小説「シーソーが揺れてる」について
せっかくなので、今回はこのエッセイと同じく、現在カクヨムでアップしている長編小説「シーソーが揺れてる」について書いてみたいと思う。
まずその小説の内容はと言うと、音大を中退して地元に戻った21歳の主人公、西山春香が、ある初夏の日に、たまたま立ち寄った公園のベンチで、幼稚園からの幼馴染だった杉浦直人と久しぶりに再会して・・・、と言うようなお話。
この小説を書き始めたのは、確か24歳の時だったと思う。その当時、埼玉にある国立の某でっかい施設に自立訓練を受けに行っていた。カリキュラム以外は特にやることが無くて、とても暇だったから、久しぶりに小説でも書いてみようかしらと思い書き始めたのがこの作品だった。
主人公の西山春香のモデルは、二十歳から21歳にかけての私自身である。その頃の私は、西山春香と同じように、某盲学校の専攻科音楽科で、ピアノや声楽や音楽理論などを学んでいた。しかし授業やレッスンについていけず、心身共に体調を崩してしまい、学校に行けなくなることも多かった。自分は音楽は好きだけど、音楽をやる人間にはなれないんだろうなあと思い、中退を考えていたのだけれど、周りからの猛反対により、仕方なく通い続けていたと言う状況だった。そんな私の理想を描いたのが、この小説「シーソーが揺れてる」だった。
実際の私には、杉浦直人のような、幼稚園からの幼馴染も、中沢広美のような、転がり込めるような部屋を持つ地元の友人も居ない。このエッセイでも度々書いているように、生徒数が少ない盲学校に、幼稚園から通っていたため、高校生になるまで同級生が一人も居なかったからだ。
だからこそ、もしもあの時の私が、西山春香のような生活を送れていたらと言うような理想を、この小説に書いてみたのだ。
そしてその小説を、当時なぜかアカウントを持っていた携帯小説サイトの野イチゴ(現在はベリーズカフェ)に、立花夢里(たちばなゆめり)と言うペンネームで投稿してみることにしたのだ。
とりあえずどうなってもいいから、最後まで完結させることを目標に、執筆と連載に励んでいた。これまでにも小説はいろいろと書いていたけれど、どれも最後まで完結させたことがなかったからだ。
その目標は、2年ぐらいで達成することができた。当時26歳、ちょうど点字の触読校正の仕事をやめて、a型作業所への転職が何とか決まったと言う頃だった。
あれから6年。
32歳になった私は、ひょんなことからこの小説のことを思い出して検索してみたところ、見つけてしまったのだ。
じつはこの時の私も精神的にかなり落ちていた。第1詩集の出版に向けてのクラウドファンディングが、思いのほか芳しくなくて、焦りや不安を覚えていた時期だった。
そんな時に、6年前に書き上げた「シーソーが揺れてる」を久しぶりに読み始めてみたら、「これはおもしろい!」と思ってしまったのだ。でも少し手直しを加えた方が、もっとおもしろくなるんじゃないかとも思い、クラウドファンディングへの焦りや不安から現実逃避するかのように、この小説の手直し作業を始めたのだった。
それから数か月後の11月。サイトの使用が大幅に変更したことにより、それまで活動していたエブリスタが使いにくくなったため、新な活動の場所を模索していたところ、このカクヨムの存在を知り、何となく登録してみた。
登録してすぐに、第5回カクヨムコンテストの開催が発表されたので、せっかくだから「シーソーが揺れてる」を応募してみようと思い立ったのだ。
手直しを続けながらの更新作業に熱が入っていた昨年12月。やはりこの時の私も相当病んでいた。詳しいことはここではまだ書けないけれど、いろいろなことが重なってしまい、これからの自分のことを、本格的に考えていかなければならなくなったからだ。
そんな時に、この小説に向き合っていることが、ただの偶然ではなく、今の自分にとって、何か意味のあることなんじゃないかと思わされることが何度もあった。西山春香をはじめ、杉浦直人や、中沢広美、そして片山良太たちの、一つ一つの言動や言葉が、今、そしてこれからの自分に何かを予言してくれているのではないかと思えて怖いぐらいだった。
それはいったいこの小説のどう言ったところで、私はそんな風に思ったのか?そこのところはぜひ「シーソーが揺れてる」を読んでいただければ、何となく分かっていただけるかもしれない。
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