん。アルバムのレコーディングや、長いツアーが終わると、必ず高熱が出ると言う話を聞いたことがある。それだけ身を削って音楽と向き合っていたってことなんだよなあ。

 私も物書きを目指している。先日やっと念願だった第1詩集をどうにか出させていただいたばかりだ。これで物書きの端くれぐらいにはなれるかもしれない1歩を踏み出せたのかなあって感じだろうか。

 そんな状況だったからこそ、この番組を見て思ったのだ。自分も表現者として生きていきたいなら、志村さんのような、情熱とガッツ、そして自分の場合は文章を書くことに、この身を捧げられるぐらいの覚悟がないといけない、と。

 これはあまり良い表現ではないかもしれないけど、あえて書かせてほしい。私も志村さんのような死に方がしたい。

 最後まで音楽で自分を表現することを突き詰めていたのかもしれない、さきほども書いたように、本当の意味で、音楽に身を捧げたのかもしれない志村さん、それってある意味最高にかっこいい死に方だと思う。

 私もそんな志村さんのように、物書きとしての人生を生きていきたい。そして、文章を書くことに、本当の意味でその身を捧げられるような、最高にかっこいい死に方がしたい。

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